Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

片桐仁の アートっかかり!

『MANGA都市TOKYO』展 懐かしさと同時代感でお腹がいっぱい!?

毎月連載

第22回

今回、片桐さんが訪ねたのは、国立新美術館(東京・六本木)で開催中の『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』。2018年のパリを経て東京にて巡回している同展を、国立新美術館客員研究員の宮本亮平さんに解説いただきながら鑑賞してきました。

巨大な都市模型を前に、
あの名作アニメの名場面が展開!

宮本 この展覧会はまず、2018年にパリで開催されました。展覧会名にある『MANGA都市TOKYO』の「MANGA」は、マンガ・アニメ・ゲームの頭文字をとったもので、同展は東京という都市と日本のマンガ・アニメ・ゲームの相互関係に焦点を当てた内容になっています。

片桐 「MANGA」ってそういうことだったんですか!? 言われてみないとなかなか気づかないかもしれないですね(笑)。

宮本 まずは、現実の東京という都市空間をイメージしてもらうために、1/1000スケールの東京都市模型を紹介しています。

《1/1000 巨大東京都市模型》 制作:株式会社ニシムラ精密地形模型、マーブリング・ファインアーツ

片桐 うわあ! スゲエ!

宮本 前方のスクリーンでは、東京を舞台とするマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品の代表的なシーンが映し出され、そのシーンの舞台となった地点にスポットライトが当たるようになっています。

スポットライトで照らされる東京都庁

片桐 『AKIRA』からスタートするんですね。

スクリーンの映像は、アニメ『AKIRA』(1988年)から

宮本 ストーリー自体が展覧会のコンセプトと深く関わっている作品なので、『AKIRA』をオープニングに持ってきました。単にアニメのシーンを映像で見せるだけでなく、地図の映像とシームレスに繋げ、虚構と現実がつながって見えるような演出をしています。

片桐 東京で起きた出来事なんだなってリアルに感じますね。この都市模型も良くできていて、ずーっと見入っちゃいます。双眼鏡でじっくり見たいなあ!

宮本 パリ開催では双眼鏡で見られるようにしていたんですけど、コロナ対策により東京開催では実現できませんでした。各自持参いただければと思います!

3Dマップを元に制作された東京の都市模型。都庁やスカイツリーなどはより精巧に作られている

セクション1「破壊と復興の反復」
現実でもフィクションでも繰り返されるスクラップ・アンド・ビルド

会場中央の巨大東京都市模型からセクション1へ

宮本 東京と他の大都市と大きな違いは、都市レベルの破壊と復興を何度も繰り返している点にあります。実際に江戸時代から大火災や地震、戦争などで破壊され、その後、崩壊前の都市の姿に戻すのではなく、それを機に新しい都市へと変貌を遂げていく。このセクションでは、そうした東京の特徴が日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品においてどのように現れているのか見ていきます。

「ゴジラ映画と東京」の展示風景

片桐 ゴジラは破壊の典型ですね。勝どき橋に国会議事堂に、東京をどんどん壊していってるんですね!

宮本 初代『ゴジラ』は1954年公開ですから、終戦から約10年後です。実際に空襲を体験した人々が、再び東京を破壊する映像を作り、鑑賞していたということになります。その後、ビッグサイトや新宿副都心、東京都庁と、新しいランドマークが完成するたびに、ゴジラはそれを破壊していくんです。

片桐 よく見知っている建物がいとも簡単に破壊されるというのは、ものすごい衝撃です。

宮本 こうして映像に記録されることによって、現実の風景よりも映像の中で描かれている風景の方が長生きするということもあります。

片桐 『ゴジラ』がシリーズを通じて破壊と復興を描いてきているとしたら、一つの作品で破壊と復興を描いているのが『AKIRA』や『エヴァンゲリオン』シリーズです。

マンガ『AKIRA』(1982年)よりデジタル出力

片桐 『AKIRA』は最初に東京で大きな破壊があって、ネオ東京として復興して、それがもう一度壊されますからね。

宮本 『エヴァンゲリオン』シリーズでは、使徒が襲ってくるたびに破壊されて、復興する。使徒が襲ってきた後の後始末が、非常に細かく丁寧に描かれている作品です。

アニメ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009年)
『帝都物語』(1988年)イメージボード

宮本 これは『帝都物語』のイメージボードです。

片桐 『帝都物語』、懐かしいなあ! 関東大震災で帝都が破壊されるんですよね?

宮本 そうです。こちらでは歴史的資料として、関東大震災による火災で焼失したエリアを示した当時の地図を展示しています。

《帝都大震火災系統地図》大正12年(1923)

片桐 こうして見ると、東京の大部分が燃えているじゃないですか!

宮本 これだけ焼けてしまったけど、元に戻すというよりは、これを機会によりよい都市にする復興計画が考えられ、実行されていくんです。こういった都市レベルの災害というのは、江戸の頃から発生し、その都度大きな被害を受けていた。ここでは実際にあった災害を浮世絵など当時の資料で紹介しています。

片桐 江戸時代の火消しは、当時のヒーロー的存在だったんでしょうね。

国通《御代の春子供出初遊び図》 1843-1847年頃、貞重《彩版いろは組み》 江戸期

セクション2「東京の日常」
江戸から現在まで、東京で暮らす人々の姿

宮本 セクション1では、破壊と復興が繰り返されてきた東京という都市を見てきましたが、セクション2では東京で生きる人々の姿とその変遷を見ていきます。

松本大洋『竹光侍』(2006年)
一ノ関圭『鼻紙写楽』(2003年)

片桐 江戸の人々の暮らしというと、時代劇で見たりする印象が強いですけど、こうして見ると巨匠たちが江戸の庶民を描いているんですね。

宮本 江戸の町で特徴的なのは長屋の構造です。縦長の建物が密集している中を縦横に道が走っている。それを石森章太郎先生は縦型のコマ割りで表現したりしています。

片桐 江戸の町が舞台のゲームもあるんですね。

「がんばれゴエモン2」(1989年) 発売元:コナミデジタルエンタテインメント

宮本 このゲームで面白いところは、画面の切り替わりを橋で表現している点です。川と橋が多いという都市構造とゲーム上の制約をうまく利用した一例として紹介しています。

片桐 『るろうに剣心』だ! 江戸から明治に入ってきました。

和月伸宏『るろうに剣心』(1994年)

宮本 明治時代には西洋文化が流入し、西洋建築が増えてくる中で変わりゆく東京の様子を紹介しています。

片桐 『はいからさんが通る』は大正時代ですね。

大和和紀『はいからさんが通る』(1975年)、『はいからさんが通る』(テレビシリーズ、1978年)

宮本 大正時代は実際に女性の社会進出が進みました。そうした社会状況を描いた作品として、『はいからさんが通る』『フイチン再見!』などを紹介しています。

片桐 ここから昭和だ! 戦前の東京……まだ、見たことのない風景ですね。

滝田ゆう『寺島町綺譚』(1968年)

宮本 滝田ゆう先生が自身の少年時代に体験した東京が描かれています。

片桐 よくこんなきれいな状態で残っていましたね。かつては出版社も原画の扱いが雑で、平気で捨てたりしていたとか聞きますよ。

高森朝雄・ちばてつや『あしたのジョー』(1967年)

片桐 『あしたのジョー』ですね。やっと僕の知っている東京に入ってきました! ここは池袋駅東口ですか?

宮本 そうです。ファッショナブルな若い男女が行き交う中に、試合後ボロボロになったジョーが歩いているという印象的なシーンです。この展示の特徴のひとつとして、作品の紹介をしているんですが、あくまでも東京の街との関連性を示すものなので、『あしたのジョー』でもボクシングシーンはひとつもなく、東京という街を象徴的に表しているシーンを展示しています。

片桐 出た! バブル期! 『シティーハンター』は僕、全巻持っていましたよ!

北条司『シティーハンター』(1985年)

宮本 フランスでも大人気で実写版が制作されていますからね。

片桐 このファッションセンス……当時から独特でしたよね〜。

わたせせいぞうさん! いいなあ〜バブルだなあ。

わたせせいぞう『東京エデン』(1998年)

宮本 この作品が描かれたのはバブル後なんですけど、湾岸エリアを外車で走り、おしゃれなレストランやファッションといった登場アイテムすべてが、強烈にバブル期を思い起こさせます。

バブル崩壊後の大きな変化とは?

宮本 バブル崩壊後は、東京の中でも華々しいランドマーク的な場所ではなく、どこにでもあるような風景の中でドラマが展開することが多くなってくる。『3月のライオン』では、東京のきらびやかな部分からは引いた目線で、乾いた部屋などを描かれています。

羽海野チカ『3月のライオン』(2007年)
監督:細田守/原作:筒井康隆『時をかける少女』(2006年)

片桐 『時をかける少女』のこの場所は、実際にモデルとなった場所があるんですか?

宮本 踏切のある街は実際の風景をベースにして、坂道は追加したようです。アニメやマンガに登場する場所が聖地となったり、東京在住者にとっては自分の見知った風景が見えてくるのも面白いですよね。

バブル崩壊後のもうひとつの特徴として、物語のテーマそのものも、より小さく、パーソナルなものになっていったり、東京の暗部、ダークな部分を描くような作品が多く登場します。

片桐 『リバーズ・エッジ』ですね。東京の高校生って感じがしてうらやましい感じがしましたね。

宮本 バブルの頃は、街中のキラキラした中でドラマが展開したんですけど、バブル崩壊後は、川を挟んで少し離れた距離から都会を見る、外の世界から見るという表現が出てくるんです。

岡崎京子『リバーズ・エッジ』(1993年)

宮本 また、バブル崩壊後は東京全体のイメージというものが薄れていきます。「中心性を失っていく」と展示ゲストキュレーターの森川先生は指摘していますが、地方が東京化し、東京でしかなかった文化を地方で享受できるようになると、どんどん東京の特徴が失われていく。一方で、渋谷や新宿、秋葉原といった街ごとの特徴が際立ってくるんです。

上条淳士『8 —エイト—』(2000年)

宮本 渋谷ではストリートカルチャーが発達し、そうしたハイセンスな文化を描いています。

片桐 渋谷の街、そのまんま描いていますね。よく描いているな〜。

『龍が如く』もすごいですねこれ! リアル歌舞伎町じゃないですか!

「龍が如く 極2」 発売元:セガ(2017年)

宮本 実際の街を歩いているような感覚を体験できるゲームは、街のキャラクターをよく表していますよね。渋谷はストリートカルチャー、新宿は夜の街、秋葉原はゲームやアニメなどオタクカルチャーといった、それぞれの街のキャラクターが確立されているのがわかります。

東京はアニメやマンガのキャラクターでいっぱい!?
セクション3「キャラクター VS. 都市」

宮本 ここまでは、フィクションが現実の東京をどう描いたか、というのを見てきましたが、セクション3では逆に、フィクションで描かれた作品が、現実の東京をどう変えてきたかと紹介します。

片桐 今はアニメのキャラクターが街に溢れていますよね。

宮本 コンビニもアニメのキャラクターとタイアップしていたり、作品のゆかりある場所にファンが訪れることで街の景観自体を変えていくというものもあります。

コンビニエンスストアと『初音ミク』

片桐 『ガンダム』きた〜!

『機動戦士ガンダム』1/60完成モデル RX-78-2 ガンダム Ver.G30ch
発売元:バンダイ

宮本 スクリーンではお台場の『ユニコーンガンダム』の映像をお見せしていますが、ガンダムといえばやはりこれ、オリンピック誘致の時に、お台場の潮風公園に実物大で設置されたモデルです。

片桐 これは、よく探しましたね! 初めて見たかもしれない。

宮本 めちゃくちゃ探しました。初代ガンダムは何体ぐらいお持ちなんですか?

片桐 10体以上は買いましたよ。

宮本 パリ開催では1/12モデルを展示したんですよ。

片桐 1/12モデルは今家にあるんです。相当大きくて邪魔なんですけどね!

『ラブライブ!』シリーズと神田明神のコラボによる絵馬やお守り

宮本 『ラブライブ!』は、作中に登場した神田明神とコラボグッズが発売されています。

片桐 お守りも絵馬もアニメ連動で、そりゃあファンは喜びますよね。グッズに神様が乗ってくれるんだから、最強ですよ!

宮本 日本の特徴として、公共空間にも漫画アニメゲームのキャラクターが数多く進出しているというのがあります。

片桐 マンガやアニメも文化だって言い始めてから増えましたよね。

宮本 この展示は、我々が当たり前のように見ているそうした景色を、パリの方にも見ていただこうと山手線の車内と、車窓から見える風景を忠実に再現したものです。

山手線の車内を再現!
車窓からは、流れゆく東京の街の風景を見ることができる(通常は車内に入ることはできません)

宮本 実際にこうやって見ると、車内の広告から、街中の風景の中に多くのキャラクターや聖地が見える。東京がマンガ・アニメに溢れている街だということがわかると思います。

片桐 いや〜もうお腹いっぱいです(笑)。

美術館での開催なので、ファン目線というだけじゃない、現実とのリンクや東京という都市の変遷を追っているというのが面白かったですね。

宮本 『MANGA都市TOKYO』というタイトル通り、東京という都市とマンガ・アニメ・ゲームの相互関係がどのようなものだったのかということを感じていただけたらなと思います。

片桐 東京は、マンガ・アニメ・特撮の重要な装置になっているんですね。

宮本 ちなみに、ショップエリアでは東京のアニメショップを再現しています。

片桐 『鉄腕アトム』から『鬼滅の刃』まで!? すごい品揃えじゃないですか〜! あれ?「鬼滅」の原画とかなかったですよね? それと比べると、オリジナルグッズはちょっと地味な気が……!?

宮本 コンセプトブックはかなり人気なんですよ! ショップだけのご利用もできるので、ぜひ足を運んでみてください!

充実のショップエリアを堪能する片桐さん

構成・文:渡部真里代 撮影:星野洋介

開催情報

『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』
11月3日(火・祝)まで国立新美術館 企画展示室1Eにて開催

関連リンク

MANGA都市TOKYO

プロフィール

片桐仁 

1973年生まれ。多摩美術大学卒業。舞台を中心にテレビ・ラジオで活躍。TBS日曜劇場「99.9 刑事事件専門弁護士」、BSプレミアムドラマ「捜査会議はリビングで!」、TBSラジオ「JUNKサタデー エレ片のコント太郎」、NHK Eテレ「シャキーン!」などに出演。講談社『フライデー』での連載をきっかけに粘土彫刻家としても活動。粘土を盛る粘土作品の展覧会「ギリ展」を全国各地で開催。

アプリで読む