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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

川本三郎の『映画のメリーゴーラウンド』

ゴダール『勝手にしやがれ』の話から、モーツァルト『クラリネット協奏曲』、アルドリッチ監督『地獄へ秒読み』…最後はマルティーヌ・キャロルにつながりました。

隔週連載

第29回

19/7/23(火)

 先だって死去した降旗康男監督の『冬の華』(1978年)では、やくざの高倉健が不似合な名曲喫茶で、チャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第一番』をリクエストして、ウェイトレスに「いま掛かっているのがそうです」と言われてしまった。やくざとクラシックのミスマッチが面白い。
 ゴダールの『勝手にしやがれ』(1959年)にもミスマッチがある。パリのチンピラ、ジャン=ポール・ベルモンドは意外なことにモーツァルトの『クラリネット協奏曲』が好き。ジーン・セバーグが「あなたがクラシック音楽が好きとは知らなかったわ」と驚くと「この曲だけだ。親父がよく吹いていた」。
 ハンフリー・ボガートに憧れるような男がモーツァルトが好きという意外性で印象に残る。ちなみに『クラリネット協奏曲』は、タヴィアーニ兄弟の『父 パードレ・パドローネ』(1977年)、アイザック・ディネーセン原作、シドニー・ポラック監督『愛と哀しみの果て』(1985年)に使われている。
 アカデミー賞外国映画賞を受賞したフランス映画、ベルトラン・ブリエ監督の『ハンカチのご用意を』(1978年)では、モーツァルトが大好きな学校の先生、パトリック・ドゥヴェールが、恋人のキャロル・ローレを『クラリネット協奏曲』の演奏会に誘う。映画のなかの人気曲だ。

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