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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『レ・ミゼラブル』

リアルサウンド

20/2/28(金) 20:30

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ちょび髭男爵こと石井が『レ・ミゼラブル』をプッシュします。

『レ・ミゼラブル』

 フランス映画でこのタイトルとなれば、「また映画化?」と思うことがほとんどかと思います。が、本作はヴィクトル・ユーゴーの小説を映画化したものではなく、歌い出すジャン・ヴァルジャンが出てくるわけでもありません。タイトルの意味の通り、「悲惨な人々」「哀れな人々」が描かれる“いま”の物語になっています。

 舞台はパリ郊外の治安がいいとは言えないエリアであり、小説『レ・ミゼラブル』にも登場するモンフェルメイユ。転勤でやってきた警官・ステファンが、ベテラン警官コンビのクリスとワンダとともに街をパトロールし、ギャングや街の少年たちとのいざこざの中で、“最悪”の自体に発展していき……というのが本作のおおまかなあらすじです。

 主観ショットを交えながら、ちょいワル警官たちが街の悪を摘み取っていく実録もの。始まって数分は、デヴィッド・エアー監督作『エンド・オブ・ウォッチ』のフランス版?ぐらいに思っていたのですが、時間が進むごとに様相は一変。ちょいワルどころか、警官として以前に人間としてどうかという行為をクリスとワンダは重ねていきます。

 人種差別は当たり前、恫喝も住民相手に平気で行う。観客は異動してきたステファンと同じ目線で、「こいつらおかしい!と思うこと間違いなしです。悪徳警官ものといえば、日本映画でも『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』などが記憶に新しいですが、それらの作品にあったようなフィクションとしての“ポップさ”は一切ありません。だからこそ、彼らの暴力が目に見えて痛く、同じ場所に居合わせたような心境にどんどんなっていきます。

 実録ものとして前述の『エンド・オブ・ウォッチ』とも決定的に違うのも、彼らにとっての“当たり前”を“異常”と感じるステファンの視点があるところ。彼の存在を通して、観客も映画の中により誘われていくのです。

 断ち切れない暴力の連鎖、権力者によって抑圧される弱者、自分ではどうすることもできない貧困、社会のシステムから零れ落ちてしまった人々と、日本に生きる私たちにとっても他人事ではない、歪ん現代社会の現状が浮かびあがっていきます。

 映画のラストカット、その先にあるのは希望なのか絶望なのか。そして、あの場所に自分が居合わせたらどんな行動を取るのか。いい映画は観終わった後に語りたくなる映画と言いますが、本作はまさにそんな1本になっています。

 現在は新型コロナウイルスの影響で各イベントやレジャー施設が相次いで中止・休館、映画館もどんな状況になるか分かりません。映画館へ行くことを推奨できない状況ですが、事態の収束後でも、十分な対策をして行く形でも、スクリーンでの鑑賞をオススメしたい一作です。

■公開情報
『レ・ミゼラブル』
公開中
監督・脚本:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、ジャンヌ・バリバール
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
原題:Les Miserables/2019年/フランス/フランス語/104分/カラー/シネスコ/5.1ch
(c)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS  
公式サイト:lesmiserables-movie.com
公式Twitter&Facebook:@lesmise2019

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