Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

「フェスティバル/トーキョー19」全プログラム&アーティスト紹介記者懇談会の様子。

長島確が提案「パフォーミングアーツを通して都市を想像する時間になれれば」

ナタリー

19/7/11(木) 19:04

10月から11月にかけて開催される「フェスティバル/トーキョー19」に向けて、全プログラム&アーティスト紹介記者懇談会が、本日7月11日に東京都内で行われた。

懇談会には「フェスティバル/トーキョー」名誉実行委員長の豊島区長・高野之夫、ディレクターの長島確、共同ディレクターの河合千佳のほか、参加アーティストよりセノ派(杉山至、坂本遼、佐々木文美、中村友美)、マグダ・シュペフト、キム・ジョン、山本卓卓、JK・アニコチェ、滝朝子、谷口暁彦、北澤潤、安藤僚子、菅野信介、神村恵らが登壇した。

長島は、今回のテーマである「からだの速度で」について、「私たちは速さを求め、その欲望を追求するあまり、高速化、効率化して生活が便利になりました。ただ、それによって身体が悲鳴を上げているのも事実ではないでしょうか?」と問いを投げかける。さらに「情報の速度がますます上がり、それに対する感情的なリアクションは起きているものの、私たちの身体のスピードはそこまで上がっていません。そもそも私たちの“からだの速度”は一様ではありませんし、今や人ではないものの速度、身体のない速度などさまざまな速度のバリエーションがあって、そういったさまざまな速度によって東京という都市ができています」と述べる。その点で、身体を用いるパフォーミングアーツに可能性があると言い、「パフォーミングアーツというジャンルは、それを作るプロセスの中にも社会が含まれますし、そこで起きるコミュニケーションや交渉を通して、現実には必ずしも実現できないようなことまでできてしまう。パフォーミングアーツを通して都市を想像する、そういう時間にフェスティバルがなれれば」とプロジェクトへの思いを語った。

続けて共同ディレクターの河合が登壇し、「今回の『フェスティバル/トーキョー」にはたくさんの挑戦があります」と見どころを述べる。その1例としてロゴを一新したこと、大塚をはじめ、拠点を池袋周辺に数カ所に設ける予定であることを挙げた。

そのあとアーティストたちが自身の創作について構想を語る。オープニングプログラムを手がけるのは、セノグラファーの杉山らによるセノ派だ。杉山は「ヨーロッパのパフォーミングアーツが広場型だとすると、日本は道から発生している。そこで、道を構成する最小単位は商店街ではないかという考えに行き着き、『移動祝祭商店街』というタイトルになりました」と話す。具体的には山車のようなポータブルな装置を作り、舞台芸術と地域をどのようにつなぐことができるかに迫る。

「オールウェイズ・カミングホーム(仮)」を手がけるマグダ・シュペフトは、本テキストを「人間中心的な視点から離れた目線で書かれた作品です」と紹介する。さらに「私たちは非常に困難な時代を生きていると思います。そのような世界で希望を持つような余地はあるのでしょうか? 私にとって演劇や劇場は、それができる空間だと思います」「私は世界を治すための処方箋を持っているわけではありません。しかし質問を発し続けることで、それができるのではないでしょうか」と創作への思いを語った。

松井周の「ファーム」を演出するのは、気鋭の韓国人演出家キム・ジョン。キムは戯曲について「なんでこんな変な戯曲を?と思いましたが(笑)、実際に松井さんにお会いしたらとても素敵な方で、たくさんの方から愛されている方だと知り、負担を感じています」と話し、会見場を和ませる。また「戯曲を読みながら感じたのは、人が生まれ、歳を取り、最後に死ぬということ。その点で私たちは皆同じです、それを表現したいと思います」と思いを述べた。

フィリピンのパフォーマンスメイカー、JK・アニコチェは今回、山川陸とコラボレーションする。アニコチェは東京がトランスフィールドな場所であると語りつつ、「移動式の砂場のようなものを作って池袋の周りを巡り、さまざまな人に、砂でいろいろな構造物を作ってもらいたいと思っています」と構想を語った。

マレーシア・ペナン、クアラルンプールを拠点とするオクイ・ララとコラボレーションするのは、アーティストの滝。さまざまなコミュニティをめぐる事象に着目してきた2人は今回、それぞれに強い関わりを持つコミュニティを出会わせるようなレクチャーパフォーマンスを行う予定だ。

「メディアアートと呼ばれるような作品を作っています」と自己紹介した谷口は、今回、「ビデオゲームの世界と、子供ための遊び場であるクッション素材の“ソフトプレイ”を重ね合わせた作品にしたい」と意気込みを述べた。

美術家の北澤は、自身の拠点が現在はインドネシアのジョグジャカルタだと話し、「ジョグジャカルタの街は“からだの速度”に合っている。身体感覚と都市の情報速度、人の流れが“からだの速度”とずれていないと感じます。今回はそんなジョグジャカルタの街に点在するアンクリンガンという屋台型商店を池袋の街に出現させます。都市の中にオアシスができるのではないか、そういう状況を目指して、東京という都市について考えていければ」と構想を明らかにした。

東京・武蔵小山でリソグラフと工具があるD.I.Yスタジオを営むHand Saw Pressは、今回、池袋に新たなスタジオを開く。安藤は「スタジオを訪れる方がどういったものを作ってくれるのかすごく楽しみ」と話し、菅野は「リソグラフを使っていろんな人が来られる場所を作れれば」と続けた。

「ダンスすることが自分のリハビリになっている」と語る神村は、「最近は頭の中で考えていることを観察することに興味が移ってきていて、今回もその興味を持ち込みます」と話す。今回は茶室での上演となるが、その面白さを「茶席は全部引用で成立している。お茶も器も掛け軸も誰かが作ったもので、それを1つひとつ褒めて話題にします。その場では誰も自分のことを語らないんです」と指摘し、「茶室という空間が、パフォーマンスの内容にも影響をもたらすと思います」と続けた。

範宙遊泳の山本は、昨年に続き、ソロプロジェクト・ドキュントメント名義で映像作品を手がける。山本は長島の“からだの速度”に関するステートメントに対して、「僕はその社会の速度から弾き出されてしまった、社会の歯車に全然乗れていない感じがある」と共感を述べる。その思いから「僕は作品を作っていこう」と思いを強くしたと言い、「今回の作品もその1つ」と説明する。また「世界や世の中、社会は厳しい、冷たいことがあふれていると思っています。でも僕は優しさに触れたい。人や社会の優しさに触れられるような作品にしたい」と穏やかだが、強い口調で語った。

「フェスティバル/トーキョー19」は10月5日から11月10日まで東京・東京芸術劇場、あうるすぽっと、シアターグリーンほかにて開催される。先行割引チケットは8月28日10:00から31日17:30まで販売され、一般前売りは9月1日10:00に開始する。

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

「フェスティバル/トーキョー19」

2019年10月5日(土)~11月10日(日)
東京都 東京芸術劇場、あうるすぽっと、シアターグリーン ほか

参加アーティスト:セノ派、マグダ・シュペフト、キム・ジョン、北澤潤、ドキュントメント、香料SPICE、Hand Saw Press、神村恵

「トランスフィールド from アジア」参加アーティスト:JK・アニコチェ×山川陸、オクイ・ララ×滝朝子、ファンラオ・ダンスカンパニー、谷口暁彦

アプリで読む