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【おとな向け映画ガイド】

シングルマザーの挑戦と葛藤『約束の宇宙』、演劇とライブと恋の街・下北沢の『街の上で』、今週はこの2本をおすすめ。

ぴあ編集部 坂口英明
21/4/11(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(4/16・17)に公開される映画は10本。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『名探偵コナン 緋色の弾丸』1本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。今回は、ぴあ水先案内人がオススメする今週公開の『約束の宇宙(そら)』と先週公開の『街の上で』をご紹介します。

7歳の娘を地球に残して
『約束の宇宙(そら)』



フランス人の女性宇宙飛行士サラを主人公にした映画です。彼女は欧州宇宙機関(ESA)のスタッフで、国際宇宙ステーションに約1年間滞在するミッションへ抜てきされます。将来の火星探査に備えた準備プロジェクトです。サラにとっては子どもの頃からの夢、とうとう宇宙へ行けるのです。ロシアのスターシティに集められた乗組員メンバーは、アメリカ人のリーダー、ロシア人、サラの3人。国際チームです。この基地で、出発までの2カ月、過酷な猛訓練が行われます。

宇宙飛行士といえば、難関を突破した超エリートです。まさに雲の上の人なのですが、サラをシングルマザーという設定にしたことで、俄然身近な存在に感じさせてくれます。娘ステラは7歳、まだ甘えん坊さんです。学習障害を抱え、ケアも必要です。元夫が留守中の面倒を引き受けてくれたものの、娘はサラの心のよりどころであり、唯一の気がかりでもあるのです。娘にとっては理解しがたい状況のはず。そのふたりの葛藤と、ふたりで交わしたある「約束」が感動のドラマをよびます。

脚本と監督はフランスのアリス・ウィンクール。同じような8歳の娘を持つ母親の立場で、このストーリーを作りました。サラ役はエヴァ・グリーン。アメリカ人飛行士役でマット・ディロンが出演しています。音楽は坂本龍一。

ESAの全面協力を得て、ドイツ、ロシアの宇宙基地で撮影が行われ、訓練用の機器や小道具類も実機を使用しているそうです。宇宙に持ち出せる私物は、靴箱くらいの大きさの箱がひとつだけ。何を入れるか、サラが思い悩むシーンがありました。よく、もし無人島に持っていくならこの1冊、とかいわれますが、あれと同じ。そんなところもこの映画に感じたリアリティです。

【ぴあ水先案内から】

佐藤久理子さん(文化ジャーナリスト、パリ在住)
「……宇宙飛行士という遠い存在の陰の苦労が、親近感をもって伝わってくる。スーパーヒーローもまた、ひとりの悩める人間であることに変わりはないのだ。……」
https://bit.ly/3t68kRa

高松啓二さん(イラストレーター)
「……見所は、彼女の強靭ながんばりではなく、挫けそうな弱さを感じながらも働くリアルな女性の姿……」
https://bit.ly/3msZydm

伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
「……女の子に生まれたって、子供を産んだって、夢を叶えられる。『約束の宇宙』は、子供たちへ向けた未来へのメッセージなのだ。」
https://bit.ly/2POXdxv

シモキタのあそこもここも
『街の上で』



男子と女子がめぐりあい、会話をして、お互い、いろいろジャブいれながら、この人とひょっとして……と空想をめぐらす。『愛がなんだ』もそうだったのですが、そんなやりとりのシーンって、今泉力哉監督はうまいですよね。どこかにいそうな主人公、いつかおきそうなできごと。場所は下北沢の、ありそうなところ。

古着屋の店員をしている青(あお)くんが、店番をしながらひまそうに本を読んでいるところが絵になると、自主映画の女性監督に気にいられ、出演依頼が舞い込みます。台本読んで、自分なりに稽古していったのですが、何テイクとってもうまくいかず、結局すべてカット、使われないことに。つきあわされた打ち上げの居酒屋で、隣りに座ったスタッフの女性と意気投合し、彼女の家へ。それでデキちゃうのかというと、ふたりはグダグダ話し続けるだけ。話題は青くんが最近フラれた彼女の話や相手の恋愛遍歴、たわいのないものです。

古書ビビビ、古着のhickory、町中華・珉亭、ライブハウスTHREE、スズナリ、トリウッド……。シモキタの実在の場所を絶妙にとりこみながら、少しコミカルに進むラブストーリーは、あえていうなら初期のウディ・アレン作品の味わい。主人公はアレンのように神経質ではないし、のんびりしていて、好感がもてます。シモキタはマンハッタンみたいにリッチじゃないけど。青役は『愛がなんだ』にもでていた若葉竜也。同じく『愛が…』の成田凌が朝ドラにもでている役者という役どころで特別出演しています。この作品はコロナ禍で公開が1年ほど延期になりました。その間に、若葉君も『おちょやん』に抜てきされ、なんと、朝ドラのふたりが出演、という豪華キャストの映画になっちゃいました。

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……長回しのダラダラとした会話の中に、様々な人生のおかしみが含まれていて、セリフなのかアドリブなのかもわからなくなる魅力。ところがこのダラダラとした点描がクライマックスで一気に集約され大変な興奮を生み出すマジック。やっぱり今泉監督はノッている。」
https://bit.ly/3t13Dbr

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