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香港歌手デニス・ホーのドキュメンタリー公開日が決定、寺尾紗穂ら著名人の寄稿も

ナタリー

21/5/8(土) 15:00

「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」新ビジュアル

香港の歌手デニス・ホーのドキュメンタリー「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」の公開日が6月5日に決定。あわせて本作の新ビジュアル、場面写真、そして著名人18人のコメントが到着した。

香港で初めて同性愛者であることを公表した女性歌手であり、2014年の“雨傘運動”や2019年の逃亡犯条例改正に反対するデモに参加した活動家としての側面も持つデニス・ホー。本作では香港ポップスのアイコンだった彼女が、市民のアイデンティティと自由を守るために声を上げるアーティスト、そして民主活動家へと変貌していくさまが映し出される。新型コロナウイルスの影響などにより、劇場公開は日本が世界初となる。

コメント寄稿者には「わたしの自由について~SEALDs 2015~」の監督・西原孝至、「新聞記者」の脚本家・詩森ろば、歌手の寺尾紗穂や一青窈らが名を連ねた。全員分のコメントは以下に掲載している。

「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」は東京のシアター・イメージフォーラムで公開。

阿古智子(東京大学大学院 総合文化研究科教授)コメント

イラスト、音楽、ダンス、演劇……香港の人々は実に豊かな方法で自らを表現し、アイデンティティを模索していた。その重要なシーンの裏側で、デニス・ホーのようなアーティストが人々に希望を与え続けていたのだ。

倉田徹(立教大学法学部教授)コメント

たった一人のポップシンガーを、政権が、世界的大企業が、遮二無二封じ込めようとする。しかし、彼らが何かを隠すための懸命の行動は、全てをさらけ出した彼女に勝つことはできない。真実に生きることが最強の武器だ。

砂川秀樹(文化人類学者 / ゲイアクティビスト)コメント

市民の闘いが、政府権力に突き崩され厳しい現実が広がる香港。しかし、彼女は闘い続ける希望を表現し、体現する。その姿は、どの地の闘いも、どのマイノリティの闘いも世界の闘いであることを教えてくれる。

寺尾紗穂(シンガーソングライター / エッセイスト)コメント

これは香港の政治の映画ではない。人々の「これから」を示す、未来の映画だ。
たとえ何度壊されても、小さな希望を立ち上げ、新しい場所をうみだす。
デニスの、歌と向き合い続ける姿にその覚悟がにじんでいる。

東ちづる(俳優 / 一般社団法人Get in touch代表)コメント

とてもとても感動した。涙が流れ続けた。その理由を自問するために、もう一度観る。
モヤモヤが深まるのか、モヤが晴れるのか……。とにかく、彼女と出逢えてよかった!

ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン / 美術家)コメント

香港民主化運動もLGBT権利運動も「ここではないどこか」への強い強い想いだ。
いまの彼女を形成したモントリオールで過ごした記憶の歌を、
アニタ・ムイへの想いが詰まった歌を、私たちは涙なくして聴くことはできない。

西原孝至(映画監督)コメント

ひとりの人間として、声をあげ、路上に座り込み、歌をうたう。
生きることは政治的な行為である。デニス・ホーは全身で問いかける。
自由とは与えられるものではなく、一人ひとりの不断の努力によって、勝ち取るものなのだと。

詩森ろば(劇作家 / 演出家)コメント

政治を変えるために立候補する自由さえない。香港はだから戦う。デニス・ホーは、自分のセクシャリティを認め、社会活動に身を投じながら、どんどん美しくなっていく。そしてわたしたちに香港の理不尽な状況を届けてくれる。ホンモノの歌声で。

Naz Chris(DJ / ラジオナビゲーター)コメント

「千の私」は、リーダーなき200万人の叫び。
全てを失っても「失うことのできないもの」のために恐れぬ若者たち。
音楽は、文化は、芸術は、人を導き時代を齎す英気となるのか。
失望・希望・混沌。あなたの求める答えは、この記録の中にある。

スガナミユウ(Save Our Space / LIVE HAUS)コメント

中国政府という強大な力。香港を愛する人たちの自由と権利を守るために、その身の全てを使い、歌い、街頭に立つ。仕事を失いながら、表現の場を失いながら、それでも立ち向かう。
デニス・ホーの姿を観ながら、私たちが暮らす日本を思った。香港のような困難が訪れたとき、私たちは立場を越えて同じように立ち上がれるだろうか。もしかするとそれは、「今」ではないだろうか。

田原牧(東京新聞論説委員兼編集委員)コメント

性であれ、政治であれ、既存の枠をはみ出た人間は世界を変えるか、自滅するかの綱渡りを強いられる。
デニスはいま、香港と世界の風景を変えている。
覚悟と犠牲で編まれた彼女の美しさは、敵が強大なほど光彩を放つ。

キセキミチコ(写真家)コメント

「“行動を起こすのに特別なことはいらない”香港の若者から教えてもらった」
「一から出直すことで、再び見いだす幸せがある」
この作品にでてくる彼女の沢山の言葉の一つ一つに重みを感じた。
人として悩みを抱えながらも、自分の意志を貫く姿はとてもたくましく、素敵だ。
そして、香港の戦いは今も続いている。私は、彼女の歌声を聞いてみたい。

伊藤和子(弁護士 / ヒューマンライツ・ナウ事務局長)コメント

支配を拡大し、一人ひとりの心の自由まで奪おうとする超大国。沈黙と服従を迫る圧力。それでも屈することなく信念を貫き、挑戦を続けるアーティストの生き方と香港への愛に心打たれた。私たちにできることは何か。

高島鈴(ライター / アナーカ・フェミニスト)コメント

デニス・ホー、香港のポップスターにしてオープンリー・レズビアン、そして香港民主化運動のアクティビスト。
民主化運動の最前線に身を投じることも、いまだ差別の残る社会でカミングアウトすることも、中国政府を批判しながら芸能活動を続けることも、傷付かずに歩いて行ける道では絶対にない。
それでもデニスは抵抗の歌を歌い、挫折と消沈を革命前夜に変える。
革命におけるポップスターの役割とは、衰えた正義の火を守り、次なる好機へ向けて引き継いでいくことなのだ。

古谷経衡(作家)コメント

香港における自由の戦いを、確かに日本のメディアは注視した。
しかし日本政治の眼目は今や香港から完全に離れ台湾に向かっている。
北京を敵視し「香港の次は台湾、そして沖縄だ」としていた日本の保守派ですら、香港の扱いは小さい。
コロナとスキャンダルに汲々とする中、香港の叫びが歌声と混じった珠玉のドキュメントが安寧を貪る日本に問うものは余りにも巨大である。

菱山南帆子(市民運動家)コメント

デニス・ホー氏の闘う歌声と色とりどりの傘を手に権力と丸腰で対峙する市民の映像に熱く気持ちがこみ上げる。多様性と自由を勝ち取る闘争に連帯の気持ちを込める。香港での自由を求める闘いは今も続いている。

嶋田美子(アーティスト / 東京大学非常勤講師)コメント

この映画の冒頭の「逃亡犯条例」反対デモの2019年夏、私は香港に滞在しており、集会や空港占拠にも参加した。その間、日本ではあいちトリエンナーレ事件が起き、私も「表現の不自由」展示作家として検閲を受けた。
中国政府の抑圧は非難すべきだ、しかし、この日本は「自由」なのだろうか? 香港のデモで星条旗を掲げ、「自由の国」アメリカに介入を求める声もあった、しかしその時米国ではトランプ政権が移民、有色人種、同性愛者を差別、抑圧していた。
国家や資本は個人の自由を守らない。この映画で最も感銘を受け、共感したのは後半、デニス・ホーが中国から検閲を受け、大企業スポンサーを失った後、300件を超える小口スポンサーを集めて公演を成功させ、その後派手な衣装や演出を廃して小さな会場でシンプルに歌う姿である。地味に少人数に訴えるのは効率が悪く合理的ではないかもしれない。敗北とも取られるかもしれない、しかし、彼女が観客に語りかけていたように、「何か一つ行動を起こせば、それが周りに伝わり、次々に広がっていく」そして長いスパンで見れば、人間性は勝利する。
人間が自由を求めるのは普遍的なことであり、中国の中にももちろん自由を希求する人たちがいる。同様に、日本にも様々な抑圧があり、それに抵抗している人たちがいる。
アーティストができることは、そのような一人一人の奥底の自由への希望をかたちにし、共感の波を広げていくことだと思う。

一青窈(歌手)コメント

5年前、観光で遊びに行った香港とはまるで様子の違う生々しい光景に圧倒された。
条例を通す中国政府と撤回せよと行進する20万人の民間人のデモ隊。歌手が活動家となった瞬間を、平和と自由を求める一人の人間の確固たる意思を、映画の中にみた。
混乱の中で立ち上がった彼女はあまりに美しく、実の兄がピアノを伴奏するモントリオールという曲で涙が流れた。彼女の師匠であるアニタ・ムイという素晴らしい歌手の人生も知ることもできて、同じアジア人、歌手として観て、私にもできることがまだまだあるような気がした。真っ直ぐな信念を貫く生き方に勇気と希望をもらいました。
香港の実情を知ってもらうためにもこの素晴らしい作品をたくさんの若者が観て欲しい!

(c)Aquarian Works, LLC

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