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南條愛乃が明かす、理想の自分を引き寄せる日々の研鑽「その時の自分にしか歌えないものを作っていくのが理想」

リアルサウンド

20/4/28(火) 16:00

 南條愛乃が、シングル『藪の中のジンテーゼ』を4月29日にリリースする。表題曲は、アニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』のエンディングテーマを担当。カップリングには、南條が結婚する友達に宛てたウェディングソング「I wish you happiness」が収録されている。

 fripSideを含めると、シンガーとして10年以上のキャリアを持つ南條愛乃だが、2020年最初にして約13カ月ぶりの最新シングルは、今の彼女だからこそできるボーカル表現が詰まった一作になった。同作の制作エピソードから、11年目を歩む歌手・南條愛乃の変化、そしてデビュー当時からブレないアーティストとしての本質を伝えていきたい。(編集部)

去年から自分の歌い方にあらためて向き合ってきた

藪の中のジンテーゼMV(試聴)

ーーシングルとしては『サヨナラの惑星』から約13カ月ぶりのリリースになりますね。

南條愛乃(以下、南條):もうそんなに経ちましたか! 早いですね。ソロでのアルバム(『LIVE A LIFE』)や、fripSideのアルバム(『infinite synthesis 5』)とツアーがあったので、その期間もなんだかんだずっと動いてはいたんですけどね。

ーー新曲となる「藪の中のジンテーゼ」は、放送中のTVアニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』のエンディングテーマとして書き下ろされたものですね。アートワークも含めて、これまでの南條さん楽曲にはなかった雰囲気で。

南條:アニメが文豪たちのお話なので、楽曲にも日本文学みたいな印象がありますよね。曲自体はそこまで和のテイストを全面に打ち出しているわけではないですけど、歌詞の世界観と相まって小説を1ページずつめくって読んでいくみたいな雰囲気があるな、と。そういった楽曲だからこそ、歌う立場としてどう楽曲に接していくかっていう部分は、けっこう難しかったですね。家での練習ではどう歌ったものかとレコーディング当日まで決まらなくって。結局、スタジオで試行錯誤を重ねて作曲の藤間(仁:Elements Garden)さんと一緒に作っていきました。

ーーじゃあ、歌にはかなり時間をかけて?

南條:いや、それが案外、すんなり進んだんですよ(笑)。一文字ずつ丁寧に歌うことを大事にしつつ、細部の表現はいろいろ作りこんではいったんですけど、とてもスムーズでしたね。結果として、自分でも今までの南條ソロにはなかった1曲になったなと思える新鮮な仕上がりになりました。一度聴いただけで満足するのではなく、何度も繰り返し聴きたくなる曲になったんじゃないかなって。みなさんにもそうやって楽しんでいただけたら嬉しいです。

ーーサウンドの流れに寄り添って、パートごとに歌の表情が繊細に変化していきますよね。

南條:1曲の中に細かい感情の揺れ幅があるような雰囲気ですよね。サビではサウンドがちょっと明るくなるんだけど、歌詞はそこまでポジティブな内容でもないので、表現の匙加減はけっこう難しくって。淡々とした歌にならないように、頭を使いながらいかに言葉にニュアンスを込められるかっていうことを大事にして歌っていきました。メロ自体がけっこう難しいので、全体を通して歌った後、AメロBメロを細かく詰めていったり、みたいなこともしました。にもかかわらずスムーズに終わったっていう(笑)。

ーー曲の世界観に引っ張られたことで、歌に関しての新たな引き出しが開いた実感もあるんじゃないですか?

南條:あぁ、確かにそうですね。実は去年、ノドに長年の疲れがたまってしまってちょっとお休みをいただいた期間があって。そのときに、ノドに負担のかからない歌い方をちょっと模索したんですよ。それまでの私の歌い方は、前に押し出す力はあるんだけど、後ろに広がる空間を生かすことができていなかったので。なので、そこを意識した発声や歌い方をするようになったんですよね。その結果、去年くらいから「あぁ、こういう表現の仕方もあるんだな」っていう発見が徐々に増えてきたんです。それが今回の楽曲にも活かされたかなって。最近の私が求めている歌い方にちょうどマッチした曲でもあったので、またひとつ大きな収穫があった気がします。

ーーご自身の中での模索がいい結果を生み出しているわけですね。

南條:はい。今回のAメロはすごく音数が少ないので、歌っていると気持ちが負けそうになってしまう瞬間もあって(笑)。でも、そこを耐えてしっかり表現できたのは、去年から自分の歌い方にあらためて向き合ってきたからこそだと思いますね。きっと以前の自分だったら歌えなかったと思うので。もちろん、まだまだ発展途上ではあるんですけど。

ーー短くはないキャリアを持ちながらも、ご自身のさらなる可能性を追求していく姿勢は素晴らしいですよね。

南條:確かにfripSideを合わせると10年も歌のお仕事をさせてもらってるわけですけど、自分にはまだできることがありそうだなっていう思いはまったく消えないですからね。むしろ、その期待がどんどん湧いてくることに喜びを感じていたりもするので。自分の頭にある理想のイメージと実際の自分との誤差がどんどん減っていったらいいなって、最近はあらためて思ってますね。

南條愛乃の和装姿を見たい方がいるかもしれないし(笑)

ーー「藪の中のジンテーゼ」は歌詞も非常に独特なものになっています。南條さんとしてはどんなふうに解釈しましたか?

南條:そこも今回はすごく難しいところだったんですよね。いつもはだいたい自分なりに歌詞の解釈をした上でレコーディングをし、MVやアートワークの世界観を決めていく流れなんですけど、今回に関しては自分の解釈だけでは全然足りなかったというか(笑)。歌詞を書かれた方にしかわからない思いや表現がたくさん詰まった歌詞だと思ったので、作詞をされているイシイジロウさん(原作の世界観監修者)に歌詞の意図をお聞きしたんです。そこで、これは太宰治と芥川龍之介の2人のストーリーで、彼らが描いた小説の一節が含まれていたり、入水自殺することをほのめかすワードが込められていたりっていうことを細かく教えていただいたんですよね。私はそういう日本文学みたいなところにあまり触れてきていないので、イシイさんにお話を伺って良かったなって思いました。その後、自分なりに太宰と芥川の人生をちょっと勉強してみたりもしましたね。

ーータイトルになってる“ジンテーゼ”というワードに関しても説明を受けました? “矛盾の解決”、“統合”といった意味があるようですが。

南條:説明はしていただいたんですけど……難しいですよね(笑)。要は、太宰と芥川の2人の間にはいろいろあるけど、その答えは藪の中のジンテーゼにしかないっていう。言葉でうまく説明できないので伝わりにくいと思うんですけど(笑)。この曲における救いは“藪の中のジンテーゼ”にしかないんだろうなって私は解釈したので、そういう思いで歌っていったんですけどね。太宰と芥川の関係性を自分に置き換えてみると、自分にもやっぱり憧れを抱く対象はいるし、その人に対して近づきたいけど近づけないみたいな思いはあったりしますから。そうやって共感できる部分を意識しながら、この世界観を表現していった感じです。

ーー文豪同士の物語である一方で、この歌詞にはラブソング的なニュアンスもあるように感じたんですよね。そういった聴き方をしても楽しそうだなと。

南條:そうそう。「ラブソング的に聴こえてしまっても問題ないですよ」ってイシイさんにも言っていただきました。なので、聴く方ごとにいろんな受け取り方をしてもらえたらなって思いますね。

ーーこの曲のMVでは、南條さんが和装で登場しています。こちらも見逃せない仕上がりだなと。

南條:曲から連想する脳内イメージでは男性の文豪がメインで動いている映像だったので、女性である自分が登場する必要性を最初はまったく見い出せなかったんですよ。極端な話、男性の俳優さんに出演してもらって、美しい映像を撮っていただければいいかなって。

ーーファンからしたら南條さんの姿は見たいですよね、やっぱり。

南條:なので自分が出ることにしたわけですけど、どう映像の中に女性である自分を存在させるべきなのかっていう部分ではけっこう悩みました。最終的には物語の語り部的な立ち位置で存在するっていう落としどころを見つけたんですけど。

ーーMVのストーリーや映像のアイデアは、南條さんから細かく提示されるんですか?

南條:そうですね。最初に自分の中にあるイメージを監督に伝えて、そこから差し引きしてもらったり、細かい部分をブラッシュアップしてもらったりっていう感じで。今回、私から提示させてもらったのは、人物のビジュアルや、原作を連想させる猫や本などのモチーフ、ジメっとした空気感であったり、水を想起させる演出であったりですかね。それをいい具合にまとめてくださり、イメージ通りの仕上がりにしていただくことができました。

ーー和装を纏うイメージも最初から頭の中にあったんですか?

南條:実は、そこはけっこう紆余曲折があって。最初は太宰の意思や意識を持つ魂的な存在として、白いワンピースの私が書斎のような場所にいるっていう画を思い描いていたんですよね。ただ、アニメの世界観も和の雰囲気だし、そういう世界に寄り添った楽曲を出せることもなかなかない機会なので、せっかくだし和装も捨てがたいなと思っていて。ファンの方々の中には、南條愛乃の和装姿を見たい方がいるかもしれないし(笑)。和装とは言え現代的なアイテムもけっこう盛り込んではいるので、そこで感じる違和感によってストーリーテラーであることがわかってもらえたらいいなと。

ーー仕上がったMVには、白いワンピースの南條さんも登場していますよね。当初のアイデアも結果的に活かすことになったわけですよね。

南條:そうですね。太宰の意識っていう立ち位置は変わらず、水の底から訴えかける人というイメージで登場させることにしました。白いワンピースの南條が登場するシーンでは、水底へおちる水面の光をイメージした照明が使われていて。そこはもちごめ監督のアイデアだったんですけど、すごく素敵な仕上がりで気に入ってますね。

すべての曲の脳内ライブ映像がある

ーー南條さんは楽曲のみならず、MVに対しても強いこだわりを持っていますよね。そこには何か理由があるんですか?

南條:私の場合、何かを作るってなったときにはまず脳内に画のイメージが浮かんでくるんですよ。幼い頃から、好きなアーティストさんの曲を聴いて、頭の中で自分なりのMVを作ったりしてました(笑)。なので、今もその延長っていう感じなんです。で、MVに関しては個人的な好みもあって。私は曲の歌詞や中身にリンクしたものがすごく好きなんです。せつない曲なのに、MVだとみんな騒いでるみたいなものがあったりするじゃないですか。そういうのが子ども心に納得がいかなったんですよね(笑)。

ーーだから南條さんのMVは曲の内容に寄り添ったものになっているわけですね。

南條:そうですね。結局のところ、私が楽曲の中で重きを置くパーセンテージは、ほぼ歌詞が占めているんですよ。自分の中では歌詞の役割がすごく大事。だから歌詞と曲が一緒になってひとつの世界を紡いでいるものが当然好きだし、そうなるとやっぱりそこから派生するアートワークやMVも自然と歌詞に紐づいた世界観になっていきます。まったく切り離された違う世界観は考えられないんですよね。世の中には歌詞に耳がいかない人もいるとは思うんですけど、もしそういう人が私のMVを観てくれたときに、そこで描かれていることが視覚的に理解してもらえたりしたら、それはすごく嬉しいことだなって思いますね。

ーーちなみにカップリング曲やアルバム曲であっても、脳内MVは存在しているものなんですか?

南條:あります! 楽曲ごとに全部脳内MVはありますし、もっと言えばすべての曲の脳内ライブ映像もあるんですよ。ただ、脳内ライブ映像に関しては、そのまま現実で再現しようとすると自分の力量や予算感が全然足りないんですけどね。脳内ではとにかく完璧なので(笑)。だから今は勝手に頭の中で想像して、「めっちゃエモいわ、このライブ」って浸ってるだけの日々です(笑)。

ーーでも、理想が常にイメージできているのであれば、現実でもそこを目がけていけばいいわけですからね。いい指針にはなりそう。

南條:確かにそうですよね。で、いつかそのイメージがすべて再現できるときが来れば、それはもう全南條愛乃が感動ですよね。全南條愛乃が泣きますよ(笑)。

共有や共感っていう表現の土台はずっと変わらない

ーーではカップリングの「I wish you happiness」についても聞かせてください。こちらはあたたかくハッピーな空気感を持ったラブソング。ウェディングソングとしても聴ける1曲だと思います。作詞は南條さんご自身が手掛けられていますね。

南條:まさにウェディングソングとして作ったものですね。ちゃんとファンの方々に誤解なきように伝えなきゃいけないことは……私のためのウェディングソングではなく(笑)、もうすぐ結婚式を挙げる10年以上つきあいのある親友に向けて書いたんですけど。

ーー歌詞を書くに当たっては対象が明確だったということですね。

南條:そうですね。私情も挟まりまくりな感じですけど(笑)。ただ、けっこう私のファンの方同士で結婚されるという報告もイベントで多く聞かせて頂いたりするので、そういう方々の為にもというところもありました。実際に結婚する人はもちろん、式場に赴いた友達や家族の方がこの曲を聴いたときにちょっとでも気持ちが揺れ動くような曲にもなればいいかなっていう思いもあって。だからザワザワしている式場なんかでも歌詞の内容が入ってきやすいように、シンプルでストレートな書き方をしたんですよね。

ーーそのストレートさが非常に南條さんらしいなと思いました。曲に込めた思いがまっすぐ伝わってきますしね。

南條:さっきの“ジンテーゼ”の話でもう明らかですけど、あまり語彙力がないんですよ(笑)。難しい言い回しや文学的知識を持っている人ではないっていう。でも、楽曲を聴いてくださる方も、みなさん全員が文学的な知識を持ち合わせているかっていうとそうではないと思うので、普段会話をしていることの延長にある歌詞を書きたいなって思っているんです。振り返れば、無理に難しい言葉を探して歌詞を書こうとしていた時期もあったんです。でも、それがいつしか、飾らなくていいんだなって思えるようになったんですよね。そばにいる人に語り掛けるように、親近感のある言葉で歌詞を書けばいいんじゃないかなって。「I wish you happiness」はまさにそういう歌詞になっていると思います。

ーー南條さんの歌声も飾り立てることなく、すごくナチュラルで優しい雰囲気ですしね。たくさんの人の胸にグッと響くことになると思います。

南條:自分で歌詞を書いておきながら、その親友の前で歌うことになったら私自身が泣いちゃって歌えなくなる気がしますね(笑)。あと、この曲のDメロでは、私が歌ってる後ろに、誓いの言葉を英語にしたものをうっすら入れてあるんですよ。“病める時も、健やかなるときも……”っていうフレーズです。ふと浮かんだアイデアだったんですけど、いざやってみたらメロともぴったりハマったので盛り込んでみました。ぜひじっくり耳を傾けてみてください。

ーー今回のシングルは2曲とも今の南條さんの姿が鮮やかに投影された内容になっている印象がありあすね。

南條:確かにそうかもしれない。「藪の中のジンテーゼ」の世界観も、「I wish you happiness」のメッセージも、デビュー1、2年目じゃ誰にも刺さらない仕上がりになっていたような気もしますね。その時の自分にしか歌えないものを作っていくのが私の理想ではあるので、そういう意味でもすごくいいシングルになったと思います。

ーー年齢やキャリアを重ねていく過程では様々な変化もあると思うのですが、それも柔軟に受け入れていきたいタイプですか?

南條:はい。共有や共感っていう自分の表現の土台はずっと変わらないとは思いますけど、それ以外の部分に関しては、変化に抗わず、一緒に歩んでいけたらいいかなって思いますね。それが南條愛乃として生きているということでもありますから。活動全体を通して、“生きる”みたいなことがテーマになっていくといいなっていう思いもあるので。

■リリース情報
南條愛乃『藪の中のジンテーゼ』
発売日:2020年4月29日(水)
TVアニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』エンディングテーマ
【初回限定盤<CD+DVD>】¥1,800(+税)
【通常盤<CD>】¥1,200(+税)
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C)DMM GAMES/文豪とアルケミスト製作委員会・テレビ東京

<CD収録内容>
01. 藪の中のジンテーゼ
(TVアニメ「文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~」エンディングテーマ)
作詞:イシイジロウ  作曲・編曲:藤間 仁 (Elements Garden)
02. I wish you happiness
作詞:南條愛乃  作曲:増谷 賢  編曲:長田直之
03. 藪の中のジンテーゼ <instrumental>
04. I wish you happiness <instrumental>

<特典DVD収録内容>(※初回限定盤のみ)
藪の中のジンテーゼ MV
MV Making
SPOT

南條愛乃 Official Site
南條愛乃 Official Twitter
南條愛乃 Official Instagram
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TVアニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』オフィシャルサイト

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