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杉咲花、『おちょやん』で生き生きとした表現 演技と方言で証明する若き実力

リアルサウンド

21/1/12(火) 6:00

 鈴を転がすような声で気持ちの良い大阪言葉が響いてくる。朝から気分が晴れやかになる声の主は、NHKの連続テレビ小説『おちょやん』で主人公・千代を演じる杉咲花だ。『おちょやん』は上方女優の浪花千栄子をモデルに、貧しい家に生まれたヒロインが女優を志し、芝居の世界に足を踏み入れる様子を描く。

 杉咲の演じる千代は、キッパリとした物言いと明るい笑顔が印象的。さらに杉咲は東京出身にも関わらず、流れるような船場言葉と、時に千代が幼少期に過ごした南河内の河内弁を巧みに使い分ける。この流麗な方言の響きがまた心地よく、それを杉咲ならではのリズミカルなセリフ回しで生き生きと表現してくれる。また、この方言で、キッパリと自分の意見を言う千代のたくましさからは勇気をもらえるのだ。父親から奉公に出され、おまけに父のせいで借金取りに嫌がらせをされたとしても、挫けず何度でも立ち上がりグッと前を向く姿はまさに、今のコロナ禍の中で踏ん張る力を分け与えてくれるだろう。杉咲には、こうした打たれ強く爽やかな役が本当によく似合う。

 さらに杉咲の芝居は、テンポが良い。それ故にコミカルなシーンではきちんと視聴者を“笑わせる”ことができるのだ。第23話での、撮影所に忍び込もうとしては守衛の守屋(渋谷天外)に止められるシーンは、『おちょやん』公式Twitterで、杉咲と渋谷天外のアドリブだったことが明かされており、杉咲の機転の良さが垣間見えた。他にも千代が口達者なキャラクターであることを生かし、思わずクスリと笑ってしまうシーンや、胸がスカッとするようなシーンも多く見られる。その度に杉咲は持ち前のテンポの良さで魅力を放ち、視聴者の心をグッと作品に惹きつけるのだ。

 そんな杉咲にとって大きな転機となったのが、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)での連続ドラマ初主演だろう。人気ドラマ『花より男子』シリーズの続編にあたる『花のち晴れ』は、当時、多くの視聴者の注目を集めた。杉咲は貧乏暮らしをバネに頑張る女子高生役を演じていたことから、逆境をパワーに代える役はすでに経験済みなのだ。そして杉咲にはこの頃から、はっきりとした物言いで竹を割ったような性格のキャラクターが実によく似合っていた。

 また、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』では一人二役に挑戦。杉咲が演じたシマと言う女性は関東大震災に巻き込まれて行方不明になってしまうのだが、その当時赤ん坊だった娘のりくが、立派に成長した際に姿を見せたのもまた杉咲だったことから、悲しんでいた視聴者を大いに沸かせることとなる。他にも『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)、映画『青くて痛くて脆い』(2020年)などに出演し、着実にキャリアを重ねている。今回の朝ドラヒロインへの抜擢ではその実力をふんだんに発揮しており、さらなる飛躍も期待される。

 『おちょやん』ではいよいよ千代が芝居の世界に足を踏み入れることになったが、まさにここからが正念場。千代が芝居の世界で活躍していく様子を杉咲がどう魅せてくれるのか、この先もじっくりと見届けていきたい。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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