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日本のロックシーンの生き証人ーーザ・コレクターズ最新作から見えた音楽性とは?

リアルサウンド

14/8/14(木) 14:00

 今回、筆者が今最も注目すべきバンドとして取り上げるのは、結成28周年を迎えたTHE COLLECTORS。なぜ、今ここでベテランとも言えるバンドを持ち出すのか? 先月リリースされた20枚目のアルバム『鳴り止まないラブソング』を聴けば、その理由が解るだろう。

 ザ・フーやザ・キンクスといったブリティッシュロックに影響を受け、1986年に結成、87年のメジャーデビュー以来活動休止もなく、独自の“モッズ”スタイルで日本のメジャーシーンをひた走り続けるバンドである。加藤ひさしの伸びやかなハイトーンボーカル、古市コータローの激しくも哀愁感漂わせるギター、阿部耕作のタイトなリズム… これほどまでにストレートな日本語ロックをやってのけるバンドが他にいるだろうか。紛れもなくロックンロールであるが、ポップ感満載の加藤のソングライティング、そして一切クセのない真っすぐな歌は、親しみやすさと懐かしさを感じさせる“日本のうた” ともいえよう。『鳴り止まないラブソング』にはそのタイトル通り、青臭さとピュアな心を感じさせる楽曲が並ぶ。背伸びしていた10代よりも、歳を取ったときに思い返す青春のほうがリアルだ。〈身の程知らずでいいじゃない いくつになっても〉と歌う加藤ひさしは、きっと歳を重ねることに興味がないのだろう。50代の永遠のロック少年からのメッセージである。

Da!Da!!Da!!! / ザ・コレクターズ

 恒久的なラブソングと青春、そしてもう一つの特色に駄洒落的な言葉遊びがある。アルバムのオープニングを飾る、NHK Eテレアニメ「おじゃる丸」のエンディングテーマ「DA!DA!!DA!!!」はその真骨頂とも言えるだろう。メリハリの利いた軽快なリズムと子どもにも覚えやすいしりとり歌詞。一度聴いたら忘れられないキャッチーさを帯びている。そしてバンドサウンドの要と言えるのは徹底的に無駄を削ぎ落とした古市のギター。「ミノホドシラズ」での絶妙なタイム感、「スルー」「踊る運命選」の豪快に掻きむしるプレイは、ギターとアンプだけあれば余計な歪みも要らないと思わせる潔さ。「俺自体がリッケンバッカーの木材だからね!」と、武骨で手なずけることの難しいリッケンバッカーを巧みに操る古市はポール・ウェラー、ピート・タウンジェントと並べても申し分ないギタリストだろう。今は、ギブソンのES-335を手にすることが多いのだが。

 今作の制作に入る直前に23年間バンドのベースを務めた小里誠の脱退という出来事が起こっている。通常であればスケジュールを延期、白紙に戻すか、複数のベーシストに弾いてもらうなど形を取るが、このアクシデントを支えたのはオレンジズの山森 JEFF 正之。わずか2日で覚えてレコーディングに参加という驚異的なスケジュールであったという。加藤とはお互いザ・バイクとザ・シャムロックという80年代に東京モッズ・シーンを湧かせた30年来の盟友であるからこそ成せる業だろう。サポートではあるが、アルバムジャケットやアーティスト写真、ミュージックビデオなど、ほぼメンバーとして登場しており、メンバーからの熱い信頼を感じる。JEFFのベースは、躍動感のあるリズムと印象的なベースラインとともにバンドに新鮮さと新たな可能性を与えた印象を受ける。そして、現在行われている全国ツアー「THE COLLECTORS TOUR 2014 “DA! DA!! DA!!!”」を支えるもう一人のベーシストは、the pillowsでベースを務める鈴木淳だ。

 スピッツやthe pillowsなど、数多くのミュージシャンにリスペクトされているTHE COLLECTORS。怒髪天の増子直純とともに錚々たる国内ミュージシャンの面々を集めた「恋チュン」動画も話題になった(参考:コレクターズ、怒髪天、真心……「恋チュン」動画で錚々たるミュージシャンが踊ったワケ)。スピッツ主宰イベント「新木場サンセット」での自称オープニングアクト(実際はトップバッター)も恒例となっている。「スピッツさんとthe pillowsさんに支えられてます」と時折、自虐気味に自己紹介する言葉に、彼らが多くのミュージシャンたちに慕われる要因を垣間見る。モンスター・ヒットがあったわけではないが、27年間メジャーでアルバムを作り続け、1年中ライブ活動をやり続けてきたミュージシャンズ・ミュージシャン。まさに日本のロックシーンの生き証人なのだ。

 革新や奇をてらったような音楽的進化を追い求めるようなバンドではない。ただ、ブレることなく信念を貫き通すロックバンドの生き様を教えてくれるのである。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

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