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JYOCHOの音楽に感じる狂気にも似た凄味 スキルフルな演奏で魅せたツーマン公演レポ

リアルサウンド

20/1/12(日) 8:00

 これはまったく普通じゃない音楽だぞ、と思った。心地よく穏やかだが、油断をすれば現実に戻れなくなってしまうような、狂気すら感じる音楽。それがJYOCHOの奏でる音楽だった。2019年12月21日、渋谷WWW Xで行なわれたのは、『JYOCHO Tour 2019 “綺麗な三角、朝日にんげん“』のファイナル公演。ゲストとして出演したsiraphは、JYOCHOと元々親交もあり、MCでは「(JYOCHOは)音楽性も人間性も良い」「一緒にやって意味のあるバンド」と深いリスペクトを表していた。

参考:JYOCHOが語る、“未知の音楽”を追求するクリエイティブの根幹「曲を書く上でアイデアは尽きない」

 JYOCHOのステージは、真っ赤な照明の下で始まった。白で統一された清潔感のある出で立ちで、5人がステージに現れる。1曲目は、猫田ねたこ(Vo/Key)の伸びやかな声が心地よい「Atlas」。宇宙や大自然を感じさせるような壮大で浮遊感のあるメロディに、会場いっぱいに集まった観客たちが一瞬で飲み込まれていく。はち(Fl)の繊細なフルートの音色は、ゆったりとした音楽を新鮮な印象に変えるスパイスのようだ。

 つづく「いつか一人で」では、じわじわとメンバーの熱が上がっていき、その熱がフロアにも伝染したかのように身体を揺らす観客の数が増えていく。sindee(Ba)が「自由に身体を動かして楽しんでいってください!」と観客目線で煽ると、さらにフロアは居心地の良い空間へ。

 「つづくいのち」「太陽と暮らしてきた」では、だいじろー(Gt/Cho)の高速タッピングに目を奪われる。クリーンなギターの音色が洪水のように流れ、音の海に飲み込まれていくようだ。そんな超絶テクニックを繰り出す本人は、全編を通して無邪気な笑みを浮かべているのだから、参ってしまう。まるでおもちゃを与えられた子どものように、「楽しくて仕方がない!」といった様子だ。hatch(Dr)の奏でるリズムは抜群に安定感があり、変態的と言っても過言ではないほど変則的なのに、なぜかリラックスして聴ける。その証拠に、フロアの後ろでは両手を上げて伸びをする観客もいたほどだ。

 そんな強烈なバンドだが、MCに入ると途端に飾らないアットホームな雰囲気に変わる。猫田ねたこは観客との距離を縮めたいという気持ちを「もっと皆と精神的に触れ合っていきたい」と独特な表現で伝え、笑いを呼んだ。MVのコメント欄に寄せられた”馬乗りになってボコボコに殴られた気分“という感想を元ネタに、「ボコボコにされる準備はいいですかー?“」「おー!」というコールアンドレスポンスが生まれ、そのまま「sugoi kawaii JYOCHO」へ。

 この曲は、まさに”音の暴力“とすら感じるJYOCHOのテクニカルな演奏が詰め込まれた楽曲だ。鳥肌が立つほどの超絶技巧にフロアからは感嘆の声が上がり、演奏中は何度も大歓声と拍手が湧きおこった。つづく「family」は、生きることの美しさを歌ったような楽曲。優しく透明感のある猫田ねたこの歌声に会場が包み込まれた。キーボードとフルートの音色が美しい「Lucky Mother」、ホーリー感のある壮大な「365」と続き、ラストは本ツアーのタイトル曲でもある「綺麗な三角、朝日にんげん」。スキルフルな演奏で再び客席をぶちのめし、5人はステージを後にした。

 アンコールのMCでは、「さすがJYOCHOとsiraphの対バン」「(アンコールを呼ぶ手拍子の)BPMが142だった」と冗談まじりに観客のリズム感の良さを称えるだいじろーとsindee。彼らの人間性の良さが垣間見える場面だった。そんな和やかなムードのまま、この日ラストを飾る「pure circle」へ。明るいのにどこか切ないこの曲では、先ほど褒められた手拍子で会場が完全にひとつになった。ステージの上もフロアもリラックスして、JYOCHOの作り出す音楽に身を委ねる。演奏を楽しむメンバーと、音を楽しむフロア。その両方が入り混じり、どこまでも心地の良い空気感が生まれていく。大きな歓声と拍手に包まれ、2019年最後のJYOCHOのライブは幕を閉じた。

 本編ラストのMCでだいじろーは、「こんなノリにくい情緒豊かなバンドを見に来てくれた皆さんは、新人類だと思います」と嬉しそうに語り、このライブを選んだ観客に感謝の気持ちを述べた。さらに「僕たちは新しいものを作っていこうと心に決めている」とバンドを代表して、未来への決意も表明。今年3周年を迎えるJYOCHOは、今後も決して目を離せないバンドだと確信させられる公演であった。(南 明歩)

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