ジャンルが次々と変わって転調していく、まったく先読みできない展開に呆然としたり、興奮したり……。映画のキャッチコピーにしばしば使われる“予測不能”という言葉がこれほどまでに似合う映画には、なかなか出会えないのではないでしょうか。 『万引き家族』の例を挙げるまでもなく、今、世界の映画作家たちが描き出している貧富の差によって二極化している社会の現実を、ここまでエンタテインメント性の高い作品にしてしまうとは！　セリフで語るのではなく、地上と半地下、階段といった視覚的な効果で感じさせ、しかも“匂い”までも可視化してしまうポン・ジュノ監督の天才性にKOされる作品です。 プランなど無意味な人生の行き着く先はどこなのか、やるせなさと奇妙な静けさと美しさの漂うエンディングも忘れがたい余韻を残す大傑作。