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『エール』“マルチ子役”新津ちせが見せる演技に注目 成長した姿演じる森七菜への意識も?

リアルサウンド

20/4/9(木) 6:00

 3月30日からスタートした、窪田正孝主演のNHK連続テレビ小説『エール』。1964年に開催された東京オリンピックで使用された「オリンピック・マーチ」をはじめ、数多くの応援歌や行進曲を世に送り出した作曲家・古関祐而をモデルに、戦中・戦後の傷付いた国民を音楽の力で勇気づけようとした夫婦の姿を描き出す物語だ。

参考:【写真】お団子を手に笑う、個性豊かな三姉妹

 第1週では福島県の呉服屋の跡取り息子として生まれた、まだ幼い主人公の祐一(石田星空)が、担任の藤堂先生(森山直太郎)に作曲の才能を見出される姿、また後に祐一と共に名曲を生み出すことになる村野鉄男(モデルは作詞家の野村俊夫だ)と友情を育んでいく姿が描き出されていった。そして第2週に入り、4月7日に放送された第7話からは、祐一の妻となる関内音(二階堂ふみ)の幼少期の物語が展開していく。音の幼少期を二階堂そっくりの風貌で演じる清水香帆の好演も際立つが、その妹である梅(森七菜)の幼少期を演じる新津ちせの演技も見逃してはなるまい。

 新津といえば、『君の名は。』などで知られるアニメーション作家・新海誠監督の娘として注目を集め、3年前に公開された『3月のライオン 前編/後編』では物語の重要な役割を担う三姉妹の三女・川本モモ役を演じた。そして昨年は『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『アナと雪の女王2』などで日本語吹替版の声優を務め、初主演映画の『駅までの道をおしえて』が公開。さらになんと言っても、昨年のレコード大賞に輝いた『パプリカ』を歌うFoorinの一員としても活動するなど、現在まだ9歳にしてマルチな才能を発揮しているのだ。

 彼女が演じる梅は、音楽をこよなく愛する音の妹であり、小説家を目指す文学少女という役柄だ。初登場を果たした第7話では、豊橋で馬具店を営む関内家の2階で、姉の吟(幼少期を演じるのは『梅ちゃん先生』で瀬川みどり役を演じた本間叶愛、成長した姿は松井玲奈が演じる)と音が雑誌を取り合っている傍らで、おとなしく芥川龍之介の『鼻』を読みながら、時折ふたりの姉の言い合いに茶々を入れる。そしてふたりに「こういうもん(前述の芥川のことだ)でも読んだら」と言い放ったり、学芸会でかぐや姫を演じたいと言いながら団子を頬張る音に「かぐや姫、太っとったらまずいんじゃない?」とつぶやくなど、末っ子ながら冷静沈着で、三姉妹内のツッコミ役といったポジションにあたるわけだ。

 しかも、この梅。今後成長した姿を演じるのは新津の父・新海誠が昨年手がけた『天気の子』でヒロインの声を務めた森七菜だというのだから興味は尽きない。そうした運命的な繋がりもさることながら、森といえばこれまで、『ラストレター』では松たか子の、『最初の晩餐』では戸田恵梨香の少女期を演じてきた逸材中の逸材だ。その幼少期を演じるとなれば、新津の演技ポテンシャルが大きく試されることは間違いないだろう。

 少なくとも第7話でのわずかな登場シーンを観た印象では、新津は森の演技の特徴をしっかりと意識しながら演じているように思える。ほわっとした独特の空気感を放ちながらも時折芯の強い視線を放ち、モーションの大きさが醍醐味である森の演技の特徴を、まずこの関内梅という役柄に、新津が可能な限り落とし込もうとしている。とりわけ朝ドラにおいては幼少期の役者と成長後の役者の演技とが綺麗にリンクした時に、そのキャラクターの魅力が高まるだけに、この序盤で新津が見せる演技と、森がそれをどのように引き継ぐのか。この2点にフォーカスしながら、まだ始まったばかりの本作を追いかけていきたい。 (文=久保田和馬)

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