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みんな誰かとつながっている―劇団四季『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』観劇レポート

ぴあ

劇団四季ファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話』より  撮影:樋口隆宏

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劇団四季の新作オリジナルファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』が、8月29日(日)まで、東京・浜松町の自由劇場で上演中だ。その後、9月12日(日)からは、7ヶ月間で68都市を巡る全国公演がスタートする。

原作は、岡田淳が作・絵を手がけた児童文学「こそあどの森の物語」シリーズ第6巻の同名の物語で、夏休み中ということもあり、劇場にはやはり親子連れの観客が目立つ。ロビーには、メモ帳やクリアファイル、キャラクターのマスコットなど、公演グッズを買い求める列もできていた。客席に入ると、森の木や動物、鳥の絵が載った、本のページが描かれている幕が目に飛び込んでくる。鳥のさえずりや梢を渡る風の音も聞こえ、自分も“こそあどの森”に足を踏み入れたようだ。

“つながること”を意識した演出

1964年から上演され続けている劇団四季のファミリーミュージカルは、“命の尊さ”“愛と勇気の素晴らしさ”“友情や助け合いの大切さ”などをテーマに作られてきたが、今回は、“人とのつながりの大切さ”がテーマになっている。その象徴が、時空を超えて古代と現代をつなぐ“はじまりの樹”だ。

幕が上がると、その大きな樹が中央に立ち、やがて大地の鼓動のような打楽器の音が響いて、巫女を中心に、大昔の人々が聖なる樹に祈りを捧げるように歌い踊る。松島勇気の振付は、力強く迫力満点だ。そしてひとりの少女が、樹に棲みついたリュウの怒りを鎮めるため、いけにえとして樹に縛りつけられた。

演出の山下純輝は、神話と現実が融合したような古代の世界を、大樹の装置を左右に分けたり、また合わせたりしてテンポよく見せていく。作品のテーマである“つながること”を意識し、樹やリュウもいくつかのパーツをつなげることで造形した喜多川知己のデザインも、うまく生かされている。舞台美術は、間口の広さが各会場で異なる全国公演でも使用できるように、工夫が施されているという。

ひとりから「フタリ」へ。みんな誰かとつながっている

場面は一転、現代の“こそあどの森”に暮らす少年スキッパー(Wキャスト 権頭雄太朗 / 寺元健一郎)の家。ひとりで本を読むことが好きな彼は、森の住人たちが誘いに来ても家に閉じこもってばかりいる。そこへ、光る尻尾を持ったホタルギツネ(Wキャスト斎藤洋一郎 / 田中宣宗)が現われた。この不思議なキツネは人間の言葉を話すのだが、なぜか関西弁。脚本・作詞を手がけた南圭一朗のひらめきだというが、これが白い長髪にキツネの面、和風の装いと相まって、効果をあげていた。

劇団四季ファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話』より 撮影:下坂敦俊

スキッパーはホタルギツネに導かれ、樹に縛りつけられていた少女ハシバミ(Wキャスト 若奈まりえ / 小坂華加)を助け出す。大昔から来たという彼女は、自らリュウのいけにえになったものの、恐ろしさのあまり“心の声”で樹に助けを求め、樹も“心の声”で現代にいるホタルギツネに呼びかけたことで、時空を超えてやって来ることができたのだ。

森の住人たちはハシバミを歓迎し、現代のことを教えながら一緒に暮らし始める。ハシバミは、自分の命は周りの命とつながっていて、大昔からもずっとつながっているという考え、“サユル タマサウ ココロ”について話す。そして住人から戦うことも学んだ彼女は、過去に戻ってリュウと戦う決心をした。

ひとりでいることが好きだったスキッパーも、ハシバミやホタルギツネと心を通わせるうち、ハシバミの力になりたいと思うようになる。彼がホタルギツネと歌う「フタリ」は、人間とキツネの心温まる友情が伝わり、印象的だ。兼松衆の音楽は、ファミリーミュージカルらしく、帰り道で親子が一緒に口ずさめるような、覚えやすく美しいメロディが多い。何度もリプライズされるテーマソング「生きるって」も、人間はひとりではない、みんな誰かとつながっているという作品のメッセージが感動的に歌われ、場面を盛り上げる。

8月28日(土)には、11時30分と15時の2回の公演で、ライブ配信が予定されている。

取材・文:原田順子

劇団四季ファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』東京公演
上演中~2021年8月29日(日)
会場:自由劇場

【ライブ配信】
8月28日(土)11:30/15:00 ※アーカイブ配信なし
詳細は下記公式サイトよりご確認ください。
https://www.shiki.jp/navi/news/renewinfo/033697.html

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