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東村アキコが語る、WEBTOONで表現する“30代の恋” 新連載『私のことを憶えていますか』インタビュー

リアルサウンド

20/5/9(土) 8:00

 人気マンガ家の東村アキコが、電子マンガ・ノベルサービス『ピッコマ』にて、4月29日より新連載作『私のことを覚えていますか』の独占配信をスタートした。『美食探偵 明智五郎』では「食」、『東京タラレバ娘』では「女子会」、『海月姫』では「オタク女子」など、時代に寄り添った切り口でストーリーを紡ぎ、映像化されてきた東村作品。今回、『私のことを覚えていますか』で描くのは「初恋」だ。

参考:14歳でデビューした漫画家・ときわ藍、デビューの裏側に母娘の『まんが道』アリ

 主人公・遥はゴシップニュースを配信するWEBライター。30歳の誕生日に、憧れの俳優・SORAの熱愛が発覚。ショックを受けながらも記事をまとめようとしていたとき、気心知れた同僚から、これまで好きになった芸能人たちの顔が似ていることを指摘される。無意識に、初恋のあの子に似ている顔を好きになっていることに気づいた遥。しかし、当時小学生だった遥は、3歳年下のあの子への想いを、周囲にからかわれるのが怖くて隠していたのだった。大人になった今、その程度の年の差なんて大したことじゃなかったと悔しく思う遥。そして“彼も私のことを覚えているかな“という気持ちが膨れ上がっていって……。

 自分の恋愛のルーツともいえる「初恋」。その記憶を遡っていく物語を、WEBTOON形式で描いていく。WEBTOONとは、韓国発のオールカラー縦読みのデジタルコミックで、東村は2019年に『偽装不倫』で韓国WEBマンガ市場に進出した初の日本マンガ家でもある。本作も、日韓同時連載となり、国境を超えて支持を得る作品となりそうだ。

 今回、新連載をスタートさせたばかりの東村に、本作が生まれた背景やWEBTOONでの作品づくりについてインタビュー。また、恋愛ストーリーを多く手がけてきたからこそ感じる“30代の恋愛“について聞いた。(佐藤結衣)

■初恋は世界共通のテーマになる

――今、初恋をテーマにした作品を生み出そうと考えたのは、何かキッカケがあったのですか?

東村アキコ(以下、東村):先日、ふとしたきっかけで小学生時代の初恋の記憶が蘇ってきたんです。その関係で、地元の友人と思い出話をしていたら、結構みんな初恋って覚えているんだなと思って。初恋は世界共通のテーマになるなと思って、描くことにしました。

――主人公・遥の職業がゴシップニュースライターで、今っぽさを感じました。どういったところからキャラクターを作り上げているのでしょうか?

東村:私が、よくゴシップサイトを見ているのと、知り合いにゴシップライターが何人かいるので、取材しやすそうだなと思って、この職業にしました。ライターさんっぽいファッションや髪型を参考にしています。忙しくて、なかなか美容室やお買い物に行けない女の子が多いイメージですね。

――東村さんの作品といえば、お父様がタイトル案を出されることもあるとお聞きしました。本作のタイトルはどなたの案でしたか?

東村:今回は自分で考えました! もっとひねったタイトルもいろいろ考えましたが、今回は日韓同時連載ですし、各国に翻訳するとなるとシンプルなほうがいいと思い、これにしました。タイトルというのは、トリッキーなものもカッコいいし、英語でもカッコいいし、主人公の名前が入ってるものもいいというジンクスもあるのですが、最初に思いついたこの普通のタイトルがどうしても頭から離れず、この作品のテーマそのものでもあるので……。

――本作では初恋の男の子からもらったスーパーボールが、キーアイテムとして登場します。なぜスーパーボールになったのでしょうか?

東村:小学生の時、お祭りでキラキラしたスーパーボールが欲しくてたまらなかった自分自身の記憶をもとにしている部分も大いにあります。大人にとってみたら100円程度のオモチャ、でも子どもにとってみたら宝石のようなスペシャルな宝物って、スーパーボールしかないなと思ったからです。韓国でもスーパーボールって流行ったのか気になって、韓国スタッフに聞いたところ「韓国でも子どものころみんな持ってた」と聞いて、このアイテムがぴったりだなと思いました。

■WEBTOONの自由な表現に酔いしれて筆も進みます

――今回は誌面ではなくWEBTOONでの連載ですね。誌面での創作との違いはありますか?

東村:大きな違いはオールカラーという点です。誌面だと白黒表現になるので、別の緊張感があって楽しいですが、WEBTOONならではのカラーでしかできない表現がたくさんあるので!

――スーパーボールのキラキラがすごく効果的に描かれていると感じました。

東村:カラーにしかできない表現がたくさん使えるので本当に最高です。自由な表現に酔いしれて筆も進みます!

――縦読みのスクロール式なので、空間で間を表現されているのが際立っていますね。

東村:縦読みのほうがストーリーも作りやすいですし、自分の作風にもすごく合っていると思います。

――「こういう絵を描きたい」というイメージからマンガを作り上げていくというお話をお聞きしましたが、本作ではどのような絵を描きたいと思われましたか?

東村:今回は記憶の中、回想シーンが多いマンガなので、ノスタルジックな画面作りを意識してます。あと男性キャラクターを、いつも以上にイケメンに描こうと頑張ってます。

――東村さんの作品といえば、本編に加えてあとがきが人気ですね。

東村:海外の読者の方にも喜んでもらえるなら、ぜひ書き下ろしのおまけも描いてみたいです!

■私のマンガを読んだ女の子には、強く明るくなって欲しい!

――これまで多くの作品でアラサー女子の恋愛を、現実的な描写と夢のあるストーリーで描かれていますが、東村さんが“30代の恋愛“について感じていることを教えてください。

東村:まず思うのは、ネットのせいでみんな情報過多! 自己評価低すぎ! 怯えすぎ! 恥ずかしがりすぎ! 空気読みすぎ!! 人生1回なので、もっと図々しく生きるべきですよ。30代って、私からみるとすごく若いんだけど当事者は20代からものすごーく歳をとってしまったような気分になりますよね。私もそうでした。30歳の誕生日に、「ああ私もう若い女の子じゃないんだ」と絶望感に襲われる気持ち、よく覚えています。が! 今の時代は30代の女性がガンガン好きなことできる時代だし、恋愛もいっくらでもできるし、いや逆に30代の今やらなきゃいつやるの!? っていうか、まあとにかく、若いときと違って開き直って欲しいな、と。なんのアドバイスにもなりませんが、そういう気持ちでマンガを描いてます。あとは、脅しにならないように気をつけていますね(笑)。

――脅し(笑)。たしかに「結婚=幸せ」の時代ではなくなったものの、作中にも「いき遅れ」「余った者同士くっつけば」という声も聞こえてきますね。これからの時代の「結婚」「恋愛」についてはどうお考えですか?

東村:結婚は、私も2回失敗してますから、偉そうなこと言えないんですが、やはりしてみるのとみないのとでは、人間としての成長? というか場数みたいなものが全く違ってくるなとは思います。結婚して初めて、自分が求めていたことがわかるというか……。「私はオシャレなレストランでプロポーズなんて興味ないわ」と言ってた女友だちが、「彼氏が家で雑なプロポーズをしてきた」と泣きながら私に電話を掛けてきたり、「婚約指輪なんて別にいらない」と言っていた女の子が「彼の買った指輪が安くてショック」と嘆いたり……。要するに、“自分はお姫様気質の女の子じゃない“と思ってたのに、結婚にまつわる事象だと、女はやっぱりお姫様の遺伝子が爆発するんです。そんな自分で気がついてまたショックを受ける。なんの話かよくわからんかもしれませんが、とにかく結婚ってのは、本当の自分に強制的に向き合わされる稀有な機会なんですよね。本当に自分が求めてるもの、理想の生活、人生の夢。それは1人ではなかなか気がつかない。相手がいないと見つけられない。結婚が幸せ、ということではなく、人生のひとつの試練として1回やってみてもいいのかな、と思います。

――なるほど。先ほど「怯えすぎ」「恥ずかしがりすぎ」とありますが、恋愛や結婚に限らず、様々なことに臆病になっているかもしれません。東村さんの作品を読むと、まずは行動してみようという勇気を貰えるのは、そういう気持ちが込められているからなんですね。

東村:私は、マンガで世界中の女の子を応援したいです。私のマンガの読者は、みんなほんとに可愛くて優しくていい子たちばっかりだよ、と思って描いてます。私のマンガを読んだ女の子には、強くなって欲しい。明るくなって欲しい、そう思っています。(佐藤結衣)

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