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女王蜂 アヴちゃんが明かす、さまざまな思考との付き合い方「自分らしさとは快適であるかどうか」

リアルサウンド

20/6/12(金) 18:00

 アーティストやタレントが「対極」を表現する写真集シリーズ『AMPHIS(アンフィス)』の第3弾『AMPHIS Avuchan』が5月31日に発売された。

 今回モデルに起用されたのは、女王蜂のアヴちゃん(Vo)。撮影は気鋭のカメラマン・TRMN(トロマン)、スタイリングは海外でも活躍する一ツ山佳子、縷縷夢兎のデザイナー・アートディレクターとしても知られる東佳苗など第一線のクリエイター陣が集結し、対極にある“FとM(Female&Male)”をテーマに「ギャル・タロット」と題した22のスタイルでの撮影に挑んだ。

 リアルサウンドでは、アヴちゃん本人にメールインタビューを行い、『AMPHIS Avuchan』の制作エピソードや本誌のテーマである“FとM”にまつわる話を聞いた。

(関連:女王蜂を取り巻く熱狂はなぜ加速しているのか? 『十』と新作『BL』で洗練された音楽性

■撮影は“三十分毎に転生する”ーーそんな夢を見ていたよう

 「女王蜂のメンバーと撮影することではなくひとりでやり切るのだとしたら、大量に変幻したいな! と。アゲでGALぃタロットがあったら最高だな! と思い『GALタロット』としました」。スタイリングの要となった「ギャル・タロット」はアヴちゃんの提案だという。タロットカードの中で「大アルカナ」に属する22枚のカードを時代性やスタイルなどさまざまな概念を超越した独創性溢れるスタイリングで縦横無尽に表現するアヴちゃんの姿はまさに美麗そのものだ。

「ただただ、今作のテーマを表現するだけではなく、せっかく憧れの方々とご一緒するのだから“アガるものを!”と思い、追加でタロットカードの要素を提案させて頂いて『GALタロット』となりました。アルカナ数が偶数なので、ペアを十一種用意したことで、自ずと作品に繋がりが出来ていったのだと思います。高い集中力を持ってして短時間で二十二種類ものスタイルを創り上げたので、目まぐるしくも現場でのメイク・スタイリング込みで“三十分毎に転生する”そんな夢を見ていたようで、とても楽しかったです!」

 本誌のスタイリングには、アヴちゃんの私物も用いられている。

「二十二種類、総てがお気に入りなのですが、その中でもわたしの大量の私服・私物でのコーディネートにわたしが尊敬しているスタイリストの方々のアプローチが絡み合ってゆく様子は圧巻でした。ヘアメイクもどれひとつとっても凄まじく、芸術家の本気を身をもって体感することが出来ました! ひとカットずつに、登場人物に対してそれまでの人生のようなドラマを用意できるようしてゆくことを準備していました。撮影中は必死でしたが、アルカナの化身全員が現在進行系で生きていることを重要視していたように思います!」

■孤独は決して悪いことではなく「終わり」と同じくらいに当然なこと

 それぞれのスタイリングに深みをもたらしているのは、タロットに添えられたアヴちゃんのポエムだ。『01.愚者』から『21.世界』まで、登場人物が自分の道を堂々と生きている様子が描かれる一方、どこか物寂しさや儚さを感じさせるような描写も見受けられる。本誌における22枚のタロットの登場人物は、“どんな自分も自分である”ということを女王蜂の活動においても体現してきたアヴちゃんの化身のようにも映る。アヴちゃんにとって「自分らしく生きる」とはどのようなことなのだろうか。

「わたし自身、孤独は決して悪いことではなく『終わり』と同じくらいに当然なことだと思っています。自分らしく生きる! と意気込み続けて『自分らしくなさ』と対峙し折り合いをつけてゆくこともあれば、そのまま生きているうえで訪れるノイズをうまくミュートしてゆくことでもある生存活動、生活。そんななかで、自分らしさとは快適であるかどうか。『自分らしく生きる』ことは『快適に生きている』ことだと思います!」

■性別というものは存在、関係性も本来はとても曖昧なもの

 女王蜂は、アヴちゃんをはじめ4人のメンバー全員、年齢・国籍・性別は非公表だ。「属性で人を判断することはつまらない」という考えをこれまでも公言してきたアヴちゃんは『FとM(Female&Male)』というテーマをどう捉えているのか。また昨今の社会における性への意識の変化についても次のように語る。

「女王蜂にとって『FとM』の表現は、最早『スカートスタイル or パンツスタイル』くらいの感覚。“大量のグラデーションのなかキュロットやハーフパンツ等、勿論色々あるでしょ”といったように感じています。性別というものは存在、そしてその関係性も本来はとても曖昧なものなのではないでしょうか。音楽やアニメを筆頭に、自分の身体を飛び出してアイコンへと受肉し、表現を行うことが飽和するほどに当然となっているいま、自分の身体や心、振る舞いや過ごし方を己の範疇より一から考え、実行してゆくことは、素晴らしくとてもすてきなことだと思っています。社会、と一括りにするのも難しいことですが、もう性別に限ったことではなく人・物・事に対する幻想や期待はとっくに崩れはじめ、故にいずれは概念すらも去ってゆき、そこに残された「人間性という大きな白紙に各自どう向き合ってゆくか」。そんな、またひとつ切実な考え方と取り組み方になってゆくのではないかと思っています!」

■ネガティブは冷静の化身、ポジティブは情熱の化身

 「女帝たるものいつだって、みなを鼓舞する存在であらねばなりません。総てのポジティヴを引き受け、総てのネガティヴを高く昇華致します」。これは『女帝』のタロットに添えられた中の一文だ。まさに女帝さながら女王蜂のフロントパーソンとして多くのリスナーを鼓舞してきたアヴちゃんらしさが表れている。アヴちゃんはこれまで自身のネガティブな思考とどう向き合ってきたのだろうか。

「わたしはネガティブを冷静の化身と捉え、ポジティブを情熱の化身と捉えています。どちらも太陽と月のように当然心に昇るものなので、お天気や世情のそれからなるべく影響を受けない部分を常に、なるべく豊潤に準備することがわたしの思考との付き合い方なのかもしれません! ただこの思考に至るまでを文章にするのはとーっても難しい! ので、またお話のなかで是非引き出して頂けたらうれしいです……、、贅沢かしら」

 言葉を紡ぐ上で「正直と本気」を大切にしていることも教えてくれたアヴちゃん。女王蜂は、音楽や言葉、自らの存在をもって、常に私たちに多くのポジティブをもたらしてくれる。先鋭的なサウンドやビジュアルイメージによるカリスマ性はもちろん、その根底にあるマインドに多くの人が魅了されているのだ(「アヴちゃんが自信に感じていること」に「自分の素直さ。お友達とファン方々、周りのすてきさ!」と答えてくれたことにも表れていると思う)。折を見て、いつかじっくりとアヴちゃんの思考に迫る話を聞ける機会がもてる日を楽しみにしたい。

■悩むことでしか心の深度を得られないこともたくさんある

 最後に、アヴちゃんは「自分らしさ」という言葉に悩む若者に向けて次のようなメッセージを寄せてくれた。

「いまや人類皆若者なのではないでしょうか! 悩むことでしか心の深度を得られないこともたくさんあるので、悩むことがいまの「自分らしさ」かもな! なんて思ってしまえればすてきなのではないかな、と思います。自分らしさと個性は似ているようで違うように、分解して考えてゆけばひらめくことがたくさんあるので、自分をひとまとめにせず生涯をかけて、と思ったらあした解決出来るかも! といった抜け感を持って、じっくりと解明してゆくたのしみをいつもわたしは味わっています。遠くない未来ライブ会場でお会いできることをたのしみにしています! 今回の写真集も是非お手に取って頂けますように」

 本誌の最後には「いつだって切り札は己」という力強いメッセージも。人は思考の数だけ美しくなり、切り札たる己が形成されていくのかもしれないーーそんなことを、アヴちゃんの言葉と『AMPHIS Avuchan』から感じ取ることができる。(リアルサウンド編集部)

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