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『G線上のあなたと私』主婦役が好評 松下由樹「“演じる”というより“幸恵さんに会いたい”って思ってもらえたら」

リアルサウンド

19/12/3(火) 12:00

 元OL、大学生、主婦と、年齢も環境もバラバラな3人が、大人のバイオリン教室で出会い、友情を育んできた火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)。主人公・也映子(波瑠)と理人(中川大志)の間に恋心が芽生えつつある今、その2人を優しく見守る幸恵(松下由樹)の存在が一層光る。

 夫に浮気されたやるせなさ。さらに子育ての忙しさに輪をかけて姑の介護が始まり、自分の自由が少なくなっていく切なさ。“これが自分の人生”と受け止めようと、もがいていたときに出会ったのが、バイオリンと新たな仲間たちだった。

 弾けるようになるかもわからない楽器と、今後何が起こるかわからない若い也映子と理人。迷って、ぶつかって、泣いて、笑って……その眩しい時間を一緒に過ごすことで、人生の“わからないワクワク”を思い出していく。その感覚は、ドラマを見ている視聴者に近い感覚かもしれない。

【写真】バイオリン教室での也映子と幸恵

 そんな幸恵を好演している松下に、本作に対する想いや長年のキャリアから見出した、様々なキャラクターを演じきる秘訣を聞いた。

■「幸恵さんの明るさとごくごく普通の感情を大切に」

――『G線上のあなたと私』を引き受けられたときの想いは?

松下由樹(以下、松下):お話をいただいて、まず原作のマンガを読ませてもらったんですが、読み終わった後に、優しい気持ちになれる作品だなと思いました。3人の関係も本当に何気ない日常の中だけど、何か残ってくるものがあって、2人を応援したくなったり、自分も同じ気持ちになったり。共感できるというか、一緒に日常を送っているような感覚が、すごくあったかくてまるい印象があったんです。“なんか素敵だなと感じられるものっていいな”と思って、脚本がどうなってくるのか楽しみにしていました。

――原作のあるドラマとオリジナル脚本とでは、演じる上で感覚は違いますか?

松下:多少意識はしますね。もう、最初から“原作は越えられない”って思っていて(笑)。マンガも小説でもそうですが、絵の力も文字の力もすごくあるので、もうそこには適わないというのを最初に思いながら、その上で、文字や絵とは違った、ドラマじゃないと表現できないもの、伝えられるものがあるんじゃないかと捉えています。

――なるほど。幸恵さんを演じるという点では、大事にされた部分はありますか?

松下:幸恵さんは、前向きですよね。主婦で子どもを育てて、夫に浮気され、お義母さんも口うるさくて、しかも病気にもなって介護しなきゃいけなくて……と、色々なことがありながらも、それを周りに見せずに生活している。生活はすごく大変ですけど、バイオリンをきっかけに前に向かっている、その明るさみたいなものをしっかり描きたいと思いました。徐々に生活範囲が狭まってきて出会える人が少なくなったり、家庭での生活に追われたりしたときに、週1回のバイオリン教室が本当に楽しみだったんだろうなって。いかに彼女にとって、その場所が大事なのかを大切に演じたいなと思いました。

――女優と主婦、松下さんと幸恵さんは全く違う生き方をしているように見えますが、どのように幸恵さんの感情を表現しているんですか?

松下:まずは想像ですね。でも、みなさん環境や状況が違っても、同じような気持ちになることってあるじゃないですか。「今日は本当にかけがえのない大切な1日だけど、どうしてもこっちを優先しなくちゃいけない」みたいなことって、お母さんじゃなくてもあること。「乗り越えたい」「前向きになりたい」「ちょっと背中を押してもらいたい」「慰めてもらいたい」「励まされたい」「甘えたい」……みたいな。そういう本当にごくごく普通の気持ちが幸恵さんにも、私にもあるので。

■「2人とは出会う前から既に同志みたいな感覚に」

――3人は本作で初共演でしたが、その距離感はどのように詰めていったのですか?

松下:脚本を読ませていただいたときに、会話劇として3人が動き出す印象があったんです。本当になんてことない日常会話だけど、雰囲気やリズム感、そこに私たちの相性がハマったら、すごく生き生きとして、ナチュラルに感情も持っていけるんじゃないかと思っているんです。波瑠ちゃんと中川くんが自然体でいてくれたので、わざと感情を作ろうとする意識じゃなくて、お互いに反応してお芝居ができたという感じです。

――息が合っていることは画面越しにもすごく伝わってきます。

松下:そうですね。初共演ですけど、同じバイオリンを弾くという1つの目的を通して、一体感が生まれていったように思います。そういう意味では、ドラマの中とすごく境遇が似ていて、出会う前から既に同志みたいな感覚になったんです。“2人も頑張ってるんだろうなぁ、私だけが今取り残されているのかなぁ。3人で合わせたらどうなるんだろうな”とか、そんな風に思いながら準備していました。顔合わせより前に、バイオリン合わせも3人でしたんですけど、もうすごく緊張しちゃって、“手が震える……!”みたいな(笑)。お互いどんな音出すかもわからないし、本当に弾くのは勇気がいるんです。最初はあまりにも酷い音で、「緊張すると手って震えるんだね」と笑ったり、本当に体感したものが、そのままドラマに反映されていった感覚はあります。

――実際には、どのように練習をされてたんですか?

松下:最初の頃は集中して練習していましたが、やっぱり仕事があるので毎日レッスンというわけにはいかなくて。個人レッスンで先生に週1回、1時間くらいです。もう1時間やったら疲れちゃって、何の意味もなくなっていくんです(笑)。時間だけ取ればいいってものでもないですね。

――リアルに週1回のレッスンに通う幸恵さんのようだったんですね。

松下:そうなんです! 音を出せる時間帯も決まっちゃうので、夜遅くはできないですし、最初はどうやって練習しようって悩みました。本当にドラマの中のやりとりみたいに、「家でなかなかできないよね。どうしてる?」って波瑠ちゃんたちに聞いたら、「うち、犬が鳴くんですよね」「カラオケで練習したらいいですよ」って!

――撮影の外でもドラマの中の3人と同じような雰囲気なのでしょうか?

松下:はい。あと、自然と3人で楽しくいられたんですよね。テンポやリズムが合うのもそうですが、実際一緒にいて面白いんですよ。プロの人を演じることってたくさんあると思うんですが、週1回の習いごとで楽器に触れる役っていうのは、本当に珍しくて。きっと眞於先生(桜井ユキ)のような上手い人の役だったら、こんなに楽しくしていられなかったかもしれません(笑)。

■「“演じる”というより“幸恵さんに会いたい”って思ってもらえたら」

――長いキャリアの中でシリアスな作品から、バラエティのコントまで、これまで数多くの役柄を演じてこられましたが、その振り幅の広さに毎回圧倒されます。演じ分けるときに意識されていることはありますか?

松下:いつも「その人物を演じる」というより、「そこにいる人として見てもらえたらいい」と思っています。今回だったら「幸恵さんが気になる」とか「幸恵さんにまた会いたいな」という感じになってもらえたらって。それはどの役も同じです。まぁ、「もう会いたくないな」っていうキャラクターもいるかもしれませんけど(笑)。

――確かに松下さんの演じるキャラクターは、ドラマが終わったあともどこかで生活しているようなイメージがあります。そう感じさせるポイントや秘訣のようなものはあるのでしょうか?

松下:ひとことではうまく言えないのですが、「集中力」でしょうか。「お芝居をする」ということには変わりないのですが、そこにちゃんとハマるかどうかが大事だと思います。例えば、コントだったら、数分間っていうすごく短いシーンで、その人の特徴をボンッて瞬間的に見せなくちゃいけない。「いるいる、こういう人!」って思ってもらえるように。一方で、連続ドラマは1時間×10話かけてじっくりと「ああ、この人本当にこういう人だったんだ」って行き着くように持っていく。そのストンとみんなが腑に落ちるところまで、どうやって持っていくのかが、楽しいところであり、難しさでもありますね。

―― なるほど。私だとライターなので、ギュッと短い文でドーンと伝えるときと、じんわりと伝わるように長い文章を構成していくときと似ているなと思いました。情報の濃縮加減が違うというか、使う筋肉が違うというか。

松下:そうそう。でも演じるとか、書くとか、表現するという意味では変わらないですよね。舞台でも、テレビでも、映画でも、ドラマでも、コントでも。でも、やっぱり難しいですよね。いかにどういう特徴を掴んで、それを「あるある」ってみんなに思ってもらえるようにまでするのは。

■「ドラマオリジナルの展開の広がり方を楽しんもらいたい」

――松下さんにとって、本作の大人のバイオリン教室のような場所はありますか?

松下:特別「ここに行けば誰かに会える」っていう場所を作るのは難しいので、羨ましく思いますね。今回の3人の出会い方とか、魅せられてしまって。できるできないに関わらず、いいなと思ったものに進むことは、大人になるとなかなかできないじゃないですか。私も習いものって言ったら、ダンスのレッスンを受けていたことがありますが、「お芝居の動きに活かせそう」とか考えてしまいます。何にも活かされないけど、自分にとっては心地いい、楽しいというのは、本当に幸せなことですよね。私自身は今そういう場所は持ってないですけど、周りでいろいろな習いごとをされている人の話を聞くと、フットワークが軽くていいなと思っちゃうときはあります。

――忙しい日々の中で「何にも活かされない時間」を持つのは、勇気がいりますよね。

松下:ええ。だから今回のバイオリンっていう楽器は、本当に普段の生活のなかでは絶対に手に取らなかったと思うので、すごくいい経験になりましたね。もう「バイオリン」って言葉に出すのもおこがましい、高嶺の花もいいところ、ってイメージがあったので(笑)。

――たしかに、いいところのお嬢さんがやってる習いごとみたいな。

松下:そうですよね! そういうイメージありますよね! でもそんなことなくて、弾いてみたいと思ったら、そういう教室に行くのもありなんだなっていう気づきがありました。また面白いんですよね、難しすぎて(笑)。何者になるわけではないですが、ドラマが終わっても時々触れられたらいいなって思います。仕事とか関係ないところで「あ、これができるようになった」という喜びがあるのは素敵なことなので。

――最後に、最終回に向けて楽しみにされているファンの方へ、幸恵さんのこういうところを見てほしいという点を教えてください。

松下:幸恵の家族がどういう風になっていくのかというのに加え、後半に向けて3人の関係性が原作と違った新たな展開も生まれてきます。ドラマオリジナルの展開の広がり方を楽しんでいただきたいですね。あとは、幸恵さんがバイオリン教室から離れましたけど、「3人で一緒にバイオリンやろう!」っていうのは、ずっと3人とも思っていることなので、それがいつもう1回あるのか。本当に3人で揃った発表会がどのように行われるのか、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

(取材・文=佐藤結衣)

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