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『魔入りました!入間くん』が子どもから大人まで愛されるワケ 鈴木入間の視点で見る、未知の世界の面白さ

リアルサウンド

20/7/3(金) 8:00

 『週刊少年チャンピオン』で連載されている、『魔入りました!入間くん』(秋田書店)は、子どもから大人まで楽しめる作品だ。NHKで放送されたアニメも好評で、続編の放送が決定している。魔界ファンタジーと学園青春ストーリーという2つの王道的要素が合わさった作品が広く愛される理由とは。

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 主人公、鈴木入間は人間の身でありながら、両親によって悪魔であるサリバンへと売り渡される。独り身のサリバンは、友人らの孫自慢が羨ましく、入間を孫として引き取ったのだった。魔界に移り住み、悪魔の学校へ通うこととなった入間であるが、両親に放任されていたために培った、サバイバル能力と危機回避能力を駆使してクラスメイトとともに成長する姿が描かれている。

■悪魔の学校を舞台にした入間とその周りの成長譚
※以下、ネタバレあり

 『魔入りました!入間くん』は、魔術を使う悪魔が暮らす魔界が舞台ではあるが、大冒険やバトルが繰り広げられているわけではない。本作の悪魔たちはいたって真面目に学園生活を送っている。キャラクターの掛け合いもテンポが良く、コミカルな笑いを誘うギャグシーンが多い。誰かを傷つけたり、お色気によって生まれる笑いは盛り込まれていない。面白い物に出会った時の多幸感に満たされ、爽やかな読後感が得られるのだ。登場キャラクターの中で唯一の人間である入間の視点を通して、未知のものに出会うワクワクに共感しているうちに、いつの間にか入間を応援している自分に気づく。

 そんな入間は、「自分でも呆れるほどのお人良し」で、お願いされると断れない性格。自分に無理を強いてでも人を助けてしまう。クラスメイト、クララとの出会いにも、彼の性質がよく表れている。クララはおままごとや鬼ごっこなど、無邪気な遊びを好む少女だ。だが、そのような遊びに付き合う者はいなかった。彼女は一度見た物を複製する能力の持ち主で、入間に出会うまでは都合の良い存在として、知人らにジュースやお菓子を貢がせられていた。陰で「バカ」と呼ばれていることに気づいていたクララだったが、そうしないと誰も自分とは仲良くしてくれないからと、諦めていたのだった。

 そこに登場したのが、入間である。クララは自分に近付いてくれる人に貢物をする癖があり、入間にも例外なくジュースにお菓子、ゲームまで分け与えていた。そのことに疑問を持った入間は、何をくれなくてもクララと遊びたい、と伝えて、二人は友達になったのだ。これを機にクララは、これまでに彼女を利用してきた者たちに拒否の姿勢を取った。入間はお人よしではあるが、しっかりとした信念を持ち自分なりの倫理を貫こうとしていることがこのエピソードに描かれている。入間はクラスメイトと関わり、彼らの成長に手を貸す中で、自身も成長していくキャラクターなのだ。

 魔界はしばらく魔王の座が空いたままでいるのだが、予言書に示された魔王の姿は、入間のそれとうり二つだという。まだ明かされていない設定も多く、これからがますます楽しみな作品だ。

■誉田優
フリーライター・記者。ドラえもんと共に育った生粋の漫画好き。

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