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立川直樹のエンタテインメント探偵

オリヴィエ・アサヤスも賛辞を送った宮崎大祐監督『VIDEOPHOBIA』、ニコール・キッドマン主演のSF『インベージョン』など

隔週水曜

第56回

20/8/12(水)

(C)「VIDEOPHOBIA」製作委員会

「ネットワークの落とし穴から迷い込んだ異世界で、追いつめられる主人公の孤立と恐怖。大阪のアンダーグラウンドを舞台にした、モノクローム・サイバー・スリラー!」というウタイ文句と、フランスの映画監督オリヴィエ・アサヤスが「見事な作品」と惜しみない賛辞を送ったという話にも惹かれ、出かけていった渋谷の映画美学校の試写室で『VIDEOPHOBIA』(監督は宮崎大祐。30歳という若い監督。10月24日公開)を観た夜。テレビのニュースは大阪でもコロナ感染者数が221名と東京に次ぐ高い数字になったことを報じていた。

コロナ関連の報道は国内は勿論のこと、国外に目を向けると完全に映画のような様相を呈していて、たまたまWOWOWで観たニコール・キッドマン演じる女性医師が謎のウイルスから息子を守ろうとする姿を描くSF『インベージョン』(2007年のアメリカ映画。共演はダニエル・クレイグやジェフリー・ライト。製作にジョエル・シルヴァーのクレジットがあった)がリアルな映像と重なり合うし、ウイルスの映像はコロナとほぼ合致していたり、それに加えて政治はダークコメディのようになっている。

『インベージョン』
ブルーレイ 2,381円+税、DVD特別版 1,429円+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
(C)2008 WarnerBros. Entertainment Inc. All rights reserved

だからといって、何もせずにいるのもどうかなと思って、ビリー・ホリデイの命日に合わせて「新型コロナウイルスの感染拡大はまだまだ続いています。いつ始まり、いつ終わるのかもわからないパンデミック。世界は近未来SFのような状況になっています。そして見えないものに支配されている不自由さと不安。答は見出せませんが、それなら映画の一場面のように特別な空間で、安らぎの時間を同じ種族の人達と過ごしてみたいと考えました。7月17日はおりしもビリー・ホリデイの命日。ジャズ史上最大の不世出のシンガーの名唱がもたらしてくれる甘美なひととき。近未来の不穏な世界にロマンティックな時代の歌とサウンドが不思議なほどしっくりくるのはさまざまな映画で実証済みです。是非お出かけください」という御案内をして、セルリアン東急タワー40階のBAR「BELLOVISTO」でビリーの名盤と夜景を楽しみながらグラスをかたむけ会話を楽しむというイベントを企画したが、結果はエンタテインメントというのは小振りなものでも十分に成立するものだと実感させてくれた。

おうち時間で見たドキュメンタリー・映画は大収穫! ウイリー・ネルソン新作『ファースト・ローズ・オブ・スプリング』の素晴しさ

そうなるとアイデアが次から次へと浮かんでくる。家にいる時間が多いので、テレビ・チェック盤石で7月24日、25日の2日間などはWOWOWの『ジョーカー』放送記念大特集で『バットマン』4本に『ダークナイト』、見損なっていたので気になっていた『ジョーカー』、写真家の鋤田正義さんからお借りしたドキュメンタリー『スチュアート・サトクリフ 5人目のビートルズ』(スチュの恋人で初期ビートルズの姿をカメラに収めたドイツ人写真家アストリッド・キルヒャーと鋤田さんが1938年生まれの同い年で、2人は写真を贈り合っている仲というのも素晴しいエピソード)、8月1日に万博記念公園のおまつり広場にオープンするドライブインシアターの初日に上映される『太陽の塔』(上映に合わせてヤノベケンジと2人でトークショーをやることになっている)、ジョン・トラボルタの怪演が強力な『ファナティック ハリウッドの狂愛者』をDVDで観たので、合計8本、ノリは全に短期集中講座。

結果として、ティム・バートンとジョエル・シュマッカー、クリストファー・ノーランという3人の監督の表現様式の違いなどが理屈抜きでわかったのは大収穫だったし、7月26日の日曜美術館『自然児、棟方志功〜師・柳宗悦との交流〜』(NHK Eテレ)の中で棟方が口にした「美しくなければいけないという窮屈なものではない。もっと自由なのである」という言葉も心に響いた。

ウイリー・ネルソン/『ファースト・ローズ・オブ・スプリング』ミュージックビデオ

その流れでいうと今年の4月に87歳を迎えたウイリー・ネルソンのスタジオ録音による最新作『ファースト・ローズ・オブ・スプリング』の素晴しさにも唸らされた。御大が元気なのはうれしい限りだが、7月は山本寛斎さんを筆頭に、『風と共に去りぬ』で有名なオリヴィア・デ・ハヴィランド、弘田三枝子、フロートウッド・マックの創始者ピーター・グリーン、ジジ・ジャンメール……とエンタテインメントの歴史に足跡を残しているたくさんの人が天国に旅立った。

寛斎さんのことは、WOWOWで放映されたファッション・ドキュメンタリーでその凄さに圧倒されたアレキサンダー・マックイーンのことも含めて次回書くことにしよう。それまでには『VIDEOPHOBIA』の試写に出かけた時にゲットした『ナチスと映画III』(8月28日まで)の上映作品が抜群に充実しているので、絶対に何本かは観ようと思っている。

シネマヴェーラ渋谷『ナチスと映画III』

作品紹介

『VIDEOPHOBIA』(2019年・日本)

2020年10月24日公開
配給:boid/VOICE OF GHOST
監督:宮崎大祐
出演:廣田朋菜/忍成修吾/芦那すみれ/サヘル・ローズ

『インベージョン』(2007年・米)

監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:ニコール・キッドマン/ダニエル・クレイグ/ジェレミー・ノーサム/ジェフリー・ライト
放送日:2020年7月28日
WOWOW

『ジョーカー』放送記念大特集

放送日:2020年7月23日~25日
WOWOW

万博記念公演ドライブインシアター・オープニング上映会 映画『太陽の塔』

日程:2020年8月1日
会場:万博記念公園ドライブインシアター
ゲスト:立川直樹(プロデューサー)/ヤノベケンジ(現代美術家)

『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年・米)

2020年9月4日公開
配給:イオンエンターテイメント
監督:フレッド・ダースト
出演:ジョン・トラボルタ/デヴォン・サワ/アナ・ゴーリャ/ジェイコブ・グロドニック/ジェームス・パクストン

日曜美術館『自然児、棟方志功〜師・柳宗悦との交流〜』

放送日:2020年7月26日
NHK Eテレ

特集『ナチスと映画III』

日程:2020年7月25日~8月28日
会場:シネマヴェーラ渋谷

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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