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劇団EXILE 小澤雄太、『ウルトラマンジード』がもたらした三谷幸喜との縁 人望を集める人柄で飛躍

リアルサウンド

21/1/14(木) 8:00

 ドラマ、映画、CM、舞台と幅広いステージで活躍を続けている劇団EXILE。本稿では、劇団EXILEのメンバー一人ひとりのフィルモグラフィをたどりながらその魅力を分析。第7回目は、三谷幸喜作品への出演も多い小澤雄太について紹介していく。(編集部)

 1月9日にフジテレビで放送された映画『記憶にございません!』にも医師役で出演していた小澤雄太。彼は2009年に行われた「第1回劇団EXILEオーディション」で合格して俳優の道を進むことになる。

 その後は、劇団EXILEや方南ぐみなどの舞台に出演。そのほか、つかこうへい追悼公演『新・幕末純情伝』や、『真田十勇士 ~ボクらが守りたかったもの~』、深作健太演出の『里見八犬伝』、『サイコメトラーEIJI ~時計仕掛けのリンゴ~』など、数々の舞台にも出演してきた。

 こうした舞台の出演で、演技の経験を積んだことはもちろん、共演者とも良い関係性を築いてきたとも聞く。以前、映画『jam』のプロモーション時に雑誌『Audition blue』(2018年12月号)で劇団の青柳、町田、鈴木の三氏にインタビューした際にも小澤の話になり、自身の主演舞台には、知人だけでも300人とも450人ともいえるほどの人が小澤の舞台を観に来たというエピソードを聞いた。そんな小澤のことを「交友関係広いし、あの人のこと嫌いって人聞いたことがない」(鈴木)、「やさしいよねって話しか聞いたことない」(町田)、「愛嬌があるよね」(青柳)と口々に語っていた。

 また、劇団内、LDH内でも一、二を争うくらいの料理好きとしても知られていて、LDH kitchen店舗コラボ企画「男THE飯」という企画を重ねている。筆者も居酒屋EXILEで小澤考案のメニューを食べたが、満足感があり、近所にあったらまた食べに行きたいようなクセになる豚丼だった。先述のインタビューでも、劇団のメンバーが家に来ると、必ずプラスチックのコップでコーヒーを淹れたり、辛ラーメンをふるまったりしていたそうである。

 演技の話に戻ろう。2017年には『ウルトラマンジード』(テレビ東京ほか)に伊賀栗レイト役で出演。眼鏡をかけたサラリーマン、しかも妻と子供もいるという役は、それまで不良、チンピラ、犯人役などが多かった小澤にとっては初めて挑むもので、役作りとしてサラリーマンについて勉強して臨んだという(参照:SPICE「特撮オタクのフリーターとリーマンが地球を救う! 『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』公開記念 濱田龍臣・小澤雄太インタビュー」)。レイトのときは、うだつのあがらない風体だが、子供を助けるために自分を顧みる勇敢さも持ち、そんなところを見込んで、ウルトラマンゼロが一体化することとなる。

 ウルトラマンゼロが一体化したときのレイトは、うだつのあがらない臆病そうな姿から一変、強くて自信に満ちた姿になり、華麗なアクションも繰り広げ、一作で二面性を見せる。ブルース・リーのようなしぐさを見せるのも憎い。

 この『ウルトラマンジート』でも、その他の作品でも、小澤のアクションには定評がある。舞台『PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』などでも、華麗なアクションを見せたが、身体能力の高さが中から見えるようなアクションなのは、小澤がかつてブレイクダンスをやっていたことも関係あるように思えた。

 『ウルトラマンジード』で演じた、硬軟併せ持つキャラクター性は、劇団EXILEのメンバー総出演の舞台『勇者の為に鐘は鳴る』でも生かされていた。この作品で小澤は、「見た目はウルヴァリンのようだけれど中身は中学生」の「バチバチ」を演じている。

 『ウルトラマンジード』に出たことはさらに縁をもたらす。『ウルトラマンジード』に息子とともにハマったと公言している三谷幸喜が、自身の映画『記憶にございません!』に『ウルトラマンジード』のジード役の濱田龍臣とともに、ゼロ役の小澤も抜擢したのだった。小澤はこの作品で、中井貴一演じる総理の記憶喪失を診断する医師役を演じた。眼鏡に白衣に七三で登場する姿には、レイトの影も感じられた。

 その後、三谷は2020年の舞台、PARCO劇場オープニングシリーズ『大地』にも濱田とともに再び小澤を抜擢。PARCO劇場オープニング・シリーズでもあり、また緊急事態宣言中で感染対策をとり初日を迎えるという状況の中での舞台、しかも大泉洋や浅野和之、辻萬長などの経験ある先輩俳優たちと共演する作品で小澤は政府役員のドランスキーという役を演じた。ちなみに、ここでも眼鏡で七三の堅物そうな役である。

 本作はとある共産主義国家の収容所を舞台にしており、そこに反政府主義のレッテルを貼られた俳優が集められたという状況を描いている。そこで俳優たちが、自分たちの演技を、舞台を取り戻そうという物語の中で、小澤は演劇に対してまったく理解のない政府役員という役を演じている。それは、いわばほかの俳優たちとは相反する価値観の持ち主である。そんな小澤演じるドランツキーが、「俳優」たちの演技に翻弄されるシーンは、物語の転換点でもあり、ある種の見せ場でもあった。小澤と俳優たちの繰り広げる演技によって笑いを生んでいた。

 小澤は『ウルトラマンシード』のオーディションのときに「普通の人を演りたい」と語ったというが、そのことで道がどんどん開けているように思える。これからも、そうした視点で普通の人を演じつつも、たまにはまた以前のようなチンピラ役に帰っきてほしいとも思う。そのときには、また違った奥行のあるチンピラ役になっているのだろう。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

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