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長谷川博己に訪れた、辛く苦しい決断の時 『麒麟がくる』光秀が例えられた2羽の鳥

リアルサウンド

20/12/14(月) 6:00

 光秀(長谷川博己)にとって、辛く苦しい決断の時が訪れた。NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の第36回「訣別」では、変わり果ててしまった義昭(滝藤賢一)が信長(染谷将太)に戦いを挑む。

 一度は収束を見せた松永久秀(吉田鋼太郎)と筒井順慶(駿河太郎)の争いが再燃しようとしていた。信長は、筒井びいきの義昭から松永を討ち取るよう命じられるものの、気乗りしない様子。それは信長の家臣もまた同じだった。木下藤吉郎(佐々木蔵之介)に至っては、この件で戦に駆り出され手薄になったところを、義昭が朝倉たちを使って一気に攻めてくるのではとまで案じていたのだ。だからこそ藤吉郎は、松永を討つ前に朝倉・浅井を片付けるべきだと主張する。

 かつては貧しい者や病気の者を救おうとする気持ちの優しい人物であった義昭だが、今やすっかり変わり果ててしまった。光秀が二条城を訪ねると、剣術の練習をしていた義昭は手合わせを求める。剣術において光秀に敵うはずもないのに、木刀を構え必死の形相で向かってくる義昭の中には、かつて光秀が認めていた頃の姿はなかった。そのことに光秀は動揺を隠せないでいた。義昭の目をひん剥いた形相と、対する光秀の憂いを帯びた瞳からは、光秀が既に隔たりを感じている様子が受け取れる。

 結局、幕府と織田の連合軍は、河内に向け出陣するものの、松永らを取り逃がす。そして信長自身は、この戦には加わりはしなかったのだ。義昭と信長の関係がうまくいってないことに、いち早く気づいた甲斐の武田信玄(石橋凌)は、浜松城の徳川家康(風間俊介)を討つことを宣言すると、すかさず京へ向けて出陣。結局、窮地に立たされた家康は、信長から十分な援軍を得られずに大敗してしまう。

 その頃、信長は義昭にかなり厳しい内容の異見書を送ったことで、義昭から報復を受けることを夢に見るほど恐れていた。義昭が武田や朝倉、浅井に上洛を促したことで、自分が討たれるのではと懸念したのだ。そして信長の、この予感は的中する。今や、駒(門脇麦)から渡された金までをも鉄砲につぎ込もうとする勢いの義昭は、光秀が持参した信長からの贈り物の鵠(白鳥)を受け取ることを拒み、信長との戦を決めたと宣言。「儂は信玄と供に戦う。信長から離れよ。儂のために」と、目に涙を貯めながら自分の心の内を光秀に伝えた。つらい決断の時が来た。光秀は泣きながら義昭の命令を断ると立ち去る。ついに義昭は信長に向け、兵を挙げた。

 第36回では光秀が象徴的な2羽の鳥に例えられる。1羽目は冒頭で光秀が帝(坂東玉三郎)に面会を果たした際に、三条西実澄(石橋蓮司)が光秀に例えた「万葉の歌を好む珍しき鳥」。帝から「目指すは何処ぞ」と問われた光秀はハッキリと「穏やかな世でございます」と答え、「迷わずに歩もうではないか」というお言葉をもらう。

 2羽目の鳥は終盤、義昭が例えた「籠から出た鳥」だ。そして義昭は、飛び立った鳥はまた飛んで戻って来るかもしれないとの思いを残した。これまで多くの鳥が贈られ、殺され、時に毒殺の片棒を担がされそうになってきた本作において、光秀が鳥と例えられたことには大きな意味を感じさせられる。さらにこの場面での光秀はこれまでにはないほどの激しい感情の発露を見せた。長谷川博己は顔を震わせ、ショックを隠しきれない様子で涙を流し、光秀の苦しみを力強く表現する。前半までに見せた美しくも頼もしい光秀から一転、苦しさに心を引き裂かれる様子を生々しく演じた。

 次週はこの「訣別」がどう事態を変えたのかが描かれる。光秀はこの苦しみにどう立ち向かうのだろうか。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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