Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

欅坂46 小池美波は、「アンビバレント」センターで新たな解釈を提示した? 一皮剥けたパフォーマンスに注目

リアルサウンド

20/8/12(水) 6:00

 改名が発表された先日の欅坂46の配信ライブ。発表そのものはセンセーショナルだったものの、ライブ自体は非常に充実した内容で、演出へのこだわりなどからも“チーム欅坂”の意気込みが存分に伝わるものだった。メンバーたちの表情もこれまでにないほど力強く、スキルはもちろんのこと、チームの連携や見せ方などあらゆる点で成長が感じ取れたというのは言うまでもない。

 その中で特に印象的だったのが「アンビバレント」でセンターに立った小池美波のパフォーマンスだ。今までは大役を引き受けた際に不安が顔に出てしまうこともあった彼女だが、同曲での堂々とした姿勢からは、どこか一皮剥けたような吹っ切れた印象を受けた。今回はそんな彼女のパフォーマンス面に注目してみたい。

「二人セゾン」でフロントからセンターに立った小池

 小池が最初にフロントに立ったのは、3枚目のシングルのときのこと。それまで後列が続いていた彼女が、いきなりセンターの隣の位置に抜擢されたのだ。楽曲は「二人セゾン」。過ぎていく時間への切なさや、道端に生える草木などへの意識も描いているこの曲。それまでの楽曲とも少し違った雰囲気の同曲の重要なポジションに彼女は立った。

欅坂46 『二人セゾン』

 結果、楽曲のやさしく柔らかなイメージをうまく引き出し、同曲はファンの間でも長く愛される作品となっている。「サイレントマジョリティー」や「不協和音」といった力強いメッセージ性を持った楽曲とは違った“もうひとつの一面”として、グループにとってこの曲の重要性は日に日に増していったように思う。そうした楽曲になり得たのも、彼女のような可愛らしい魅力を持ったメンバーが前列で存在感を発揮しているからに他ならないだろう。

 とはいえ、やはりセンターが作り出すイメージというのは強い。やがて同曲の代理センターを彼女が任されることになったのが2018年。小池はそのときの心境をインタビューでこう振り返っている。

「平手(友梨奈)が作ってくれた世界観をどう再現すればいいのか、しばらく悩みました。そんな時、TAKAHIRO先生(振付け師)が“小池のセゾンが観たくて選ばれたんだから”と言ってくださって。それで、”そうか、平手と比較するんじゃなくて、今までの自分と比較して、私のセゾンを作ればいいんだ”という気持ちに切り替えることができました」(参照

 彼女がセンターに立つ「二人セゾン」には、それまでテレビなどで見せていたものとはまたひと味違った世界観がある。彼女の言う「私のセゾン」という表現が象徴的なように、彼女特有のオーラや人柄から滲み出るものであったり、それまで後列にいた彼女だからこそ伝わるものがあった。そして、このとき気付けた意識の変化こそ、今回の「アンビバレント」に生かされているのだと思う。

“小池美波のアンビバ”

 「アンビバレント」という曲は、もともとは集団との距離感に悩む主人公の葛藤を描いた作品だが、センターに立つメンバーによってその意味合いに多少の変化が見られるのが面白い。小池の他にも多くのメンバーがセンターを務めていて、たとえば土生瑞穂がセンターに立った際には、グループの中で必死にもがく前向きなエネルギーであったり、それまで溜め込んでいた内面の叫びや、持て余しているパワーといったものが感じられた。(欅坂46 土生瑞穂、コンプレックスを武器に遂げた成長 パフォーマンス中心に魅力を考察

 一方で、小池はそれともまた違った解釈を見せる。カメラに向かって誘うような目をしたり、時に冷たい表情を見せたりする。カメラを掴んで放り投げてみたかと思えば、その直後に誘惑してみたりと、観ているこちらが“弄ばれている”ような感覚にさせられるのだ。

 言うなれば、我々が曲の主人公となり、〈一人になりたい〉のか〈なりたくない〉のか、その問いを突き付けられるようなパフォーマンスとでも言うべきか。とりわけカメラマンを突き放すように踊った辺りでの表情が秀逸で、純アイドル的なイメージを持っていた彼女が、はじめてここで妖艶さを覗かせ、「こっちへいらっしゃい」と言わんばかりに手招きする。視聴者は呆気にとられているといつの間にか彼女が誘う世界に引きずりこまれている……そこに小池というメンバーの、ひいてはこの曲の新しい魅力さえも発見したような気がした。

 今までにない世界観が提示された“小池のアンビバ”。グループの改名後に重要となるのは、彼女のように気持ちを切り替えて、新しいことにチャレンジする姿勢なのだろう。不安になることも多いだろうが、何事にもトライして我々に新しい姿を見せて欲しい。

■荻原梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む