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『永遠の門 ゴッホの見た未来』ジュリアン・シュナーベル監督が語る、ゴッホへのアプローチ

リアルサウンド

19/11/13(水) 10:00

 ジュリアン・シュナーベル監督最新作『永遠の門 ゴッホの見た未来』が、全国公開中だ。本作では、世の中で認められず、近しい芸術家たちとも真っ当な人間関係を築けず、常に孤独の中に生きるフィンセント・ファン・ゴッホと、彼が唯一才能を認め合い、心の内をさらけ出すことのできたポール・ゴーギャンとの出会いと共同生活の破綻、そしていまだ多くの謎が残る死を描く。主人公ゴッホを、第75回ヴェネチア映画祭で最優秀男優賞に輝き、さらに第90回アカデミー賞では主演男優賞に初ノミネートされたウィレム・デフォーが、ゴーギャンをオスカー・アイザックが演じる。

参考:ほか撮り下ろし写真はこちらから

 リアルサウンド映画部では、画家としても活動するシュナーベル監督にインタビュー。ゴッホを題材に取り上げた理由、デフォーとアイザック、芸術への思いについてまで語ってもらった。

ーーゴッホは非常にポピュラーな存在です。なぜ、今改めてモチーフとして取りあげることにしたんでしょうか?

ジュリアン・シュナーベル(以下、シュナーベル):君の言う通り、ゴッホは歴史上で最も取りあげられている画家かもしれない。みんな自分がゴッホのことをすでに知っていると思っている。でも、そんなことはありえない。だから、僕は、あえてゴッホに対して違うアプローチをとった。自分たちでゴッホという「像」を意識的に作り上げたんだ。彼が書いた手紙や、私が見た彼の絵画の印象、彼とゴーギャンの関係についての資料を元にして、彼だけに限らず、本作に映っている絵画も作り上げた。私は画家でもあるから、絵画のことをよく知らない人が作ったものとは違うゴッホになったと思う。

ーー本作を作ったことで、改めてゴッホについて気づいたことはありますか?

シュナーベル:今回の制作を経て、ゴッホから「今までやらなかったことをやってもいい」という許可をもらったような気がする。ゴッホには「ひまわり」という有名な絵があるけれど、その絵が何枚も描かれているんだ。すごく面白いと思ったし、僕は今でもデフォーが演じたゴッホをモデルにした、ゴッホの自画像作品を何枚も描いている。今、改めて、ゴッホのインスピレーションを探っているし、自分がやってこなかったことに挑戦しようとしている。

そういう意味では、まだ映画は終わっていないとも言えるね。映画というのは記録された部分だけじゃなく、その前や後もあるんだ。まさに『永遠の門』というタイトルみたいに永遠に続いているのかもしれない(笑)。映画を観終わって映画館から出ても、自分の心の中に生き続ける。それってアートの目的だよね。映画でも絵画でも、物理的なものを扱ってできたものが、精神に取り込まれていく……そのアートの価値に改めて気づいた。本作を観て一週間ほど経ってから電話してきてくれた人が、「何かが変わったみたい」と言っていたんだけど、それを聞いた時に作品の成功を実感したね。

ーー監督自身では、絵画と映画で、どのようにアウトプットを分けているんでしょうか?

シュナーベル:静止しているか否かという手法の違いしか僕は感じていない。そして、どちらも孤独な行為だということ。一度、絵を映画に、映画を絵にしようとしたことがあるんだけど、結果としてその両者の構造や意味、与えてくれる感覚は僕には分けられなかった。どうやって、何を語るか……結局それが大事で、手法に関して意識したことはないね。

ーー本作でゴッホを演じたウィレム・デフォー、ゴーギャンを演じたオスカー・アイザックとの作業はいかがでしたか?

シュナーベル:彼らはとても温かくて、寛大な俳優たちだった。「お仕事」じゃなくてやりたいからやってくれたんだ。アイザックは、『スター・ウォーズ』の宣伝活動より、こちらを優先して撮影に来てくれた。それってすごい選択だよね。彼はそれほどこの映画に強く惹かれていたんだ。彼らのことは信頼していたから自由にやってもらって、僕らスタッフはそのための場所を提供すること、そしてその中で起きる一つ一つを見逃さないことだけに注意していた。

ーー芸術は、不遇に終わったゴッホの時代に比べればとてもポピュラーなものになりました。

シュナーベル:芸術というのは、芸術家が止むに止まれず作ってしまうものだと思う。お金持ちになりたいという欲望から偉大な芸術が生まれるとは思えない。ゴッホが有名になりたかったかと聞かれたら、彼は怒るだろう。彼は、自分のやり方で、自分の世界を表現したかっただけだ。後になって観客が追いついてきた。その点、僕はすごくラッキーだ。こうして作品を観客と分かち合うことができている。これはゴッホにはなかったことだ。だけど、彼にはゴーギャンがいた。アンデパンダン展で、ゴーギャンから作品の交換を提案されたことは彼の人生に大きな感動を与えた。尊敬している人が、自分が見ている世界に同意してくれるというのは芸術家にとって最高なことだと思う。

(取材・文・写真=島田怜於)

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