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『Nizi Project』ヒットとNiziUの躍進で注目度高まる韓国発サバイバルオーディション 2021年放送予定の番組をピックアップ

リアルサウンド

21/1/19(火) 6:00

 市場を全世界規模に展開する第三次韓流ブーム以降の韓国音楽界では、グループのメンバー構成における多国籍化が目立っている。今や様々な国籍を持つメンバーによるグループ構成が当たり前にもなっているK-POPシーンにおいては、TWICEのモモ・サナ・ミナやIZ*ONEの宮脇咲良・矢吹奈子・本田仁美など日本人メンバーによる活躍も目覚ましい。

 また昨年は、K-POPにおけるグローバリゼーションの新たな様式が日本に社会現象を巻き起こした。TWICEを擁す韓国の大手芸能事務所JYPエンターテインメントの創設者J.Y. Parkがプロデューサーをつとめたソニーミュージックとの共同プロジェクト『Nizi Project』のヒットである。

 かねてよりJ.Y. Parkが語っていた「韓流文化だからといって必ずしも韓国人が歌う必要はない」「これからはシステムを輸出しなければならない段階だ」(参照)というビジョンを反映させた『Nizi Project』およびそこから誕生したグローバルガールズグループ・NiziUは、これまでK-POPやサバイバルオーディション、ガールズグループに関心のなかった層の支持を獲得するまでに至った。これには、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言下でステイホームが呼びかけられたさなか、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)を通じ選考過程の様子が日々お茶の間に届けられていたという時勢的な要因のほかに、本オーディションそのものが持つ特色が鍵を握っていたように思う。

 まずその一つとして、本オーディションにはK-POPのアーティスト育成メソッドがもたらす新鮮さとともに、日本の視聴者にも受け入れられやすい親しみやすさが盛り込まれていたことが挙げられる。『Nizi Project』放送時、プロデューサーのJ.Y. Parkが参加者一人ひとりに対して投げかける評価やアドバイスが視聴者の間で話題となったが、このような光景は2015年に韓国で放送されたTWICEのデビューメンバーを選抜するサバイバルオーディション番組『SIXTEEN』などにも見られたものであった。しかし、参加資格を“国籍不問”とした上で日本語でのコミュニケーション能力を求めたこの『Nizi Project』では、「僕は、このプロジェクトの前は日本語が話せませんでした。(中略)プロジェクトを始めるときに、参加者ともっと深く分かり合いたくて勉強しました」(『スッキリ』6月26日放送/日本テレビ系)というJ.Y. Parkにより、韓国式のアーティスト育成メソッドが日本語で伝えられた点が革新的でありながら、受け入れやすさともなったのだろう。

 また練習生としてのキャリアを持つ者とともに、ダンスや歌・ラップの経験がない参加者もみられるなど、彼女たちのバックグラウンドが多様であったことも『Nizi Project』における魅力の一つと言える。様々な出自を持ちながら、同じ夢に向かって舞台を分かつ参加者同士が互いに影響し合うさまは、思わず画面越しに応援したくなるような眩しい輝きを放っていた。

 『Nizi Project』のヒットとNiziUの躍進により、ここ日本でもよりいっそう注目度が高まる韓国発のサバイバルオーディション番組だが、今後も新たなプログラムの放送がアナウンスされている。

 その筆頭として話題に上るのが『WWW Untact Audition』だ。本オーディションは、BTSを擁す韓国の芸能事務所Big HitエンターテインメントとCJ ENMによる共同プロジェクトで、昨年開催された“BTSの弟分”となるボーイズグループオーディション『I-LAND』のガールズグループバージョンと称される。参加資格は2000年~2008年生まれの女性であれば国籍不問で、応募の際ボーカル・ラップ・ダンスから得意分野を選択する。BTSの世界的人気や、『I-LAND』より誕生したENHYPENがデビューから間もなくして各音楽アワードで新人賞を獲得、米ビルボード紙や米グラミードットコムなど大手海外メディアに取り上げられる(参照1参照2)など脚光を浴びるなか、この『WWW Untact Audition』の参加者には類を見ないグローバルな顔ぶれが予想される。

 また、冒頭に触れたIZ*ONEなど数々のビッググループを輩出した『PRODUCE 101』シリーズの制作で知られる韓国の放送局・Mnetによる新プロジェクト『Girls Planet 999』は、主にK-POPファンやサバイバルオーディションフォロワーの関心を高めている。『Girls Planet 999』もまたグローバルガールズグループの結成を目指すもので、2006年1月1日以前生まれの韓国・中国・日本国籍を持つ女性であれば参加可能。また、芸能事務所や居住地がこれら3カ国のいずれかに属するものであっても応募資格が与えられるという。

[Girls Planet 999] Global Audition ‘당신을 〈Girls Planet 999〉에 초대합니다’

 昨年には日本出身メンバー・GISELLEが在籍する韓・中・日ガールズグループaespaが大手芸能事務所SMエンターテインメントより誕生したが、『Girls Planet 999』ではこれら3カ国より集まった参加者によりどんな交流が生まれグループ結成を目指すのか、といったあたりも注目を集めるポイントだ。

 『WWW Untact Audition』や『Girls Planet 999』の開催により、K-POPシーンへの門戸はファンにとっても、そしてアーティストにとってもさらに広く開かれる。現在ではK-POPダンススクールが日本の至るところに展開されているほど、韓国でのデビューを目指す者が増えているという。昨年デビューしたK-POPガールズグループ・woo!ah!の日本出身メンバー・ソラはロールモデルとしてTWICE・ミナを挙げているが(参照)、現在韓国で活躍する彼女自身や、日本を活動拠点としながら韓国のアーティストメソッドを身に付けるNiziUのメンバーが、今後日本から世界へ羽ばたく若きアーティストたちの指標となる日も近いだろう。

■菅原 史稀
編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。Twitter

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