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Official髭男dismの隙のないポップセンスは楽曲にどう反映される? 「宿命」メロディを軸に考察

リアルサウンド

19/8/4(日) 8:00

 いま破竹の勢いで人気を拡大しているOfficial髭男dism(以下、ヒゲダン)。2019年5月にリリースされたシングル『Pretender』をはじめとした楽曲は、Billboard JAPANやオリコンのストリーミングランキングを中心にロングヒットを記録中だ。あいみょんやKing Gnuなどと並んで、サブスク時代が生んだ新世代の人気ミュージシャンの代表格として注目を浴びている。

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 そんななかでリリースされたニューシングル『宿命』表題曲は、agehasprings所属の敏腕プロデューサー蔦谷好位置とタッグを組んだ渾身の一曲。華やかなブラスを取り入れ、さらにトラップ的なビートを盛り込んだアレンジは、夏の高校野球応援ソングにふさわしい(実際に球場でブラスバンドが吹いたりしてほしい)。と同時に、チャンス・ザ・ラッパーへのビート提供でも知られるニューヨーク拠点の人気プロデューサーユニット、BrasstracksのスタイルをJ-POPへとキャッチーに翻案したかのような、同時代の潮流にも鋭敏に反応してみせるアレンジでもある。

 これまでも、ヒゲダンは持ち前のジャジーなポップセンスと卓越したメロディメーカーぶりを発揮しながら、EDMやトラップの語彙をさりげなく取り込んだサウンドを展開してきた。トラップ的なハイハットのロールや、クラップの連打で盛り上げるビルドアップのパートが印象的な「Stand By You」や、あるいは国内外でその楽曲が高く評価される気鋭の若手プロデューサー、Masayoshi Iimoriを迎えた「可能性」(2018年の3rdアルバム『エスカパレード』収録)など、いわばEDM以後のJ-POPを貪欲に模索してきた軌跡があってこその、「宿命」なのだ。

 とはいえ、そうした「形式的な新しさ」や「翻案の巧みさ」にも増して重要なのは、ヒゲダンの持ち味がそのメロディ、歌にあることだ。「宿命」も例にもれない。大きなメロディの上昇と下降は、ボーカル兼ピアノの藤原聡の歌声の個性と表現力もあってとてもエモーショナル。実直な感情をつたえるやわらかな表現から高揚感を煽る力強いロングトーンまで、そのバリエーションも豊かだ。

 「宿命」で言えば、1オクターブ半を上下してメロディの起伏にドラマを感じさせるAメロも印象的だし、個人的に白眉と思うのはBメロだ。〈夢じゃない 夢じゃない〉としゃくりあげるメロディから〈涙の足跡〉で下降してオチる(主音に戻る)繰り返しは、前向きな未来への希望とこれまでの歩みを振り返る確信を感じさせる。そして末尾、〈僕らの想い 届け!〉の1行にあてられた、じわじわと1オクターブをのぼりつめるメロディラインは否が応でも気分を盛り上げる。ちなみに同じようなメロディはイントロのブラスでもなぞられている。

 一方、サビでは起伏をやや抑えめに、耳に残りやすいメロディを繰り返すのも勘所を押さえている。AメロやBメロのドラマチックさに対して、おもわず口ずさんでしまう親しみやすさがふと現れるのだ。メロディのふたとおりの魅力、すなわち「感情をくすぐる大きく流麗な起伏」と「親しみやすいリフレイン」が過不足なく一曲のなかに同居しているあたりに、ヒゲダンの隙のないポップセンスが反映されているように思う。

 以上をふまえて改めて「宿命」のアレンジを振り返ると、こうしたメロディの魅力をブラスの力強いカウンターメロディが増幅させていることに気づく。なにより華やかであり、いまの空気感を取り入れた(J-POPとしての)新鮮さもあり、ヒゲダンの持ち味をいかす仕事も施されている。まだまだこれ以上のヒット、まさに彼らの定番曲となるだろう楽曲が控えている予感もあるが、この夏にヒゲダンが打った「宿命」という一手は見事だ。(imdkm)

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