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“福田組”というだけではない コメディ以外もイケる2大巨頭、ムロツヨシと佐藤二朗の不思議な魅力

リアルサウンド

20/3/28(土) 8:00

 このところ、若手イケメン俳優たちの活躍に劣らぬ勢いで“イケオジ俳優”たちが活躍中だ。そんな波をよそに異色の存在として、特にコメディ路線で他の追随を許さないのが、ムロツヨシと佐藤二朗の2大巨頭である。見た目も空気も異なりながら、なぜか並び立って紹介されることの多いふたり。福田組(福田雄一監督作品の常連俳優の愛称)というだけではないムロと佐藤の力強さとは。

 1976年生まれのムロは44歳。幼少期に両親が離婚し、祖父母や親戚のもとで育った複雑な生い立ちを持つ。難関・東京理科大学理学部に進学するも、舞台で観た段田安則の芝居に感銘を受けて俳優を目指し、大学を中退。俳優養成所に入所し、1999年からは単独で舞台活動をしていく。2005年に本広克行監督の『サマータイムマシン・ブルース』で映画初出演を果たし、コメディ要素の強い役柄で個性を発揮。2008年からは脚本、演出、出演を手掛ける舞台『muro式』をスタートさせた。

 『踊る大捜査線』シリーズ(2005年・2010年・2012年)、『UDON』(2006年)『曲がれ!スプーン』(2009年)など本広監督の存在も大きいが、一般的な認知へと繋がったのは、やはり福田雄一との出会いだろう。福田映画には、福田が自らの戯曲を映画化し、監督デビューを飾った『大洗にも星はふるなり』(2009年)から出演。福田演出のドラマ『33分探偵』(2008年/フジテレビ系)第8話に出演したムロを観た福田の妻が推してからという縁は続き、山田孝之主演のドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011年・2012年・2016年/テレビ東京)での、金髪マッシュルームカットの冴えない魔法使い・メレブ役でブレイクを果たす。その後も『HK 変態仮面』(2013年)、『女子ーズ』(2014年)、『銀魂』(2017年)、『斉木楠雄のΨ難』(2017年)など、福田監督との蜜月は続いており、今年公開された『ヲタクに恋は難しい』でもバーのマスター役で歌とダンスを披露したばかり。だが、いわゆる福田組のムロとは違う演技の幅も見せており、同じコメディ路線でも『LIFE!~人生に捧げるコント~』シリーズ(2003年~/NHK総合)や『金メダル男』(2016年)などで組む内村光良とのタッグではまた色が違う。

 そして、『勇者ヨシヒコ』での第一波から着々とファンを増やしてきたムロの第二波となったのが、戸田恵梨香の相手役を務めたドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(2018年/TBS系)である。ラブストーリーの名手と呼ばれる脚本家・大石静によるオリジナルの本格ラブストーリーで、若年性アルツハイマーを患うヒロインと恋に落ちる小説家の間宮真司を、陰をまとって演じ切った。「ムロにキュンキュンするなんて」「ムロがかっこよく見えてしまった」と若干失礼な、しかし役者としてはしてやったりの反応を生み、同時期に福田作品のドラマ『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)で得意なコミカル演技を爆発させていたこともあり、そのギャップでより大きな話題を呼んだ。それ以前のドラマ『重版出来!』(2016年/TBS系)などでも深みのある演技で評価を得ていたムロ。さらに前クールのドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)では、独善的で嫌味な医者に見えて実は過去を背負った心臓外科医の濱田に、ムロだからこその絶妙な味付けを足して定型を崩した。また、3月21日に放送された『三浦部長、本日付で女性になります。』(NHK総合)では、女性として生きたいと思うようになる妻子ありのサラリーマンを演じた。女装姿はドラマ『真夜中のパン屋さん』(2013年/NHKBSプレミアム)のニューハーフ役でも披露しているが、『三浦部長~』では引きの芝居で美しい女性になってみせた。

 一方の佐藤二朗は、1969年生まれの50歳。信州大学経済学部を卒業し、大手広告代理店に入社するも1日で退職。俳優を目指しながらも挫折が続き、26歳のとき、広告代理店に再就職。仕事にまい進し、営業トップの成績を残すがやはり俳優の思いを捨てることができずに、96年、演劇ユニット「ちからわざ」を立ち上げる。会社勤めと俳優活動を両立するが、劇団「自転車キンクリート」の鈴木裕美に誘われ同劇団に入団したことを機に、会社を辞めた。

 現在の活躍への大きな足がかりになったのは、堤幸彦演出のドラマ『ブラック・ジャック』(2001年/TBS系)への出演。これをきっかけに現事務所に所属する。個性の光る脇役としてキャリアを積んでいった佐藤は、BS-TBSで放送され、宮崎あおい、黒川芽以、堀北真希、夏帆などを輩出した人気テレビシリーズ『ケータイ刑事 銭形』シリーズの『銭形舞』『銭形泪』『銭形零』『銭形雷』に出演、『銭形泪』と『銭形零』では一部脚本も担当した。さらに、ドラマ『電車男』『危険なアネキ』(ともに2005年/フジテレビ系)、『夜王~YAOH~』(2006年/TBS系)、『ごくせん(第3シリーズ)』(2008年/日本テレビ系)と徐々に爪痕を残していく。また、181センチと体の大きな佐藤と豆柴犬の取り合わせの妙がハマった主演作『幼獣マメシバ』(2009年~)がシリーズ化され、ドラマと映画でともに人気を博す。そして福田雄一演出のドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』(2011年/テレビ東京)の仏役でブレイク(福田作品にはそれ以前より参加)。 螺髪(らほつ)のインパクトに潰されることのない佐藤の稀有な存在感を知らしめた。一度見たら忘れられないその個性は役者にとっては諸刃の剣であり、使い方が難しいが、福田監督の濃い世界観には佐藤の個性がマッチした。

 その後もドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(2017年/日本テレビ系)、『今日 から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)、映画『銀魂』(2017年)、『斉木楠雄のΨ難』(2017年)、『銀魂2』(2018年)などでイキイキと個性を発揮しつつ、福田作品以外でも引っ張りだこ。劇場アニメや吹き替え作品でも才能を発揮し、ディズニーのフルCG映画『ライオン・キング』(2019年)でのプンバァ役は、 絶大な人気を持つオリジナルアニメからの大きなプレッシャーにも関わらず、受け入れられた。コメディ演技を封印したドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系)での怪演も記憶に新しい。

 また佐藤の人柄が覗けて癖になると人気を集め続ける、フォロワー173万超えを誇る公式Twitterのつぶやきに、本人によるツッコミを加えてまとめた書籍 『佐藤二朗なう』『のれんをくぐると、佐藤二朗』や、MCを務めるバラエティ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジテレビ系)なども好評。ジャンルを超えて人気を獲得している佐藤だが、やはり本業は役者。4月4日には堤幸彦演出の単発ドラマ『翔べ!工業高校マーチングバンド部~泣き虫先生が僕らに教えてくれたこと~』(中京テレビ)、4月期ドラマ『浦安鉄筋家族』(テレビ東京)と主演作の放送が続く。さらに注目なのが『memo』(2008年)に続く監督・脚本・出演、第2弾の映画『はるヲうるひと』(5月15日公開予定)だ。閉ざされた島を舞台にした人間ドラマで、『ちからわざ』での舞台版では佐藤が演じた、長男に媚びへつらい生きる次男役で山田孝之が主演を務め、佐藤は、暴力的な長男役で闇を爆発させている。役者全員が素晴らしく、それを引き出した佐藤の監督としての手腕も光る。

 福田組と呼ばれ、共演作が多いムロツヨシと佐藤二朗。ともに遅咲きでコミカルな演技を得意とし、アドリブや自由演技が過ぎると言われるクセの強さがありながら、枠からはみ出ているようでいて、その作品、その作品のフィクションの世界に溶け込み、見る者にも、「こんな人、いるかも」と共感させてしまう不思議な魅力を持つ。自由に動いているようでいて、周囲との対話による演技を大切にしながら作品の中に生きているからだろう。そして同じシーンで直接ぶつかるにしろ、それぞれにインパクトを残すにしろ、似て非なる互いの存在がいたことも、結果的に幸福な相乗効果を生んでいるのかもしれない。コメディ以外もイケることは証明済みの2大巨頭。だが、ブレイク後も変に薄まることなく、自由に見える計算されたコミカル演技を失わないことで、これからも支持されていくはずだ。

※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」が正式表記 (文=望月ふみ) 

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