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北村匠海が見せた豊かな表情に注目 『にじいろカルテ』が問う“普通”の定義

リアルサウンド

21/2/19(金) 6:00

 朔(井浦新)が佐和子(水野久美)の家で見せた涙から、過去に何かあることを察してどのように接するべきかと悩む真空(高畑充希)と太陽(北村匠海)。しかし朔は「気を遣わせるのは嫌なんだ」と、自分から妻の沙織(佐々木希)に起きたことを語り始めるのである。2月18日に放送された『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)第5話は、先週に引き続き診療所のメンバーの心の内側に触れるエピソード。今回は、太陽が抱えるわだかまりにフォーカスが当てられていく。

 虹ノ村診療所にテレビ番組の取材が入り、真空は「東京でも流れるのかな」と、自分がこの村にいることや病のことを母親に話していないと明かす。そんななか、取材クルーのカメラマンが足に怪我をしていることに気が付き、破傷風の予防接種を受けることを勧める太陽。一方で真空と朔は、太陽に少し元気がないことを気に掛けていた。そしてテレビ番組が放送される夜、にじいろ商店で集まる村人たちのもとに、例のカメラマンから感謝の手紙とシャンパンが送られてくる。すっかり酔っ払ってしまった太陽は、自分の抱えている悩みを喚くように吐露するのであった。

 「俺は基本的に優秀。正しいの、でもそれだけなんです! 個性がない!」と絡み酒を始める太陽。難病と向き合いながら気丈に生きる真空であったり、妻を失った辛い過去を乗り越えて明るく振る舞い続ける朔であったり、それぞれがさまざまな事情を抱えている村人たちを前にしたことでなおさらに、「俺だけ何もないじゃん!」とフラストレーションを爆発させてしまうのである。しかしながら、そこで漠然と考えてしまうのは“普通とは何か?”ということに他ならない。

 アドラー心理学にも「普通であることの勇気」として、人は自分自身を良くも悪くも特別だと思いたがる節があるという話が出てくるわけで、たしかに昨今よく聞く承認欲求というものは、まさにそれが顕著に現れたものであるといえよう。少なくとも、「自分が普通である」と思って「特別になろうとする」ことと「普通は嫌だともがく」ことは似て非なるものであり、太陽は後者の方だ。自分を普通だと思い込むうちに、それは確かな個性へと様変わりする。今回の劇中で描かれたテレビクルーへの対応しかり、脱臼した村人への処置のスムーズさもしかり、太陽の看護師としてのスキルは紛れもなく才能である。もはやそれは、良い意味で“普通じゃない”と思えるほどでもあり、まさに真空の(限りなく朔に向けられた)言葉がその本質を射抜いている。「自分で面白いって言ってる人ほど面白くなかったりする」。

 さて結局太陽は、嵐(水野美紀)たちの計らいで村の放送局のDJに抜擢される(これは一瞬、北村が昨年主演を勤めた映画『とんかつDJアゲ太郎』を想起してしまったが)。そしてぎこちないトークとともに流すのは、太陽が高校時代に作ったという楽曲。デスメタル調のメロディに乗せて、ものすごく荒きった歌詞がのどかな村の中に流れるというアンバランス。それを呆然としながら聴く村人たちの姿も含め、こんなにシュールなオチが待っているとは予想外だ。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『にじいろカルテ』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00〜21:54放送
出演:高畑充希、井浦新、北村匠海、安達祐実、眞島秀和、光石研、西田尚美、泉谷しげる、水野美紀、モト冬樹、半海一晃、池田良、水野久美
ゲスト出演:佐々木希
脚本:岡田惠和
演出:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサ:貴島彩理(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作:テレビ朝日、アズバーズ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/nijiiro/

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