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目に見えるものが真実とは限らないーー『コンフィデンスマンJP』真のターゲットは誰だ?

リアルサウンド

19/5/18(土) 12:00

 “コンゲーム”を描いた、オリジナルのコメディ映画『コンフィデンスマンJP』。“コンゲーム”とは、騙し騙され二転三転するストーリーのジャンルを意味し、この系統の代表的な作品には『スティング』(1973)や、『オーシャンズ11』(2001)に続く一連のシリーズなどがある。古沢良太が脚本を手がけ、昨年フジテレビ「月9」枠にて放映された同名ドラマの劇場版であるが、スクリーンで観るに足る、スケールの大きな作品に仕上がっている。

【写真】5人目のメンバー・新入りのモナコ

 ドラマ放映時、あまりにも突拍子もない大ウソを連発していた作品なだけに、この映画化の話も疑ってかかる必要があった。それほどまでに、ドラマから今回の映画に至るまで、劇中では観客を呆気にとらせ、置いてきぼりを食わせることもしばしばな“ウソ”の数々が、周到に、そして大胆に散りばめられている。はっきり言って、“ウソを見破る”といった試みは本作には通用しないだろう。そう断言できるほどなのだ。

 これを書くにあたり、いったいどこからネタバレに抵触してしまうか判断しかねるため、なかなか本筋には触れられないところではある。だがざっくりとしたストーリーラインとしては、ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)、五十嵐(小手伸也)のドラマ版でお馴染みの信用詐欺師に、新たにダー子の弟子のモナコ(織田梨沙)が加わり、香港マフィアの女帝である通称・氷姫(竹内結子)をターゲットに詐欺を仕掛けていくというものだ。さらにそこに、日本のゴッドファーザーとも言われる赤星栄介(江口洋介)、天才的な恋愛詐欺師のジェシー(三浦春馬)といった存在が絡んでくる。それが二転三転……いや、それ以上に展開がひっくり返ることは、ドラマをご覧の方なら想像がつくだろう。しかし、だからといって、ドラマを観ていなければ楽しめない作品というわけではもちろんない。香港を舞台に116分に渡って繰り広げられるハイテンションなコメディは、新たな観客に向けても開かれた作品である。

 本作は、これまでのドラマ版での各話のゲストや、映画のオリジナルキャストが次々と登場し、まるで“俳優コレクション”といった体を取ったものとなっている。本作でも中核を担う江口は、ドラマの第1話でターゲットにされた人物だ。ドラマ・映画のどちらにおいても時系列がコロコロと入れ代わり、ときには大きな時の飛躍さえも当然のこととして展開していくが、江口演じる赤星は、今作でダー子らへの復讐を果たそうと企んでいる。この劇場版が、ドラマ版の時系列においてどのあたりに位置するのか不明瞭だが、彼の執念深さには並々ならぬものがあるようだ。

 さらに、大手ホテルチェーンの女社長として第2話に登場した吉瀬美智子、第3話で高名な美術評論家役に扮した石黒賢、第7話でベテラン詐欺師であるリチャードに「手を組みたい」と願い出た新米詐欺師の佐津川愛美、ダー子らと敵対する詐欺師コンビとして岡田義徳と桜井ユキが登場。そんな彼らを騙すためのダー子の助っ人に、前田敦子もゲストとして姿を見せていた。そして、第9話でスポーツ嫌いなIT社長役を演じた小池徹平、第10話でダー子たちを追い詰める男に佐藤隆太が扮していた。彼らはみな、今回の劇場版でも姿を見せるのだが、その趣向を凝らした登場の仕方にも注目である。思い出すだけで、あちこちの劇場から笑いが漏れているところが目に浮かぶ。ドラマに登場したキャラクターたちが、劇場版でも活き活きと同じ世界感を生きていることには感動すら覚えてしまうのだ。新たな観客にも開かれた作品だと先に述べたが、やはりドラマ版を網羅しておいた方が、二倍三倍と楽しめることは否定できない。だが、これ以上は何も言うまい。

 本作の副題に「ロマンス編」と冠されているとあって、恋愛詐欺師・ジェシーとダー子の関係も、大きな柱となっている。昨年から映画・舞台での活動がまた活発なものとなってきた三浦がこの役どころを担うわけだが、彼の新たなポテンシャルの開花を目撃できること請け合いである。

 映画とは視覚情報を主とするものだが、本作でつねづね語られる「目に見えるものが真実とは限らない」とは、それを根底から覆そうとしているかのようだ。突拍子もないストーリーテリングと、それにともなう豪奢な映像の連鎖が観客の喜怒哀楽の感情を引き出しながら、それを平気で裏切ってくるのが、本作『コンフィデンスマンJP』なのだ。張り巡らされた“ウソ”と“罠”、そして製作陣の“遊び心”にいくつ気がつくことができるのか。それが本作の醍醐味である。正直、観客に謎解きなどさせてはくれないだろうし、期待しない方がいいだろう。ただ黙って(ときに笑い、ときに涙しながら)、騙されることを楽しめば良いのだ。

(折田侑駿)

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