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『闇金ウシジマくん』は若手俳優の登竜門だった!? 窪田正孝、中村倫也、山田裕貴らが残した爪痕

リアルサウンド

20/6/11(木) 10:00

 『闇金ウシジマくん』――この名を聞いたことが、一度はあるだろう。「10日で5割」という法外な利息を吹っ掛ける闇金業者と、債務者たちのハードな運命を描いた人気マンガだ。2010年には山田孝之主演で実写化され、TVドラマ、WEBドラマ、映画と6年もの間続くシリーズとなった。新型コロナウイルスの影響による自粛期間中、レンタルや配信サービスで本作を見返した方もいるのではないか。

参考:『闇金ウシジマくん』山口雅俊監督 × 岩倉達哉Pが語る、シリーズ6年間の挑戦と進化

 第1作から、10年。改めていま見返すと、映画・ドラマ界で活躍する若手人気俳優が、数多く本シリーズを通ってきていることに驚かされる。そこで今回は、「ウシジマ組」の豪華なメンバーを改めてご紹介。それぞれが演じた役柄とともに、振り返っていきたい。

 山田孝之、やべきょうすけ、崎本大海、綾野剛をメインキャストとする『闇金ウシジマくん』シリーズは、毎エピソード様々な事情を背負ったキャラクターが登場し、それぞれが闇金に手を出したことで破滅していく姿をシニカルに見つめる。出演者においては、極限状況におかれた人々が壊れていく姿を演じることで、表現力を見せつける絶好機でもある。

 まずは、2012年の映画『闇金ウシジマくん』。本作では林遣都と大島優子がメインの“被害者”を演じている。特に林のポジションは、冒頭からラストに至るまで物語をけん引する重要な役どころ。イベントサークルを主宰し、ビッグな男になろうとするが、ウシジマとかかわったことで転落していく。林は、自信過剰だった青年が焦燥感と絶望にのまれていく姿を、ひりつく演技で体現した。林にとっては、ドラマ&映画『荒川 アンダー ザ ブリッジ』(2011~2012年/TBS系)に続く山田との共演作だ。同年の『悪の教典』(2012年)ではゲイの高校生に扮し、こちらでもセンセーショナルなキャラクターに挑んでいる。

 2014年のdビデオスペシャル『闇金ウシジマくん』には、千葉雄大が出演。生意気で厭世的なタクシー運転手に扮し、「マジファックっすよね」「うっぜーよ!」と珍しい暴言セリフに挑んでいる。家と車のローン返済に苦しみ、闇金地獄に落とされる悲惨な役どころだ。本作に出演後、ドラマ『水球ヤンキース』(2014年/フジテレビ系)、映画『アオハライド』(2014年)などが放送・公開され、飛躍を遂げていく。ちなみに本作、「ロバート」の秋山竜次が主人公ポジションを務めており、強烈な変態的怪演を見せつけている。

 続く2014年の映画『闇金ウシジマくん Part2』には、菅田将暉、窪田正孝、門脇麦、柳楽優弥らが出演。ウシジマのもとで働く不良少年に扮した菅田は、中尾明慶演じる半グレに襲われ、ビニール袋をかぶせられて呼吸困難になるという危険なシーンにも果敢に挑戦。債務者の母親を軽蔑しながらも見捨てられないなど、人間くさい「隙のある演技」が光る。『そこのみにて光輝く』(2014年)、本作、『海月姫』(2014年)とタイプの異なる作品に立て続けに出演した菅田は、その後日本映画界の旗手としてますます絶対的な存在に。

 ドラマ『最高の離婚』(2013年/フジテレビ系)で好青年を演じた窪田は、本作で指名をなかなかとれない新人ホスト役に。気のいい人物だったが、門脇演じるフリーターと知り合い、「No.1ホストになる」という夢に目がくらんだ結果、彼女に多額の借金を背負わせてしまう。まっすぐな夢追い人でありつつも、罪深い男を絶妙なバランスで成立させた。

 対する門脇は、『愛の渦』(2014年)の大胆なベッドシーンが話題を呼んだ後に、本作で堕ちていく女性を続けて演じ、実力派女優として覚醒。2015年にはNHK連続テレビ小説『まれ』にも参加し、お茶の間にも知られる存在となった。本作で門脇が演じたフリーターに執着し、ストーカー化する変質者を、柳楽が怪演。薄汚れた格好で徘徊し、目をギラつかせる異様で不気味な存在感は、柳楽の代表作『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年)につながっていく。

 2016年のドラマ『闇金ウシジマくん Season3』では、6月19日に最新主演作『水曜日が消えた』が控える中村倫也が、注目を浴びた。彼が演じたのは、編集者の女性(光宗薫)を言葉と暴力で洗脳する恐ろしい男。全身白で固めた異様な存在感と巧みな話術、時折のぞかせる“凄み”で周囲の人間を意のままに操る姿は、強い印象を残す。笑顔から暴力へと急転する“落差”は、中村の高い演技力が凝縮されているといえよう。

 この時期の中村は、主演作『星ガ丘ワンダーランド』(2016年)、『日本で一番悪い奴ら』(2016年)、『愚行録』(2017年)、『3月のライオン』(2017年)と話題作・傑作映画に立て続けて出演。若き名優のステップを着実に駆け上がっていった。

 2016年の映画『闇金ウシジマくん Part3』には本郷奏多、山田裕貴、岸井ゆきのが登場。本郷は、ネットビジネスで底辺から抜け出そうとする日雇い労働者に扮し、彼のメンターとなるカリスマ性あふれる男を、『HiGH&LOW』シリーズでさらなるファンを獲得した山田がクールに演じている。

 ネットビジネスの成功者(浜野謙太)に次ぐNo.2(山田裕貴)に魅了され、情報商材を売りつける青年(本郷奏多)。両親から金をむしり取り、弱者をほだして成功するが……。物語の中でどんどん冷徹に変貌していく姿が、恐ろしい。

 岸井は、「オリエンタルラジオ」の藤森慎吾が演じる一流企業の会社員と不倫関係に陥る保険外交員という汚れ役。本作を経て『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年)、『ここは退屈迎えに来て』(2018年)、『愛がなんだ』(2019年)に出演し、演技派女優としての地位を確立した。

 シリーズ完結編となる2016年の映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』には、永山絢斗、間宮祥太朗、仲野太賀(当時は「太賀」名義)が参加。永山はウシジマの同級生という重要なポジションで、貧困の只中にいても清らかな心を保つ純粋な男を好演。思いやりに生き、「強欲は罪で下品だよ」とウシジマに言い放つ対極の存在だ。その同僚に扮した仲野は、「長い物には巻かれろ」精神の人間のもろさを、生々しく見せつける。空腹に負けて羊羹をむしゃぶる姿は、見ているだけで痛々しい。

 圧巻なのは、一見しただけでは本人とわからないほどのキレたキャラクターに扮した間宮。本作ののち『帝一の國』(2017年)、『全員死刑』(2017年)などで一気に名を挙げるが、こちらで見せる壊れた演技も鮮烈だ。帽子とマスクで顔を隠し、目だけが不気味に光る強烈なビジュアルで、頭に血が上ると誰彼構わず暴力を振るう悪鬼と化す。本作では他にも、玉城ティナが「キスをした相手の舌をかみちぎる」クレイジーなキャラクターに扮している。

 「金」「性」「暴力」など、シリアスなテーマを苛烈に描いた『闇金ウシジマくん』シリーズは、出演する側も安全地帯にはいられない。彼らが残した爪痕を、今一度たどってみるのも一興だ。(SYO)

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