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【re:START】キーパーソンInterview

KREVA【前編】

特別連載

6-1

20/6/23(火)

ポストパンデミックの音楽カルチャーはどういったものになるのか。時代が大きく変わるなかで、どんな表現がこの先に生まれていくのか。

そういったテーマをいち早く模索しているアーティストのひとりがKREVAだ。2020年2月27日から予定されていた<KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」>全国ホール&アリーナツアーは新型コロナウイルス感染拡大防止のため全公演無期限延期。そのうち2月29日に予定されていたLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)での公演は無観客ライブとして実施された。

外出自粛期間となった4月以降には自宅からYouTube LIVEを実施。ファンとのトークだけでなく、みずからビデオミキサーなどの機材を導入し、ビートメイクの様子をリアルタイムで解説しながら生配信を行った。

ツアーファイナルを予定していた6月24日の午後9時08分には、有料生配信ライブ<KREVA Streaming Live「① (マルイチ)」>も開催される。

コロナ禍の3ヵ月に彼がどんなことを思っていたか。話を聞いた。

── KREVAさんは2月末から全国ツアーを予定していたわけですが、それを延期や中止にする決断についてはどういうものでしたか。

KREVA 会社的にも当然迷ってたけど、自分としてはわりと早くに“なし”にしようと決めました。その理由としては、ツアーのタイトルが「敵がいない国」というものだったのが大きかった。ツアーでは、ある種のファンタジーとして「敵がいない国」というものを提示しようとしていて。もちろん実際にそういうものはないし、世の中には戦争だってあるけれど、それでも会場に集まった全員で音楽を楽しめば、この空間が「敵がいない国」になる。そういうことを提示するライブを用意して、衣装も着てゲネプロもやったんだけど、いざやろうとすると俺がやりたいことがことごとくハマらない。見えない敵が世界中にいるなんて、想像だにしなかったから。ファンタジーを強烈に超えてくる現実が目の前にあって、エンタテインメントの力や想像力でどうこうできるもんじゃない。だから自分から「やめましょう」と言いました。申し訳ないけど、俺は今のこの状況でいいものができるとは思わない、と。

── なるほど。ビジネスとか観客の安全もさることながら、テーマやコンセプトが大きかった。

KREVA ほんとに大きかった。無理して集まって「ここだけでも音楽を楽しもう!」って全力で思えるんだったらまだしも、こっちがそこに疑問を抱いてるままじゃ何もできない感じだったから。これがたとえば「人と人がもう少し歩み寄ればなんとかなる」というような問題だったら、逆に「敵がいない国」というファンタジーを提示することに何かの意味があったかもしれないけれど、今回のことに関しては、頭の中で考えてたストーリーとか話す内容とかも、ことごとくハマらなかった。それが大きな理由だったかな。

── 2月29日のLINE CUBE SHIBUYAの東京公演は無観客ライブになりましたが、あの決断は?

KREVA うちの社長がそれを言ってくれたのもあったけど、そのときの社長の言葉ですごく響いたものがあって。みんな、「できることをしよう」って言ってたんだけど、社長は自分に言い聞かせるように「できないことはしない」って言ってた。それを聞いてすぐに答えを出せた感じだったかな。無理に新しいことを提示するわけじゃないし、準備はしてたわけだからできないことじゃない。とはいえ、ただ黙ってるのも嫌だったんで。

── そしてツアーは無期限延期になりましたが、これは?

KREVA 延期にして振替公演の日程を決めても、それがまた再延期になってというのを繰り返すんじゃないかなと思ったんで。ただ、「無期限延期」という言い回しにしたときにスタッフの中でもひとつ腑に落ちたようなところがあったんです。実質的には中止になるけれど、いつかやりたいという気持ちもある。それを表明するには「無期限の延期」と言うのが一番いい。それで区切りがついた感じですね。ツアーの中身はきっちりと作ったので、これはいつになるかわからないけれどやりましょう、という気持ちです。

── 4月からは外出自粛期間になりましたが、KREVAさんはどう過ごしてましたか。

KREVA 自分としては、アーティストとして曲を作るいい機会だなってとらえてましたね。ほとんどのアーティストがそうだったと思うけど、長い合宿のような感じで、じっくり曲を増やす。それに励むのと、あとはひとりでYouTube LIVEをやったりして発信しようと。そっちに切り替えました。あとは家族と過ごす時間を大事にしようと思ったりしてましたね。

── YouTube LIVEの発信を始めたのはどういうきっかけだったんでしょうか。

KREVA きっかけとしては、三浦大知くんのインスタライブに誘われて出た、というのが大きいですね。そうしたら自分のファンも大ちゃんのファンもすごく喜んでくれた。それと、やっぱりあの時期はみんなに家にいてほしいっていう気持ちがすごく強かったんですよ。でも、ただそれを言うより、自分がトライしてみたかったことをやりながら、そのメッセージが伝わればいいなと思って。家でビートを作ってるところを見せるっていうのに切り替えた感じですね。

── あの時期にはいろんなアーティストがインスタライブやSNSで発信してましたね。

KREVA でも、自分としてはインスタライブをやろうとは思わなかったな。クオリティの高いサウンドと映像で、ちゃんと自分で映像を切り替えながらやりたかった。今回のツアーのためにYouTubeチャンネルを始めて、自分でFinal Cutを使って動画の編集を始めたりもしていたから、それを活かそうというのもあったし。

── たしかにYouTubeライブを観てまず印象的だったのが、回を重ねるごとにやたら機材が充実していくということでした。

KREVA あはははは! そうそう、最初はiPhoneだったけど、どんどん増えていってね。

── ちゃんとビデオミキサーを導入して、顔と手元とソフトの画面を自分で切り替えて見せていくというやり方をしてるのがKREVAさんらしいなと思いました。

KREVA そうだね。これがYouTube的でもあるなっていうのもあって。YouTubeの世界にはいわゆる“ガジェット界隈”というものが確実に存在するから。自分はツアーに来てもらいたいという気持ちで始めたし、もちろん音楽が主軸なんだけど、ガジェットに関しての動画を大人が観てる傾向はあったんで。機材を充実させて、しっかりした映像で見せるっていうのが大事なんじゃないかなと考えたんです。まあ、自分がそういうガジェットが好きだっていうのもあるけど。

── キーポイントになった機材、これを導入したらやりたいことができるようになった機材というのはありました?

KREVA ROLANDのVR1-HDというビデオミキサーが大きかったですね。あれはHDMIの入力を手元で切り替えられるし、画面分割も気軽にできるし、サウンドのクオリティも担保されてるので。2018年に「完全1人ツアー」というのをやったんだけど、これを使えばあれを本当にひとりでYouTubeでやれるっていうのは思った。

── 「完全1人ツアー」のときには映像担当の人がやっていた操作すら自分でやれる、と。それをやりながらどうやって機材を使ってるのかをリアルタイムで説明することができる。

KREVA そう。だから表現することの次元が増えた感じはある。この作業をしているときはソフトの画面を見せたほうがいい、これをやってるときは機材を見せたほうがいいとか、そのジャッジって自分じゃないと難しいじゃないですか。普通にライブの映像を撮影しているカメラを切り替えるのとは違うから。自分でビートメイキングを進めながらそれも同時にやれるので、その面白さはあると思う。

── この時期に作ったトラックのムードはどういうものでしたか。今の時期の空気感や時代感に影響を受けて、それが反映されたりはしましたか。

KREVA 家でやっていた影響は多分にあったかもしれない。スタジオでやってたら立って歌えるし音もガンガンに鳴らせるから、バーン!と鳴らして「いいね! いこう!」って感じになったかもしれないけど、家でやるとそうならなくて。それこそ今っぽいビートになってる感じはした。ベッドルームミュージックの延長線上っていうか。

── どちらかと言うとチルな、メロウなトラックで、声もそんなに張らない感じですよね。そうなると歌う内容も「おっしゃ行こうぜ!」というより「俺は今こんな感じ」みたいな平熱の感じになるというか。

KREVA 間違いない。何人かに「この状況のあと、KREVAさんから何が出てくるのか楽しみですね」って言われたんだけど、俺が感じてるのは、まさにそれに近いかな。たとえば「世の中を元気づけよう」とかじゃなくて。自分のこととか、心のちょっとした動きみたいなものになっていきそうな予感がある。あまりに想像を超える感染の拡大で、生半可な「頑張れ」とか「大丈夫」がまったく通用しない世の中になってしまったなと思うんです。そういうときに100%自信を持って出せるものって、そういう心のひだというか、心を深く広げて、表現したようなものになってくんじゃないかと自分は思ってますね。

取材・文=柴 那典 撮影=髙木博史 ヘアメイク=結城藍

「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」

プロフィール

KREVA

1997年、LITTLE、MCUとKICK THE CAN CREW結成。2004年6月に活動休止後、ソロ活動に専念。同年9月08日(クレバの日)にメジャーデビューシングル「音色」リリース。以降、常に“HIP HOPソロアーティスト「初」”と称される精力的な活動を続け、2019年、ソロデビュー15周年イヤーには9月08日 (クレバの日)まで9ヵ月連続リリース、ホームである日本武道館公演を開催。ニューベストアルバム『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』、オリジナルアルバム『AFTERMIXTAPE』と2枚のアルバムを発売。2月19日には、LIVE Blu-ray & DVD『KREVA BEST NEW ALBUM LIVE 成長の記録 at 日本武道館』を発売。6月24日、「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」をKREVA OFFICIAL GOODS ONLINE SHOPで 限定販売。11月6日より全国公開映画『461 個のおべんとう』に出演。

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