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『恋あた』幸せいっぱいな2021年を期待するラストに ドラマを通して共有する甘い時間

リアルサウンド

20/12/23(水) 6:00

 今年はいろんなことがありました。甘いものは、人を幸せにします――。

 『この恋あたためますか』(TBS系)が、ついに最終回を迎えた。なんて甘美なドラマだったのだろう。シュークリーム、プリン、ケーキと劇中に出てくる数々のコンビニスイーツはもちろんのこと、恋をして仕事に奮起するキラキラとした眼差しも、好きな人を前にとろけるような声色も、ほろ苦い失恋に流した美しい涙も、心の痛みを乗り越えた優しい笑顔も……全てが甘くて愛しい。

 心の奥に押し込めようとしていた樹木(森七菜)の、浅羽(中村倫也)への恋心。マコっちゃん(仲野大賀)の誠実な想いに応えて、前に進もうとも思っていた。だが、そんなときに突然の浅羽からの告白。「今さら何を……」と拳をテーブルに叩きたくなるほど憤るのは、気を緩めるとすぐにでも浅羽への恋が溢れてしまうから。

 「クリスマスは誰と過ごしたいか」、その答えはずっと前から決まっていた。でも、いざそれを言葉にしてマコっちゃんに伝えるのは、あまりにも胸が締め付けられる思いがして涙が次から次へとこぼれ落ちる。もちろんマコっちゃんも、わかっていた。好きな人の好きな人が本当は誰なのかなんて。一番見つめてきた自分が知っていたのだから。

 精一杯の強がりを見せて、樹木に浅羽のもとへ行くように促すマコっちゃんに、多くの視聴者が心を動かされた。救いだったのは、そんな彼を『ココエブリィ』上目黒店の店長・上杉(飯塚悟志)とアルバイト店員・碓井(一ノ瀬颯)が受け止めてくれたこと。カラオケで悔しさを噛み締めながらくちゃくちゃにして「出会えて感謝してます」と泣く姿は、まるで全力を尽くして完敗した高校球児のごとく眩しかった。

 そんな彼の姿を見ていて今一度「今年はいろんなことがありました」というフレーズを思い出した。マコっちゃんのように誰もがもがいて抗って、それでもどうにもならなかった1年だった。なかには二度と戻らないかけがえのない甘い季節が、手からすり抜けてしまった人もいただろう。

 その歯がゆさや辛さを、こんなふうに誰かにぶちまけて一緒に過ごすこともできない年末だ。今年は、どこかクリスマスムードも例年のような盛り上がっていないようにも感じる。そんな2020年を過ごした私たちは、体当たりで自分の想いを貫こうとするマコっちゃんの姿に共感し、そして『ココエブリィ』上目黒店の仲間たちが繰り広げるハートフルな交流に、少しだけ夢を見る。

 こんなふうに恋をして、報われたり破れたりしながら、過ごす甘い日々があったはずだった、と。でも、それが今はできないからこそ、こうしてドラマを通して私たちは甘い時間を共有しているのだ。

 実らない恋が、生涯心をあたため続ける思い出になるように。その痛みを感じるほど大切だと思えるものに出会えた喜びを噛みしめるように。マコっちゃんにとって樹木への恋が、そして私たちにとって2020年の日々が、いつか「あの時期があったからこそ、今の幸せをより実感できる」と思えるようになってほしい。

 そして、晴れて両想いとなった樹木と浅羽のハッピーな様子にも、改めて心が弾む。“そうそう、キラめくイルミネーションの中、甘いケーキを大好きな人と一緒に食べるって幸せなことだった”と思い出させてくれる。それは、どこだっていいのだ。高級レストランでも、職場でも、コンビニでも。一緒に過ごす相手も恋する人はもちろん、気のおけない友だちでも、同じ何かを愛でる仲間でも、これから家族でになろうとする人とでも。

 “クリスマス”なんてなければいつもと変わらない夜だけれど、年1度大切な人を想って過ごす日があることは間違いなく人生の楽しみの1つ。恋をすると“今日好きな人とどんなことを話そうか”と毎朝考えてドキドキしてしまうように。クリスマスを知ったからには、“その日を誰とどう過ごそうか”とワクワクしてしまう。大勢でのクリスマスパーティーができない今、彼らと一緒にホワイトクリスマスを楽しんだような気持ちになる最終回だった。

 そこでも特筆したいのが、樹木のノロケを微笑みながら聞けるマコっちゃんと里保(石橋静河)の人の良さだ。見方によっては、2人の失恋の上にある樹木と浅羽の両想い。しかし、「蹴っ飛ばしてやろうか」「シングルベルを楽しそうって言うな」と小突いて、変に気を遣わせない会話が実に清々しい。好きな人の幸せが、自分の幸せ。誰かが幸せになることを、自分のことのように喜ぶことができる尊さ、それもまた人間の甘く美しい部分。彼らの善良っぷりに、心が洗われるような気分になる。

 そんな彼らなら、きっと幸せな恋がこの先待ち受けているのだと確信できる。“幸せになる”とは、誰かの甘い時間を喜ぶところから始まっているのだ。このドラマには自分だけが甘い蜜を吸おうという人が、1人も出てこなかった。だから、こんなにも観ている私たちがうっとりとするような気持ちに包まれたのだろう。

 最初の一口は自分で食べるのはなく、相手に食べさせたくなる。心を込めてつくたスイーツこそ、そんな気分になるように。このドラマは、観る(味わう)私たちの幸せを願って作られた作品。次は、私たちが誰かに甘い時間を届ける番。そうして、甘くてやさしい気持ちが連鎖して、2021年が幸せいっぱいな1年になるように願っている。 

■作品情報
『この恋あたためますか』
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、飯塚悟志(東京03)、古川琴音、佐藤貴史、長村航希、中田クルミ、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史
脚本:神森万里江、青塚美穂
プロデュース:中井芳彦
演出:岡本伸吾、坪井敏雄
主題歌:SEKAI NO OWARI「silent」(ユニバーサルミュージック)
製作著作:TBS
(c)TBS

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