Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

『なつぞら』厳格な開拓者・泰樹は、視聴者に安心感を与える“ツンデレおじいちゃん”に?

リアルサウンド

19/7/20(土) 6:00

 『なつぞら』(NHK総合)第16週「なつよ、恋の季節が来た」第95回にて、泰樹(草刈正雄)が新宿・風車に姿を現し、夕見子(福地桃子)の彼氏・高山(須藤蓮)を“抹殺”するシーンが話題となっている。

参考:泰樹の「抹殺!」パンチ炸裂 『なつぞら』なつと夕見子の盤石な信頼関係

 第16週より登場した高山は、新聞社が撮った写真の泰樹を見て、「開拓者の1世にしかない雰囲気がある」と身なりを真似するほどに憧れていた。「ジャズを聴きながらウイスキー片手にナッツでもつまんでいれば似合いそう」と膨らむ彼の妄想を、なつ(広瀬すず)が「普段は饅頭食べながらお茶飲んでますけどね」と打ち砕く。結果、高山は夕見子と喧嘩別れした直後に、風車の入り口で待ち受けていた泰樹に“抹殺”という名の鉄拳をくらい、「その髭も剃れ」と吐き捨てられる始末。まるで『北斗の拳』のケンシロウと雑魚キャラのような構図だ。

 高山が敬意を表していたように、泰樹は18歳の時に一人で北海道・十勝を入植した開拓者。男手一つで富士子(松嶋菜々子)を育て上げ、柴田牧場の牧場主となった。彼の開拓者精神は、なつだけでなく、農業で生きていくことを決めた天陽(吉沢亮)にも引き継がれている。

 偏屈で頑固な性格は、幼きなつを夜明けと共に働かせていた第1週「なつよ、ここが十勝だ」や柴田家の長男・照男(清原翔)となつを無理やり結婚させようとした第6週「なつよ、雪原に愛を叫べ」などに色濃く表れているが、一方で物語の要所、要所に笑いにも似た安心感を与える存在にもなってきている。

 第16週で富士子から「慣れてない人がいい」と後押しされ、夕見子を迎えに来た泰樹。これまで富士子や照男、砂良(北乃きい)が東京に来ることはあったが、柴田家の中で泰樹が一人で東京にやって来るというのは、なつも驚く出来事だった。実際に、第91回で高山を泰樹と見間違えたなつに、ナレーションで「なつ、じいちゃんがここに来るわけないだろう」というツッコミが入るほどだ。とんぼ返りで北海道に帰る泰樹に、なつが東京に来ようと思った理由を聞くと、「それはなつが……いや……」となつに会いたかったという本音が溢れてしまう。実の孫娘・夕見子に背中を向けて。

 泰樹のなつへの愛情は週を増すごとに大きくなっていく。第5話で、働き手として認めたなつが学校に行く際、泰樹も手を振り返したのは最初のあからさまな“デレ”と呼べるシーン。なつがアニメーターを目指し上京する第8週「なつよ、東京には気をつけろ」以降は、泰樹の会いたい気持ちも募っていき、なつの妹・千遥(清原果耶)が北海道にやって来る第14週「なつよ、十勝さ戻って来い」では、なつからの電話に一目散に受話器を取る。

 なつが東京から北海道を目指す間、千遥をなつに重ねて目一杯愛でるのも、泰樹の可愛らしいところ。「ここはなつの家だ。という事は、妹のあんたの家でもある。好きにしてればいい」と迎え入れられたことで、千遥はなつも自分と同じように幸せに育てられたことに気づく。あの頃のように、千遥にも働くことを勧める泰樹だが、そこに厳格な態度はなく、すでに笑顔が漏れてしまっている状態。なつの服を着て搾乳する千遥に、泰樹は幼少期のなつを思い出していたのだろう。千遥と入れ替わりで十勝に到着したなつに泰樹は、「お前がおらんようになって、ずっと寂しい。寂しくてたまらん」と素直な思いの丈を吐露。その後、再び東京に戻ってしまったなつからの電話に、すでに切れているにも関わらず、受話器を持ち上げ、なつの声を恋しく思う姿は、夕見子を迎えに東京までやって来た原動力にも繋がっている。

 そんな“ツンデレおじいちゃん”の泰樹は、甘党という面も可愛らしい。なつに告げる「それはなつが……いや……」というセリフの後には、「東京のパフェというのを食べたくなったんだ」と続き、夕見子とパフェを食べて帰ることになる。これは幼少期に、なつと雪月からて2人きりで食べたアイスクリームのオマージュでもある。第6週で照男との結婚を画策していたことに気づいたなつが「私を他人だと思ってるからでしょ」と涙を流し、深く落ち込む泰樹だったが、富士子からお汁粉を差し出されると途端にバクバクとたいらげる。デザートの早食いのシーンは、第8週「なつよ、東京には気をつけろ」第47回にて、雪月でクリームソーダを差し出される場面にもある。富士子と小畑家の面々が話し込んでいる間に、泰樹はクリームソーダを完食し、「これ、うまいな。もう一杯お代わりくれるか?」と平然とした表情で一言。どんな時も“好き”という一心にて裏表のない生真面目な態度が、クスッとした笑いと作品の空気感を和らげるいい塩梅になっている。

 短編漫画映画『ヘンゼルとグレーテル』の樹の巨人の後ろ姿は、泰樹の手を振る後ろ姿からインスピレーションを受けたものだ。なつからそのことを教えられた泰樹は、どんな“デレ”を見せてくれるのだろうか。そんな想像をしながら、これからも2人の相思相愛を見守っていきたい。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。

アプリで読む