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ロッキング・オン 海津亮氏に聞く、コロナ禍における新たなフェス/ライブ文化

リアルサウンド

20/11/29(日) 12:00

 今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってフェスのあり方も変化した一年だったといえるだろう。あらゆる音楽フェスが有観客だけではない新しい形を模索しながら行っていたなか、ロッキング・オン・ジャパンは初のオンラインフェス『JAPAN ONLINE FESTIVAL』を開催した。同フェスでは、18m×7mの巨大LEDによる映像を前にライブを展開。楽曲の世界観に合わせて映像が変化していき、まさに“音楽と映像の一体化”が意識されたステージ作りがなされていた。(『JAPAN ONLINE FESTIVAL』が突き詰めたオンラインならではの表現 主催者とアーティストが共有したこのフェスが目指す姿)。

 リアルサウンドでは、ロッキング・オン・ジャパン イベント部部長の海津亮氏にインタビューを行った。「オンラインライブはリアルライブの代替ではない」と考えるロッキング・オン社が生み出した、新たなエンターテインメントとは何なのか。また、音源ビジネスからライブビジネスにシフトした2010年代の音楽産業に対して感じることとは。コロナ禍となった“今”考える、音楽フェス/音楽産業のあり方について話を聞いた。(編集部)

「“音楽イベント”と“フェス”の違いは“メッセージの有無”」

ーー『JAPAN JAM』『ROCK IN JAPAN』が今年は開催できなくなる中で、11月6日~8日の3日間でロッキング・オンとしての新たなイベント『JAPAN ONLINE FESTIVAL』が行われました。イベント名のとおり「オンラインでフェスをやる」という形のものでしたが、これをやろうと考え始めたのはいつ頃からですか?

海津:最初に話が出たのは……確か7月くらいだったかな。これは社長の渋谷(陽一)からの発案でした。

ーー渋谷さんと言えば、春先にご自身のポッドキャストの番組で「フェスは既存の概念。それではこの事態に勝てない気がしている」とお話しされていましたね(『SIGHT RADIO 渋谷陽一といとうせいこうの話せばわかる!政治も社会も』No.01 「SIGHT RADIOスタート!なぜPodcast配信を始めるのか?」より)。「このモードから次にどんな新しいものを考えるんだろう」と個人的にも気になっていたのですが、最初の答えとして「オンラインライブ」というものが出てきたわけですね。

海津:オンラインのライブが広がっていく中で、ロッキング・オンとしてもこのタイミングで「自分たちなりのエンターテインメントのあり方」をプレゼンテーションしたい、というところから始まりました。普通に考えたらやっぱりリアルのライブ……「リアルライブ」っていうのもこの時期に生まれた変な日本語だと思いますけど(笑)、現場で見るライブの方が単純に比較すればオンラインで見るライブよりも楽しいものだと思うんですよね。でも今年はそれができないから、ある種の諦めやセンチメンタリズムも感じながらオンラインライブで満足すると。そんな態度が2020年の音楽ファンとして正しいものだと思っていたんですけど、いろいろなオンラインライブを見ているうちにだんだんと「オンラインライブをリアルのライブの代替ではない形で発展させられないか?」ということを考えるようになっていったんですよね。たとえば「PCやスマホ越しに見るライブはアリーナでやる必要があるのか?」とか、「もっと画面越しのライブに適した表現方法があるんじゃないか?」とか……そういった観点から、巨大なLEDをステージバックに設置して、そこにアーティストや楽曲の世界観にあった映像を映し出すことで「音楽と映像を一体化させていく」という基本となるコンセプトが生まれました。それを具現化するうえで重要となる照明についても、「ライブのための照明」ではなく「画面越しに見て映える照明」という視点で機材選定からデザインまでをシミュレーションしました。

ーー出演をオファーしたアーティストの皆さんの反応はいかがでしたか。

海津:いろいろなアーティストが前向きに参加を決めてくれたのですが、おそらく全員このイベントの完成形をイメージできていなかったと思うんですよね。我々自身も手探りでやっているような状況だったので。そういう中で、初回に付き合ってやろうと決断してくれたのは本当にありがたかったです。収録にあたっては1日に複数のライブが行われていたんですが、別のバンドのライブを見て「こんなことできるのか、ずるい!」「次回は自分たちもこういう準備をしたい」なんてことを言っている人も結構いて、予想外のグルーヴが現場には生まれていました。しかも配信当日はアーティスト自身も同じ時間にライブの内容についてツイートしてくれたりして、「オンラインでやるとこういう盛り上がりが生まれるんだな」という発見があったとともに、そうやって楽しんでくれていることに対してとてもうれしい気持ちになりました。

ーー個人的にはずっと真夜中でいいのに。のライブがすごかったと思いました。オンラインライブ、かつバックに巨大LED、という環境をとても生かしていたのかなと。日ごろから映像を使ったりしているアーティストこそ、より魅力が伝わるシチュエーションになっていたように思います。

海津:そうですよね。今回はいわゆるロッキング・オンのフェスの常連アーティストにもたくさん出演いただいているんですが、それ以外にずっと真夜中でいいのに。やReol、さユり、Vaundyといった新しい世代のアーティストにも今回の表現形態は合うんじゃないかと思って出演交渉を進めました。

ーー見ているオーディエンスの数も日を追うごとに増えていったそうですね。

海津:やはり見る側も開催されるまでは「実態が見えないもの」だったと思うんですよね。初日のアーティストが頑張ってくれたおかげもあり、2日目から3日目にかけて参加人数は増えていきました。

ーーちなみに今回のチケット代の設定にあたっては何かしら参考にしたものはありますか?ここ半年ほどでオンラインライブが一気に広がって、何となくの「相場」も決まってきたように思うのですが。

海津:「どこかのライブと比べて」といった決め方はしてないんですけど、まずは多くの人に観てもらいたかったので我々にとってのギリギリの線で設定しているのと、あとは今年の『ROCK IN JAPAN』『JAPAN JAM』にエントリーしてくれていた人たちを割引にする仕組みはどうしても導入したいと最初から考えていました。そうやってチケットをいつも早めに買ってくれる人たちにこそ、『JAPAN ONLINE FESTIVAL』を見てもらいたいという気持ちも強かったので。

ーー『ROCK IN JAPAN』にせよ『JAPAN JAM』にせよ、アーティストのライブだけでなく会場空間そのものや食事なども魅力の一つです。また、そういう場に誰かと連れ立って行く、もしくは見知らぬ人たちとも一緒に盛り上がることがフェスの醍醐味だと思います。そういったライブ以外のアクティビティやコミュニケーションというのは主に個人で端末と向き合うオンラインライブだとなかなか感じづらいですが、今回のイベントを「フェスティバル」と位置づけるにあたって意識した点はありますか?

海津:「音楽イベント」と「フェス」の違いは「メッセージの有無」だと思っているんですよね。『ROCK IN JAPAN』も『COUNTDOWN JAPAN』も『JAPAN JAM』も、そして『JAPAN ONLINE FESTIVAL』も、伝えたいこと、提示したい価値観があって、それをメッセージとして発信している、そういう意味でどれも変わらず「フェス」だと考えています。

ーー実際にフェス会場に行くと思わずTシャツなどのグッズを買ってしまうというのは多くのフェス参加者が経験したことがあると思うのですが、今回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』でもいくつかのグッズが用意されていました。今回のようなオンラインライブにおけるグッズを通して期待したような成果を得ることはできましたか?

海津:今回は実験的なスタートだということもあって、グッズで収益を得ようというような意識はそもそもなかったです。ただ、ブランディングと言いますか、『JAPAN ONLINE FESTIVAL』という名前やロゴが独り歩きする状態を目指したいと思ってグッズを制作しました。この辺は継続していくことでそういった状況を作っていきたいと思っています。

ーー「実験的なスタート」とのことですが、今後に向けての課題などは見えてきていますか?

海津:細かい修正ポイントを言い出すと無限にありますね。映像体験についても、もっと良いものが作れそうだなと思っています。ただ、いろいろな手ごたえを感じることができたという意味で、初回としては100点満点で120点という認識です。収益事業として考えるとまだまだではありますが、出てくれたアーティストももう次のことを考えてくれているので、アーティストとお客さんと一緒に「新しいライブ文化」を生み出せるようなフィールドを提供できれば、いい形で有機的に発展していけると思っています。

「ある意味ではライブに依存する形になっていた」

ーー2010年代を通して日本の音楽産業は「音源ビジネスからライブビジネスへ」という変化が一気に進展していたわけですが、そういったシフトが起こっていたからこそ、音楽業界はコロナ禍が引き起こす悪影響をダイレクトに受ける形になりました。これは結果論でしかないのですが、ここ数年の業界の動きを海津さん個人の視点で振り返ったときに、たとえば「産業として一極集中してしまっていた」というようなことを感じたりはしますか?

海津:ある意味ではライブに依存する形になっていたのかなと思います。人気アーティストがドラマタイアップなどの力を借りてCDを200万枚、300万枚と売る時代から、デジタルで音楽が届けられる時代に変わっていく中で、音源のビジネスに関してはニーズが高まっても収益化ができないという過渡期的な状況に突入していった流れがありました。そんな中で業界としてライブにシフトするようになっていったと。ただ、ライブはライブで多くのコストがかかりますし、決して簡単に利益を生む構造ではないわけです。そういうリクープラインの高い事業を成立させるために、「ライブそのものでは大きな利益は出ない、だけどマーチャンダイジングで収益を上乗せする」という仕組みが定着していきました。グッズを売ることで支えられているビジネスモデルが音楽産業として本当に正しいのかどうか、ということを考えてしまう場面もあったのですが、自分も含めて現場としてはまずはこのサイクルをちゃんと回していこうという気持ちの方が強かったと思います。しかし今のような状況に直面すると、そういったビジネスのあり方は脆弱であるということが露呈したと感じます。

ーー業界全体の「ライブシフト」が進む中で、雑誌から始まったロッキング・オン社も先ほども名前の挙がった『ROCK IN JAPAN』『COUNTDOWN JAPAN』『JAPAN JAM』など数々のフェスを立ち上げ、日本の音楽シーンにフェスという一つの文化を定着させてきました。その流れの中には、どんな背景があったのでしょうか。

海津:端的に言ってしまえば、そこにニーズがあったからです。企業としてニーズに正しく応えるのが基本だと思いますし、フェスの日数を増やす、会場を拡大する、夏冬だけではなく、ゴールデンウィークにも開催する……といったそれぞれのアクションが、ニーズに対応した結果になっているという認識です。

ーーもともと雑誌を通して行ってきた「批評」という行為、「今のシーンはこうなっている」という見取り図の作り方に何らか影響を及ぼしたと感じる部分はありますか?

海津:フェスをやり始めたから何かが変わった、ということはないと思っています。もちろん雑誌とフェスだとアウトプットは違いますが、ベースは一緒のような気がしていて。「フェスはメディアだ」ということを我々はよく言うんですが、雑誌を作るにしてもフェスを作るにしても重要なのは「編集」だと考えています。もっと言えば、雑誌を編集する作業と例えばタイムテーブルを組み立てるなどのフェスを作り上げるプロセスはすごく似ているのかなと。

ーーなるほど。ヘッドライナーのアーティストが雑誌の表紙を飾るアーティスト、というような。

海津:たとえばそういう比較もありますよね。フェスを作る際にもアーティストの音楽性に対する理解は当然必要ですし、ラインナップやステージ割りを通じて批評的な視点を提示する意識も持っています。だから、ロッキング・オンがずっとやってきた批評行為の延長線上にフェスがあるというか、何か新しいことをやっているというよりは全てがひとつにつながっているという考え方でフェスと向き合っています。

■ライブ情報
『JAPAN ONLINE FESTIVAL』
2021年春 第2回開催
初回のライブダイジェスト公開中
公開期間は11月27日(金)17:00〜12月1日(火)23:59まで

JAPAN ONLINE FESTIVAL 2020

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