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『麒麟がくる』「桶狭間の戦い」の重厚な描写 名将たちの活躍を振り返る

リアルサウンド

20/6/13(土) 8:00

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため4月1日から撮影が休止していた大河ドラマ『麒麟がくる』。先日、6月30日から撮影再開が発表されることが発表され、SNS上では大いに盛り上がったが、放送は第21回「決戦!桶狭間」を持って一時中断となった。奇しくも前半戦最後となった「桶狭間の戦い」に多くの視聴者から賞賛の声があがり「早く続きが観たい」という声が殺到しているという。そんな大きな反響があった「桶狭間の戦い」を振り返ってみたい。

【写真】竹千代こと松平元康を演じる風間俊介

■“無謀ではない戦い”を証明する戦略家な織田信長像

 「桶狭間の戦い」と聞くと思い出されるのが、高校時代の日本史の授業。いまとは違い緩い時代だったため、文科省が告示する“学習指導要領”なるものにも捉われない日本史の教師は、1カ月近く“桶狭間の戦い”の詳細をひたすらしゃべっていた。内容はほとんど覚えていないが、ひたすら「今川軍2万5000の兵に対して、織田軍は2~3000の兵。しかし奇襲作戦で織田軍は今川義元の首を取った」と強調していたことだけはずっと頭の片隅にあった。

 そんななか、染谷将太演じる織田信長は、今川軍2万5000という兵の数を、父・信秀(高橋克典)から伝えられた「今川義元は用心深い」という人物像と戦況を丁寧に考察。「今川義元を叩くならいましかない。3000の兵でも戦える」と大勝負に出る。とは言いつつ、計算した今川本軍の予想される兵は7000。織田軍とは倍近く違うので、自身も「死のうは一定(いちじょう)」と、この戦いで命を落とす可能性があることに言及している。

 これまで“軍司”と言われるほど、信長の進む道に光を照らしていた帰蝶(川口春奈)だが「桶狭間の戦い」に関しては、ただただ信長を信じて待つだけの妻としての一面を見せた。戦いに勝利したあと、信長は「帰蝶は母親じゃ」と明智光秀(長谷川博己)に話していたが、二人の関係性も大きな見どころとなっている。

■「海道一の弓取り」と言われた今川義元の表現

 信長の戦略に続いて新鮮だったのが、駿河・遠江の戦国大名・今川義元(片岡愛之助)の勇猛果敢な姿。「海道一の弓取り」という異名を持っているだけに、武芸にも秀でた人物であることは想像できるのだが、これまで映画やドラマで登場する義元は、どちらかというと“弱さ”が目立つようなキャラクター付けされることが多かった。

 しかし本作では、愛之助の佇まいもあるが、凛々しく勇猛な人物として描かれている。最後、今井翼演じる毛利新介に討たれてしまう場面でも、左腿を刺されていながら、何人もの武将を返り討ちにするなど、「海道一の弓取り」というだけの戦いを見せた。さらに義元は、自軍の武将たちが乱取り(戦のあと、破れた兵士から、武器や甲冑などを奪う行為)を行っていることを知ると激高。愛之助の表情も相まって誇り高き武将を印象づけた。

 そんな義元が絶命するシーンは、すでに大きな話題になっているが、ワイヤーを使った派手なアクションは、かなり斬新。愛之助は公式サイトで「天下統一に一番近いと言われた武将。桶狭間の戦いの殺陣のシーンでも、最後まで屈強な義元を演じられるように心がけ、絶命のその瞬間まで戦う武将であることを意識しました」とコメントしていたが、その言葉通り、作品に大きなインパクトを残した。

■松平元康の揺らぎ

 桶狭間の戦いでキーマンになった一人として挙げられる風間俊介演じる松平元康(のちの徳川家康)。竹千代と名乗っていた幼少期、織田家の人質になったあと、その後今川家の人質となるが、本作では竹千代が、今川家に人質になる前に「今川は敵です」と信長に伝える印象的なシーンがある。今回もその回想シーンが出てくる。

 実際は、松平家の置かれている立場を考えて、今川を裏切ることはなかったが、今川の家臣・鵜殿長照から、義元が三河守になったことを知り愕然とする元康。さらに不眠不休で丸根砦、鷲津砦を打ち破ったにも関わらず、直ちに鳴海城への出陣を要請されると、顔色が一変。さらに「桶狭間へ出陣しろ」と命令されると「本日ここを一歩も動きませぬ!」と出陣を拒否した。

 その際、三河衆が拳を床に叩きつけ怒りを露わにするシーンは、直接的に織田勢攻撃には加勢しなかったものの、「桶狭間の戦い」にとっては大きな意味を成す行動だった。このシーンついて風間は『麒麟がくる』公式ツイッターで「今川の家臣に自分たちが軽んじられていると感じ、桶狭間への出陣を拒否。演じながら感じたのもシンプルに“怒り”でした」とコメント。

 「桶狭間の戦い」で今川義元の首を取ったことで、戦国時代の勢力図は大きく変わっていく。勝利を収め帰路につく際の信長に出会った光秀は、今後のことを聞くと信長は帰蝶の故郷である美濃を攻めると言った。そこから信長は室町幕府再興を目指し、より力を増していく。放送中断は残念だが、今後の放送に期待を持たせる重厚な「桶狭間の戦い」だった。

(磯部正和)

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