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仲間由紀恵が体現した“母”という存在 『10の秘密』最終話が示した最大のテーマ

リアルサウンド

20/3/18(水) 6:00

 由貴子(仲間由紀恵)が生きていたことを警察から知らされ、関与を疑われてしまう圭太(向井理)。しかし圭太は、由貴子が偽造パスポートを取り戻すために接触してくると確信し、今度こそ決着を着けようと意気込むことに。3月17日に放送されたカンテレ・フジテレビ系列火曜ドラマ『10の秘密』最終話。毎話冒頭に必ず意味深なフレーズが登場してきた本作だが、この最終話では、そこで登場した言葉通りの結末を迎えることとなった。「秘密は生まれ続けるーーこの世に欲望、弱さ、そして愛がある限り」。

参考:向井理、山田杏奈ら登場場面写真

 圭太のもとにかかってきた由貴子からの電話。約束を取り付け、人の気配がない場所でついに対面を果たした2人。そこで圭太は、10年前の火事の真実について問いただす。あの夜瞳を探して二手に分かれたとき、由貴子は偶然にも翼(松村北斗)の母を見殺しにして逃げ出してきた長沼(佐野史郎)を目撃していたというのだ。そして、それをネタに長沼を脅迫し帝東建設の顧問弁護士へとのぼり詰めた。そのきっかけを与えたのはほかでもない、圭太が瞳(山田杏奈)のためにと火事のことを隠そうとしたことだったというのである。

 これで一連の事件がすべて一本の線で繋がることになったわけだ。翼の母と長沼との関係と偽装建築での悶着に、偶然にも幼い頃の瞳が放ってしまった火災。そこから長沼を脅して上へとのし上がるも、生来の上昇志向によって自ら破滅していく由貴子が偽装建築の秘密を握る。それを暴くために巻き込まれた圭太と、実の母親から誘拐される羽目になった瞳。とは言っても、どこか釈然としない幕切れとなったのはまだいくつものわだかまりがそこにまざまざと残されているからであろう。結局のところ、圭太は由貴子を逃したという新たな秘密を抱えることとなり、母を殺した犯人を10年間探しつづけてきた翼は、長沼の社会的失墜と彼から直接の謝罪を受けるだけで、どこか悲しげな様子でピアノを弾きつづけることになった。

 また第8話で明らかにされた菜七子(仲里依紗)の秘密に関しては、ほとんど物語に影響を及ぼすことはなく、由貴子がいなくなったことで圭太との距離が近付くということで何となく落ち着くかたちとなる。強いて挙げるならば、リスクを背負いながらも一度寝返った部下を手中に引き戻した宇都宮(渡部篤郎)が、長沼を失墜させるという目的を果たしたこと。そして瞳が自身の過去をしっかりと受け止め、無事に圭太との普通の暮らしを取り戻すことができたことが救いであろうか。それでも改めて考えを巡らせてみれば、やはりすべての発端は瞳が火災を起こしたことにあるという事実は避けようもないのが正直なところだ。

 とはいえ今回の中盤、「いしかわ」の店先で圭太の母・純子(名取裕子)と由貴子が対峙し、2人の会話を店の中から瞳が聞いているというシーンは、なかなか見応えのあるものであった。普通の母親になれると思ったけれどなれなかったという、後の圭太とのシーンで由貴子の口から発せられる言葉へと繋がる、由貴子というキャラクターの抱えてきた苦しみを的確に表したこの場面。純子と由貴子の物理的かつ精神的な距離感といい、立ち去ろうとする由貴子に対して別れを告げる瞳の姿が重なることといい、“母”という存在こそがこの作品の最大のテーマであったのだと、最終話ではっきりと気付かされることとなった。 (文=久保田和馬)

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