Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

住みたい街 2017第1位・吉祥寺に誕生したミニシアターのシネコン「アップリンク吉祥寺」

隔週連載

第4回

19/1/27(日)

 「住みたい街(駅)ランキング2017」(関東、SUUMO調べ)の第1位に輝いた吉祥寺(JR中央線)。2018年は横浜、恵比寿に次ぐ3位にランクダウンしたが、その理由の一つは「シネコンがないから」とも言われる。2018年12月14日、そんな吉祥寺に待望のシネコンが誕生した。吉祥寺パルコの地下2階にある「アップリンク吉祥寺」は29席から98席まで5つのスクリーンを持つ日本初の“ミニシアター・コンプレックス”だ。

 

JR中央線「吉祥寺駅」から徒歩約2分にある吉祥寺パルコという好立地。パルコブックセンター吉祥寺店だった地下2階を全面改装した。吉祥寺には「吉祥寺オデヲン」(719席)、「吉祥寺プラザ」(216席)、ミニシアター「ココロヲ・動かす・映画館○ (ココマルシアター)」(38席)の3館があるが、シネコンとしては初めてとなる。

エスカレーターを降りると、ギャラリースペース。公開中や近日公開の映画ポスター、チラシが並べられた回廊を曲がると、次は青一色の通路へ。ここはアップリンクが初めて配給を手がけたデレク・ジャーマン監督の『エンジェリック・カンヴァセーション』(85)を吉祥寺バウスシアターで上映したことにちなみ、ジャーマン監督の遺作『BLUE ブルー』(93)を意識して作り上げた空間だ。ほかにも、アップリンクがこれまでに配給・製作した作品のポスターも展示し、ロビーにも絵画が飾られている。

ギャラリースペース
青一色のトンネル
美術館のようなギャラリーコーナー

地下2階はまるごと映画館にすると、300席規模のスクリーンとなるが、それを5分割。スクリーンごとにテーマに沿ったインテリアで統一されていて、随所にこだわりが見える。

「スクリーン1」(63席)はPOP。オレンジ、ブラック、ブルーの椅子をランダムに配置。壁紙はロンドンを拠点にするファッション、インテリアブランド「イーリー・キシモト」製。「スクリーン2」(52席)はRAINBOW。7列の座席の椅子をレインボーカラーで配置し、ブルーの壁は青空をイメージした。「スクリーン3」(98席)はRED。座面と背が真っ赤な合皮、肘掛けが黒の椅子を設置し、赤い照明で未来的な空間を演出。「スクリーン4」(58席)はWOOD。背面が木目調の椅子とウッディな壁。ヴィンテージな雰囲気の間接照明が照らす落ち着いた空間だ。「スクリーン5」(29席)はSTRIPE。ストライプの椅子と床。ウィリアム・モリスの壁紙“鳥とザクロ”でプライベートな雰囲気を醸し出す。それぞれのスクリーンには車椅子用の1席も用意されている。

スクリーン1 POP
スクリーン2 RAINBOW
スクリーン3 RED
スクリーン4 WOOD
スクリーン5 STRIPE

05年、渋谷区宇田川町に映画館、ギャラリー、カフェレストランを一か所に集めた総合施設『アップリンク渋谷』をオープンした「アップリンク」とパルコの共同事業。「アップリンク」の浅井隆社長は以前から“吉祥寺の地に新たなミニシアターを”作ろうとパルコと検討していた結果、吉祥寺パルコの地下2階に作ることになった。

「アップリンク」の浅井隆社長

「立地は駅から近くベスト。既存のビルに映画館を作るという制限はあったが、最大限に工夫をしました。スクリーン、音響(DCPハイレゾ音源の再生)、椅子にこだわり、ジャーマン監督の音楽で知られる英ミュージシャンのサイモン・フィッシャー・ターナーのオリジナル音楽も流して、環境音まで作り込んだ。開館から1か月経ちましたが、お客さんの生の声、TwitterやインスタなどSNSの反応は想像以上によかったです。『美術館みたい』『こんな映画館は見たことがない』『異空間に行ったみたいだ』といった声が届いています。細かいテクニカルなところではまだ修正する部分もあるけれど、大きなところでは成功しています。興行も目標値を達することができそうです」

アップリンク吉祥寺は新作、新作のセカンドラン、旧作のミニシアター系まで多彩なラインナップが魅力だ。『フランケンシュタイン』の著者メアリー・シェリーの波乱の半生を描く新作『メアリーの総て』を始め、NYインディーズの名匠ハル・ハートリー監督の初期3部作『ロング・アイランド・トリロジー』のHDレストア版、『ディア・ハンター 4K デジタル修復版』などがオープニング。ほかに、2014〜18年の選りすぐりの150本を上映する「見逃した映画特集 Five Years」も展開した。

「さまざまな映画を上映し、若者からシニア層まで映画を観るいろんな層に発信できたことがよかった。午前中はシニアの方がやってきて、『今日は何をやっているのかしら』と観に来てもらえます。目的の映画があるわけではなく、映画を観に来てくれるんです。これは嬉しかったですね。吉祥寺の人たちがこういう映画館を待っていたんだな、と感じています」と浅井社長。

まずはしっかりとした映画館運営に力を注ぐ考え。「アップリンク渋谷は3スクリーンで、二番館のミニシアターという位置づけでした。3スクリーンで1日5回まわし、多い時は15作品を上映してきた。吉祥寺は5スクリーン、1日25枠あるので、二番館のラインナップだけでは足りない。新宿や有楽町をメイン館とする新作映画の“サポート館”といった役割も果たしていきたい」

カルチャーの発信地となるミニシアター・コンプレックスの登場で、街の魅力が増したことは間違いない。住みたい街No1奪還もありそうだ。

映画館データ

アップリンク吉祥寺
住所:住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 パルコ地下2階
電話番号:0422-66-5042
公式サイト:アップリンク吉祥寺

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む