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FUKI、“クリスマスイブ”に「ラストシーン」を歌う理由 「向き合いたくないラストに目を向けて」

リアルサウンド

19/12/16(月) 20:00

 恋愛にまつわる記念日を毎月ピックアップし、そこに寄り添ったラブソングを12カ月連続で配信リリースしていくという、女性アーティスト初となるプロジェクト「12 Sweet Stories」を展開中のFUKI。第8弾となる「ラストシーン」は、“クリスマスイブ”にインスパイアを受けて制作した楽曲で、12月13日に配信リリースされた。今回の楽曲は幸せなクリスマスではなく、恋愛のラストシーンを描いたせつなさのある一曲になっている。「12 Sweet Stories」の総集編とも言える同曲の誕生背景をFUKIに聞いた。(編集部)

大きなプレッシャーになってしまった 

ーー12月に入り、街はクリスマスムードに包まれています。

FUKI:恋人たちにとってはいよいよ本番といった感じですよね。私はクリスマスの時期が大好きなので、1人で街中を歩いているだけでルンルン。表参道なんかはイルミネーションの点滅がすごくて、クリスマスの曲が流れたりしてるんですよ。もうワクワクしちゃいますよね(笑)。

ーーFUKIさんはクリスマスをどう過ごすのが理想ですか?

FUKI:学生時代は、カップルでどこかに行きたいっていう願望が強かったですけど、最近は家族と一緒にご飯を食べて過ごしたいって毎年思うようになっていて。それは自分が大人になったからかもしれない。家族みんなでお揃いのセーターを着て、チキンを焼いて、みたいなアメリカ映画でよく見るベタなクリスマスが理想ですね。まだやったことないけど(笑)。

ーー恋人にせよ家族にせよ、大切な人と過ごしたいということなんでしょうね。

FUKI:そうですね。クリスマスを一緒に過ごしたいと心から思える人とならば、そんな大それたことをしなくても幸せで楽しいものですからね。「豪華なディナーを」みたいな欲はございません(笑)。

ーーで、そんなクリスマスをせつなく彩る楽曲がFUKIさんから届けられました。12カ月連続配信リリースプロジェクト「12 Sweet Stories」の第8弾、12月24日の“クリスマスイブ”にインスパイアされて生まれた「ラストシーン」です。

FUKI:この曲はけっこう大変でしたね。いつも楽曲制作には時間がかかるタイプではあるけど、今回はいつにも増してめちゃくちゃ時間がかかりました。まず、どんな方向性の曲にしようかっていうところですごく悩んだんですよ。恋人たちにとってクリスマスはある種、メインイベントではあるけど、そこを目前にしたときに「ほんとにこの人とクリスマスを過ごしていいのかな?」とか、ちょっと冷静になってしまったりもするんです。クリスマス前に別れてしまうカップルが多いっていうのは、そういうことが理由で。要はそれくらい重要なイベントだから、それを曲にするっていうことが大きなプレッシャーになってしまったんですよね。

ーークリスマスをモチーフにすると言っても、いろんなパターンがありますしね。

FUKI:そうそう。せつなさのある曲にしようっていうのは最初に決めていたけど、それがハッピーなせつなさなのか、それとも悲しいせつなさなのかでもすごく迷いました。クリスマスだからハッピーなほうがいいのかなと思って一回書いてみたりもしたんだけど、でもなんか違う気がして。

ーーFUKIとして表現するなら悲しいせつなさのほうがいいだろうと。

FUKI:うん。世に出ているクリスマスソングを思い返してみると、私はクリスマスなのに会えない時の感情を描いた曲にグッと来ることに気づいたから、自分の曲として表現するのもやっぱりそっちのせつなさだなって。そこでまず方向性が決まり、次に鼻歌とピアノでメロディを作り始めたんですよね。そこでも「いや違う、これじゃない」みたいなことを何十回と繰り返して。最終的にメロディの候補を2つまで絞り、プロデューサーのEIGOさんと話し合いながら決めました。で、その後にいよいよ歌詞を書くわけですけど、そこでもまた何日も何日も悩みまくりましたね。

ーー難航する作詞作業の突破口を切り開くきっかけは何かあったんですか?

FUKI:最近、よく思うんですけど、私は最後を見るのがイヤな人なんですよ。映画なんかを観ていてもラストシーンの手前で止めて1週間くらい寝かせたりするし、好きなドラマの最終シーズンは1年くらい観なかったりするんです。ほんとはめっちゃ楽しみだから観たくてしょうがないんだけど、「これ観たら終わっちゃうんだよな」って思うと寂しくなっちゃうんですよね(笑)。で、そんな自分の性格は曲にも表れているような気がするんです。私の曲ってだいたい瞬間瞬間を切り取ったものが多くて、そこで感じるワクワクや不安のような感情を描いているんですよね。要は結末まで描かないっていう。

ーーなるほど。ストーリーの行方は示唆されていたとしても、結論を明確に描かない曲が確かに多いかもしれないですね。

FUKI:それはきっと映画とかを観る姿勢と同じだからだと思うんです。ただ、デビュー当時はもうちょっと突っ込んだ、結論が見えるような恋愛ソングを書いていた気もするから、今回はそれを思い出してみるのもいいかなと思ったんですよね。恋愛のラストシーンってほんとは見たくないものだけど、今回はその向き合いたくないラストに目を向けてみようと。そんな気持ちになってからはスラスラと書けましたね。

ーーこの曲の主人公は悲しいラストシーンを予感しつつも、今の関係にふんぎりをつけるべく最後のページをめくる決意をしています。

FUKI:はい。ずっと曖昧なままでもいいと思っていたけど、やっぱりこのままじゃイヤだから思いを伝えに行こう。きっとダメになることはわかってるけど、その最後をちゃんと見届けよう。そんな強い決心をした主人公になりつつ歌詞を書いていきましたね。ラストシーンがどんなものだったかまでは書いていないので、結末は聴いてくださる方々の想像に委ねたいんですけど、ラストのギリギリまで歌詞として書けたのは良かったなって思います。これまで「12 Sweet Stories」ではいろいろなシーン、瞬間を切り取った曲を書いてきましたけど、この曲がひとつの総集編のような感じにもなっている気がするんですよね。意図せずそんな流れになったのも、うれしかったです。

いろいろ悩んできたからこそたどり着けた感情 

ーー歌詞の中で特に気に入っているフレーズはありますか?

FUKI:1番と2番のAメロに“傷”というワードを使ったところは気に入っていますね。傷つくことがわかっているけど、ふんぎりをつけるために一歩を踏み出す。そして、そこでついた傷も時間が経てば癒されて、いい思い出になるときがくる。そんな恋心を上手く表現できたような気がします。あと、個人的には〈最悪なラストシーンだとしても〉のところは印象深いかな。“最悪”ってすごく強い言葉だし、今まで歌詞の中では使ったことがなかったんですよ。でも今回はあえて使ってみることで、耳に残るフレーズになったんじゃないかなって。作詞の過程では違う言葉で書いていたんですけど、最終的に変えてよかったですね。

ーー先月のインタビューで、「今まであんまり歌ったことのないタイプのメロディとアレンジになった」と予告してくれていましたけど、まさにその通りの仕上がりですよね。新しいFUKIさんを感じることができました。

FUKI:ここ最近は世の中のトレンドを意識したアレンジにしたり、フロウのある“FUKIラップ”みたいなパートを入れて曲を作ってきたりしてたんですけど、今回はもうそういったことはあまり気にせず、とにかく感情を優先して作っていくことにしたんですよ。それがひとつのテーマだったというか。あまり揺れ動きのない、しっかりと安定したメロディが作れたから、歌に関してはテクニック的なことを考えるのではなく、感情を込めることだけを考えて臨むことができて。

ーー終わりを予感する悲しさや前を向いて一歩を踏み出す強さなど、パートごとに様々な感情があふれ出している印象ですよね。

FUKI:この曲の主人公になりきって、物語の流れを強く意識しながら歌っていきました。曲が進むにつれて感情が高まっていき、Dメロでガツンと歌った後、またちょっと落して……みたいな流れはいろいろ試行錯誤したかな。極端に言えば1フレーズごとに感情を変えて歌っていくくらいな気持ちだったから、そこはけっこう難しくもあって。実際に泣きそうな表情で歌ったり、ちょっと微笑んで歌ったり、顔をめっちゃころころ変えながら歌っていたと思います(笑)。そんなふうに歌ったのは久しぶりだったかもしれないですね。で、そんな私の歌をふまえて、アレンジ面でも感情を重視したサウンド作りをしてもらったんですよ。

ーー歌とサウンドの融合によって、ものすごくドラマチックな世界が描き出されていると思います。

FUKI:うん。歌詞とサウンド、そして歌がひとつになることで、物語をしっかり感じてもらえる仕上がりになったと思いますね。曲の頭と最後に本のページをめくるようなピアノのポロポロっていう音が入っているところとか、「こんなイメージのサウンドになっていたらいいな」っていう部分が全部盛り込まれていたからうれしかったです。あとこの曲のキモはサビの最後にある〈悔しいけれど「キミが好きだ」〉だと思っていて。そこを目立たせるために〈「キミが好きだ」〉の部分の音を全部抜くことにしたんですよ。

ーーあそこはハッとしますよね。

FUKI:制作の最後の最後、ミックスの段階で音を抜いてみたら「あ、いいじゃん!」ってことになり。私自身、聴いていてドキッとする仕上がりになったと思います。この曲で、聴いてくれた人がポジティブな気持ちになっていただけたらうれしいですね。

ーー悲しい曲ではあるけど、ウジウジした感じはないですからね。ちゃんと前を向いているというか。

FUKI:そうそう。前を向いているからこそ、ラストシーンと向き合う決意ができたわけですからね。いろいろ悩んできたからこそたどり着けた感情だと思います。

ーーこの曲のMVには久しぶりにFUKIさんご自身も出演されていて。

FUKI:はい。今回メインキャストには、宮瀬いとさんに出演していただきました。私は教会でピアノを弾くシーンで登場しております。撮影の3日前に「今回はFUKIも出るよ」って言われたので、2日間炭水化物を抜いて撮影に臨みました(笑)。お腹が減ってツラかったですけど、撮影はすごく楽しかったです。ドラマチックな映像になっているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

FUKI – ラストシーン (Music Video) [出演:宮瀬いと]

ーーそして、12月25日には横浜ワールドポーターズでのフリーライブも決定しています。クリスマス当日ですから当然ね、「ラストシーン」もね。

FUKI:聴けちゃうでしょうねー(笑)。「ライブではやく聴きたい」という声をたくさんいただいているので、私も歌うのが楽しみ。クリスマス当日にみんなと一緒に過ごせるなんて最高にうれしいですね。

ーー今年のクリスマスは「ラストシーン」をヘビロテしていただくことは必須なわけですけど、FUKIさんオススメのクリスマスソングって他にあります?

FUKI:私の場合は、*NSYNCの『Home for Christmas』とジャスティン・ビーバーの『Under the Mistletoe』が鉄板ですね。どちらもクリスマスソングのカバーが入ったアルバムなんですけど、私は12月に入った段階からずーっとリピートしてます(笑)。ほんとに良いです。あと邦楽で言ったらやっぱり山下達郎さんの「クリスマス・イブ」と宇多田ヒカルさんの「Can’t Wait’Til Christmas」じゃないですかね。この時期は自分なりのクリスマスプレイリストを作って、いろんな曲を聴きまくりますけど、この2曲は絶対外せないかな。最近はクリスマスソングのみならず、クリスマスにまつわる映画やドラマも観まくってるんでね、確実にクリスマス病です(笑)。

ーーでは最後に。来月の「月刊FUKI」の予告をお願いします。

FUKI:1月14日“ダイアリーデー”とのコラボとなる次回は、恋うたカバー集の第2弾『COVER FOR LOVERS VOL.2』です。4曲収録なんですけど、そのうち3曲は今までに歌ったことのない楽曲なんですよ。だからレコーディングはなかなか大変だったんですけど、だからこそ探求心がより芽生えたところもあったし、今までにない自分を発見できたりもしました。良い仕上がりになっていますので、楽しみにしていてくださいね。

(取材・文=もりひでゆき/写真=林直幸)

「12 Sweet Stories」インタビュー 

・第1弾「KISS.」
FUKIが語る「KISS.」への思いと12カ月連続リリースへの挑戦「大切なのはやっぱり“今”」
・第2弾「Our Love Story」
FUKIが語る、「Our Love Story」で得たものと「12 Sweet Stories」の充実
・第3弾「Long Distance」
FUKI、“遠距離恋愛”テーマの「Long Distance」で挑戦したこと「頑張る勇気を持ってもらえたら」
・第4弾『COVER FOR LOVERS VOL.1』
FUKI×TEE「12 Sweet Stories」特別対談 二人が語る「ベイビー・アイラブユー 」とラブソング観
・第5弾「オリオン」
FUKIが新曲「オリオン」を通して見つけた、“自分らしい歌”
・第6弾「FIRSTLOVE」
FUKI、“初恋の日”に贈る楽曲「FIRSTLOVE」で描いた“最初で最後の恋”
・第7弾「LOVE and CRY」
FUKI、リアルな恋愛観を表現した“お揃い”の一曲 「LOVE and CRY」インタビュー

■リリース情報
「ラストシーン」
発売:2019年12月13日(金)
配信先はこちら

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