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竜星涼&犬飼貴丈、“2大ヒーロー”が拓いた世界 『ぐらんぶる』は“教育映画”の側面も!?

リアルサウンド

20/8/15(土) 10:00

 誰もが否が応でも不自由を強いられる2020年の夏。真っ青に輝く海でひと泳ぎし、大勢でバーベキューの火を囲んで生ビールで乾杯ーーと、そううまくいかないのが今年の夏なのである。しかし、そんな夏を最高に謳歌できる映画がここにあるのだ。それが『ぐらんぶる』。ダブル主演を務めている竜星涼と犬飼貴丈のハジける姿に、この夏を託したい。

 離島にある大学に入学し、キラキラ輝く海辺のキャンパスライフを夢見ていた北原伊織(竜星涼)だが、そこで待っていたのはとんでもない日々だった……。本作のあらすじは、おおよそこんなものだ。憧れの生活と現実の生活とのギャップに主人公が苦しむ物語とは、青春劇にはよくあるもの。しかし本作が他の類似作品と一線を画すのは、映画のジャンルがコロコロと変わっていくところにある。


 そもそも本作は、一応は“青春ダイビング映画”だと謳っているが、これは怪しい。メガホンを取った英勉監督自身も公式コメントにおいて、「『ダイビングに賭ける青春と恋と友情。さあ、海の世界へ』という宣伝が展開されると思いますが、違いますから。詐欺ですから」との言葉を発表している。なぜなら107分という上映尺のうち、本格的にダイビングシーンが展開するのは残り30分ほどになってから。つまり、上映時間の70パーセントほどが“ダイビング以外”の青春劇に費やされるのだ。光が揺れる海底のシーンよりも、竜星や犬飼らがバカ騒ぎするさまの方が記憶に残るのである。

 本作がすごいのは、何といっても原作であるマンガからの脚色だ。誰だって、お酒の飲み過ぎで飲酒時の記憶があやふやになった経験はあるはず。大酒飲みの方ならば、記憶喪失どころか、目覚めたときに「ここはどこだ?」なんてこともあるに違いない。筆者も平時であればしょっちゅうである。本作ではそんな“飲酒による記憶問題あるある”を、あたかも“タイムリープ”したかのように描いているのだ。だから予告編にも観られるように、竜星や犬飼が全裸で大学内を訳も分からず走り回っているというわけである。そう、彼らが強引に引き込まれたダイビングサークルは、酒を飲む度にみなが脱ぐのだ。


 原作ではわりと早い段階で主人公の二人がサークルの一員となるが、この映画では、最後の最後まで「早くサークルを辞めてしまいたい。実家に帰りたい」と考えている。そういった脚色によって、本作は単なる“おバカな青春劇”ではなく、“どんでん返し映画”の要素も兼ね備えているのだ。事前情報なく鑑賞すれば、必ずや驚かされることだろう。というわけで、竜星と犬飼が扮する大学生の奮闘姿が本作の大部分を占めている。

 伊織と今村耕平(犬飼貴丈)の目的は同じで、サークルの先輩たちから逃げ出すこと。目的達成のため何度も訪れる彼らの“裸の付き合い”には、言葉では説明がつかない奇妙な“友情”のようなものが感じられる。その根拠として、同じ環境下に置かれているということがいえるだろう。逃げても逃げても、愉快な音楽が聞こえてくれば自然と体が踊り、ついつい深酒。私たちがこの夏に体験することが難しい光景だからこそ、彼らのその姿は輝きを放って見えるのだ。

 本作の見どころは、やはり竜星と犬飼という二人の俳優とともに過ごす時間である。とにかく振り切れたハイテンションで、「バカ」としか言いようがないのだが、思い返してみれば彼らは、元・ヒーローだ。竜星は『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013年〜2014年/テレビ朝日系)で“レッド”として主役を、犬飼は『仮面ライダービルド』(2017年〜2018年/テレビ朝日系)にてタイトルロールである“仮面ライダービルド”役で主役をと、彼らはそれぞれ往年の“2大ヒーローシリーズ”で主演を張っていたのである。今作『ぐらんぶる』での彼らの姿を見た“ヒーローっ子”たちには気の毒な気もするが、これぞ俳優という職業。そういった意味で、この二人が主演というだけで今作は、「教育映画」の側面をも持ち合わせているように思えてくる……。近年、両者ともども誠実な役どころを演じている印象が強かっただけに、今作で拓けた世界というものもあるのではないだろうか。


 また本作では、乃木坂46の与田祐希が映画初出演を果たし、ヒロインに扮しているさまにも注目である。演技者としてはキャリアが浅く、他のキャストと比べればその佇まいは、少々ぎこちなさを感じさせはする。しかしこれが、彼女が演じる千紗という人物の“クーデレ”なキャラクターにマッチしているのだ。

 さて、主人公の二人が“ダイビングに目覚める”まで、とにかく時間のかかるダイビング映画『ぐらんぶる』。クライマックスまで、離島からの脱出劇を繰り返し、最後の最後に海底に広がる新たな世界を彼らは知る……というのが本作のオチだ。公開延期の末、このタイミングでの公開となった本作だが、竜星涼や犬飼貴丈の奮闘は、ままならないこの夏を映画館で堪能させてくれるものに奇しくもなったのである。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

※高嶋政宏の「高」ははしごだかが正式表記。

■公開情報
『ぐらんぶる』
全国上映中
主演:竜星涼、犬飼貴丈、与田祐希、朝比奈彩、小倉優香、石川恋、高嶋政宏
原作:井上堅二・吉岡公威『ぐらんぶる』(講談社アフタヌーンKC刊)
監督:英勉
脚本:英勉、宇田学
主題歌:sumika「絶叫セレナーデ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロダクション:THEFOOL
配給:ワーナー・ブラザース映画
製作:映画「ぐらんぶる」製作委員会
(c)井上堅二・吉岡公威/講談社 (c)2020 映画「ぐらんぶる」製作委員会
公式サイト:grandblue-movie.jp
公式Twitter:@grandblue_movie

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