Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『スカーレット』二人でコーヒー茶碗作り 八郎が喜美子に語った、ものづくりの神髄

リアルサウンド

19/12/17(火) 12:00

 『スカーレット』(NHK総合)第68話で描かれたのは二人の共同作業。カフェで使うコーヒー茶碗を年末年始返上で制作する八郎(松下洸平)と喜美子(戸田恵梨香)。「うちにはまだ難しい。けど作りたかった」という喜美子の言葉を聞いて、八郎は部屋を飛び出す。しばらくして戻ってきた八郎は、信作(林遣都)の家に電話し、喜美子が茶碗づくりをする承諾を得てきたと伝える。

参考:『スカーレット』第69話では、八郎(松下洸平)が「初めてのキスはいつ?」と言い出し……

 「とやぁ」と小さくつぶやいて、喜美子は電動ろくろを回し始めた。ろくろの規則正しい回転音と弾むような音色に気持ちが高まる。しかし、思惑に反して作業がはかどらない喜美子の様子を見て、八郎は「これは僕がやる。そのうち上手になるで」と声をかける。「勝った負けたで言うたら、うちの負けですか」と気落ちする喜美子に「自分の作ったコーヒー茶碗で誰かが美味しそうにコーヒーを飲んでくれてる。そういう景色を思い浮かべて作ってください」と八郎。「作ってる人の気持ちが作品に伝わる。どんなものづくりでもそこだけは一緒や。心は伝わるで」と自身の経験を通して、ものづくりの神髄を伝える。

 長年の経験から八郎は喜美子の焦りや気負いを感じ取ったのではないだろうか。「陶芸の神様と勝負する」と言う喜美子の言葉は一聴するとおおげさに聞こえるが、ものづくりの核心を突いているとも思う。店で使うコーヒー茶碗は日常の消耗品ではあるけれど、毎日使うものだからこそ、作り手のアイデアや感性が使う側にも伝わる。コーヒー茶碗ひとつにも魂を込めてつくる喜美子の姿勢が端的に表れている場面だった。思うようにいかない茶碗づくりに四苦八苦しながらも、喜美子は朝までかかってコーヒー茶碗10個を成形する。

 その頃、川原家では、帰省中の直子(桜庭ななみ)が常治(北村一輝)と、パーマをかけていいかどうかで押し問答をしていた。今なら自分で決めればいいことだが、わざわざ父に聞きに来るところが素直だし、実は親思いなのが直子。それに対する常治の答えもすさまじく「不細工になんなよ」とらしさ全開。東京で仕事をする直子は、「ずーっと先に喜美子ねえちゃんの顔が浮かんで、あそこに追いついてやろうと思って」頑張っているうちに、会社でも副班長を任され給料もアップした。「マリリン・モンローみたいになったる」とはしゃぐ直子が新しい生き方を見つけることができたのは、喜美子の存在があったから。夢中に目の前の仕事に取り組む喜美子の姿が、知らない間に後に続く妹たちの道を開いていく。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む