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Vol.1<後編>『ある用務員』
阪元裕吾監督×福士誠治

2021年に『ある用務員』『ベイビーわるきゅーれ』『黄龍の村』『最強殺し屋伝説国岡[完全版』と4作品が劇場公開され、昨年末には「TOHOシネマズ ピックアップ・シネマ」での特集上映も満員御礼となった注目の才能、阪元裕吾監督にインタビューを敢行。前後編となる第2回は、バイオレンスアクション『ある用務員』で映画初主演を飾った福士誠治との対談でお届けします!

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ふたりでアタマの中を見せあって
一緒に考えられたのがすごく楽しかった

── 福士さんは主演もされている印象ですが、『ある用務員』が映画初主演というのは驚きでした。

福士 NHKさんの時代劇ドラマや、舞台では主役をやらせているのですが、映画での主役はありませんでした。僕が業界に入って初めての映画が佐々部清さんの作品で、いつか恩師である佐々部さんの作品で主役を、なんて話もしていたんですが、タイミングも合わずに亡くなられてしまって……。映画界ではなかなか縁がないと思っていたときにお声がけいただいて、ぜひやりたいと思いましたし、とても素敵な時間になりました。

── 福士さんがお仕事を選ばれる際に、なにか基準はありますか?

福士 スケジュールが許す限りいただいた仕事は全部やりたいと思っています!(笑)。でも『ある用務員』は「選ぶ」と言うのはすごくおこがましいのですが、作る前からワクワクして、始まる前から面白そうだなと虫の知らせのようなものがあった作品でした。

── 阪元さんが福士さんを主演に選んだ理由は何だったんでしょうか?

阪元 僕はずっと自主映画でやってきて、出演しているのはみんな知ってる人たちだったんです。『黄龍の村』も一応商業映画ですけど、キャスティングはほぼ同じような決め方をしましたし。

── 確かに『黄龍の村』は常連俳優が多くて、もう阪元オールスターズですよね。

阪元 そうですね(笑)。でも『ある用務員』は、自分では珍しいパターンで、キャスティングを考えずに企画書を書いたんです。ざっくり『ダイ・ハード』『アジョシ』『レオン』みたいな、日本の映画にはあまりない主人公像を考えていて、かつ、動けて、色気があって、みたいな漠然としたイメージから自然に福士さんにたどり着いた、としか言えないですね。用務員の作業着を着て、引き画で立って携帯に出るシーンがあるんですけど、さして印象的なシーンではないはずなのに、存在感がちゃんと出来上がってる人やなと思ったんです。あのとき、福士さんが深見役でよかったなと思えました。

福士 ありがたいです。そんな風に言っていただいて(笑)。

阪元 初日か、だいぶ最初の方に撮ったシーンなんですけど、あれには痺れました。

── メイキング映像で、監督が「初めてみたいな現場」だと仰っていたんですが、商業映画の現場がほぼ初めてという意味だったんでしょうか?

阪元 なんのつもりで言ってたんですかね?

福士 でも「自主では撮ってきたけどプロのスタッフがいるような現場は初めて」という話は僕も聞きましたよ。現場では監督がしきりにウロウロしていましたよね(笑)。

阪元 確かに殺し屋のひとりを演じた幕雄仁さんからも「阪元さん、ずっと歩き回ってましたよ」って言われました。自分では全然気づいいてなかったんですけど、とにかく落ち着かなかったんでしょうね。緊張もあったし、いろんな脳みそを回転させ過ぎてずっとウロウロしてたらしいです。フルスピードで駆け抜けた6日間で、記憶も曖昧なんですけど。

── 福士さんの目に監督はどう見えていましたか?

福士 年齢って僕にはあまり関係なくて、他のスタッフたちに「商業は初めてなので、僕らが全力でサポートしたい」と言うと、みんな「いいじゃないですか!」という空気で、いい現場でした。あと、監督の思い描いているものはどんどん伝えてほしいとは言いましたね。僕が「ん?」と思っても、それは僕のアタマの中のことだし、トータルですべてを考えているのは監督だと思っているので。きちんとふたりでアタマの中を見せあって、一緒に考えられたのがすごく楽しかったです。

殺すシーンって
長くても短くても撮っていて楽しい

── 『ベイビーわるきゅーれ』のまひろ役でもある伊澤彩織さんとのバトルは、やはり『ある用務員』の中でもすごい見せ場ですね。尺も長いですし。

福士 伊澤さんはすごいですよ。速いし、強いし。僕は作品の中で戦ってきただけで、その都度スタントを教えていただいて練習してきた積み重ねしかない。伊澤さんとのアクションは、テコンドーなどを取り入れた細かい殺陣で、僕は覚えるのに脳がついていかなくて必死でした。でもやっぱりアクションって面白い。感情として大きいし、シンプルなのがいい。映画の中にはうじうじ殺す暗殺者もいましたが(笑)。

阪元 ああ、うじうじ殺してましたね(笑)。でもやっぱり殺すシーンって、長くても短くても撮っていて楽しいです!

── ただ『ある用務員』の撮影は6日間、『ベイビーわるきゅーれ』は6日半ということで、いくらなんでも長編映画でアクションをやるには短すぎませんか?

阪元 どうですかねえ。自分はもうそのぺースでしかやってこなかったんで、むしろ普通くらいに思ってますけど(笑)。

福士 いやあ、僕はよく撮れたなあと思いましたよ。

── 妥協して省いたシーンはありましたか?

福士 カットしたシーンは、なかったですよね? 多少変更したところはあっても。

阪元 撮れなくて「あー」みたいなことは、なかったですね。

── 福士さんが現場に入ると、スタントマンがいなかったというのは本当ですか?

阪元 本当ですね……あまりいいことではないと思いますけど……。

福士 アクションは多かったですが、監督が殺陣師さんに「これできますかね?」と聞くと、「やりますよ、福士さんなら」と言うので「やれるみたいですよ、俺」って答えるしかない(笑)。でもそういうものだと思うんです、何かが生まれる瞬間って。

── 阪元監督の映画では、かなりあっけなく人が死にますし、クライマックスで因縁の相手と対決するようなお決まりのパターンにも当てはまらないことが多い。アクション映画の定番から離れようと心がけているんでしょうか?

阪元 因縁の相手と戦うストーリーって、やっぱり強いと思うんですよね。だからこそ「よくもオヤジを殺したな!」みたいな話に寄るよりも、深見にとっては唯を守ることの方が大事だという物語にしたかった。ラスボス的な本田が一瞬で撃ち殺されるのも、やっぱり因縁よりもサプライズで行きたかったからだし、深見と唯を大事にするためにそっちにはカロリーを割かなかったというのはありますね。

福士 監督の作品って、どんなに積み上げたものがあってもパーンと一発で死んじゃうじゃないですか。その人の気持ちってなんだろうというか、死んだら終わりじゃんっていう感覚がすごく来る。死ぬ直前までワーワー言っていても、もっと言いたいことがいっぱいあったんだろうなと思う。メッセージというほどじゃないかもしれないけど、あのあっけなさに「これが殺し屋の世界なんだよな」と思わされますね。

── 監督は以前にS・クレイグ・ザラーの映画が好きだとツイートされていましたが、死や暴力をフラットに描くという点では共感するものがあるんでしょうか。

阪元 ザラーさんの映画を観たのは『ある用務員』よりも後でしたけど、でも分かります、ああいうことがやりたいっていうのは。僕も“物語のための映画”にはならないようにしたいし、かといって物語をおざなりにするわけにもいかないんですけど、でもストーリーにとってはどうでもいいシーンでも、映画にとって大事なことってあると思ってます。アクションシーンなんてまさにそういう部分で、ストーリー上では単に“倒した”っていうことだけですけど、そこのバランスは『ある用務員』でも『ベイビーわるきゅーれ』でも考えていましたね。

福士 『ある用務員』は、週刊コミック誌で連載してほしい。ラスボスがまだ見えなくて、次々と敵を倒していくうちに、誰かを守る話だと分かっていくみたいな。

阪元 続編のことも考えたりはしてたんですよね。伊能さん(ヒロ役の伊能昌幸)の地元が熊本なんで、阿蘇に行くとか。本田がまだ生きてて、ふたりで田舎に逃げてるとか。

福士 いいですねえ。前作では殺したけど実は生きていたかも、みたいなこといいんじゃない? いきなり「5年後……」とかにして作るのはいかがでしょう(笑)。

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