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THIS IS JAPANが明かす、新曲「new world」に昇華した“バンドの楽しさ”「自分らしさを思い切って出せた気持ちよさがある」

リアルサウンド

20/7/29(水) 12:00

 今年2月、「Not Youth But You」をKi/oon Musicより配信リリースしたTHIS IS JAPAN。その後も配信曲はあったが、ようやくCDで届くメジャー第1弾シングルが『new world』である。TVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』(TBS系)第2期エンディングテーマとなるこの曲は、ハードボイルドなのにキャッチー、男臭いけれど妙にコミカルという、THIS IS JAPANの多面性をフルに活かした新境地となっている。リアルサウンドでは2018年の『FROM ALTERNATIVE』から彼らを追いかけているが、今の4人は一番のびのびとバンドを楽しんでいるように見える。現状と今後の展望について、メンバー全員に話を聞いた。(石井恵梨子)

「メジャーに行くなら行くで、このままTHIS IS JAPANをやるだけ」

一一今回はメジャーからの1stシングル。みなさんの世代って無邪気にメジャーに憧れたりデビューを目指す感覚があまりない印象もあるんですが、実際はどうなんでしょうか。

杉森ジャック(以下、杉森):そうですね、確かに。やっぱりインディーズ出身のまま、いろんな人の目や耳に触れていくバンドもたくさん見てきたんで。メジャーに行って全部上手くいくとは当然思ってない世代だとは思います。

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小山祐樹(以下、小山):まさかそんなことにはならない、っていうところから始まってるので。もちろん高校生でバンド始めた頃は、めちゃくちゃ先のこととしてなんとなく夢見てたところもありますけど。

水元太郎(以下、水元):でもいざ話が来たら、びっくり、のほうが大きかったですね。もともと「絶対メジャーデビューしてやるぞ」と思ってここまで来たわけでもないし。地道に進んできた先に、まぁ誰かが「通過点」って言ってたけど、途中にメジャーデビューっていう門があった感じで。

一一その門をみんなでくぐろうじゃないか、と思えた決定打は?

かわむら:うーん……我々も「メジャーに行くのが一番カッコいいわけじゃない」って思ってた部分が正直あって。もちろんメジャーが悪いんじゃなくて、我々みたいなバンドが、っていう意味ですけど。ただ、これは前のインタビューでも話したと思うんですけど、閉塞感っていうのはあったんですね。メジャーって言葉はキャッチーですけど、とにかく新しいこと、何か可能性のあることなら、それは何であれ全然受け入れようかなって思ったんですね。「メジャーはとにかく良くない」「やめといたほうがいいっすね」とか言ってるのはそれこそ一番ダセェなと思って。「じゃあやろう、やってみよう」って感じでしたね。躊躇う理由はなかった。

杉森:うん。そこはみんな共通してると思う。メジャーに行くなら行くで、このままTHIS IS JAPANをやるだけだし。THIS IS JAPANがやることが広がる、広げられるチャンスのひとつとしてメジャーを使えたらいいなって。

一一ただ、いざデビューというタイミングで、コロナが来ちゃいました。

杉森:そうなんですよ、ほんと。初のフジロック(『FUJI ROCK FESTIVAL』)が大雨だったみたいに(苦笑)。まぁライブができないフラストレーションはありましたけど、こういう状況でバンドが最大限できることを探してみようと、それを楽しんでいくのは別に悪くないなっていう意識でした。直接会う機会は減ったけど、ZoomとかLINEもあるし、粛々と曲作り継続してましたね。

小山:あと、週末のライブが当たり前になってたんで、そこから引き離されたことで「ライブって何のためにやってんのかな?」ってけっこう考えましたね。今は配信ライブもあるけど、見てても「これはライブの代わりになるのかな?」「やっぱ根本的に違うんだな」って思ったり。ライブの再現、みたいな感じだとそこまで面白いものにはならなくて。配信でやるとしたら、また別のものにしたほうがいいんだなって。そういうことはこの数カ月でけっこう考えましたね。

一一実際、7月7日の無観客配信ライブ『NOT FORMAL vol.12 ~THIS IS JAPAN ONLINE ONEMAN GIG 2020~』も面白かったです。リアルタイムのVJがあったり、新しいトライが満載で。

杉森:そう。せっかくデビューしたタイミングなのに「今やることない」って止まっちゃうのはもったいないから。ディスジャパのイズムじゃないですけど、「やってみなきゃわかんないけど、とりあえずやってみよう!」の精神っていうのは今回も発揮されたのかなと思います。焦って「とにかく何かやらなければ!」じゃなくて、「現状これできるんだし、じゃあやろうか。やんない理由はないでしょ」って感じで。

一一今は余裕があるんじゃないですか。ディスジャパは何をするのがいいか、みんな少し客観的に見ているのかなと。

小山:余裕……確かに余裕があるって言われたらあるかもしれないですね。「うわ、ライブできない、ヤバい!」とは全然思ってなかったですし。ライブができないのは事実で、そこを無理にやろうとしてもしょうがないから、できない状況でTHIS IS JAPANを発信源に何かできるのか、けっこう冷静に考えてた。

一一余裕っていうのは曲にも感じることで。前作の『WEEKENDER』(2019年)は「迷ってるんですか?」みたいな感想が先に来たんですが、でも今年に入って発表された曲たちは「純粋に楽しもうとしているな」という感触がある。

杉森:そうですね。これは僕個人の話ですけど、確かに『WEEKENDER』の頃はいい意味でも悪い意味でも「どうしよう、なんとかしてぇな」って躍起になってたんです。ただ、考えすぎてバンドが停滞したり、本来の楽しさを忘れちゃうくらいなら、もう先のこと考えても仕方ないなって。結局わかんないんだし、じゃあ目の前にあるもの、そこでできることを全部やりきっていこう、みたいに切り替えたところはあります。

かわむら:うん。そこは杉森の問題なんで俺たち3人はそんな変わってないんですけど(笑)。ただ杉森が変わったのはわかる。吹っ切れた印象はあるよね? 水元よく杉森のお話聞いてたもんね?

水元:あー、最近は聞かなくて済むから。吹っ切れたんでしょうね。

一同:(笑)。

かわむら:良かった良かった。やっと吹っ切れた。

杉森:吹っ切れた……みたいです!

一一前の取材で、自分の青春を叩きつけた『FROM ALTERNATIVE』(2018年)がそこまで響かなかったことで、杉森さんひとりが「オルタナ残党兵」みたいになってしまったと言ってました。その長いトンネルをようやく抜けることができた?

杉森:うん……まぁトンネルは続いてるのかもしれない。確かに終わってないんですけど、前に進もうとしてる。トンネルの先を考えて落ち込む時間がもったいねぇな、っていう感じ。この4人は何か使命を持って成し遂げるためとか、そんな大袈裟な志で組んだわけじゃなくて。「バンドやってる時間が生きてて一番最高じゃん」みたいな、シンプルな動機で始まってるんで。それを思い出していってる感じはあります。「HEARTBEAT」(5月にリリースされた配信シングル)とかも『DISTORTION』(2016年)の後にはできてた曲で。

一一あ、そんなに古い曲?

杉森:『DISTORTION』と『FROM ALTERNATIVE』の間くらいに録った曲。なんかあっけらかんとした、飄々とした強さを持ってる曲で。コロナ禍の状況でも何かリリースしたいなと思って、過去の曲聴き返したら、これは自分たちでもちょっと元気が出たというか。

小山:いい意味で何も考えてない時に作った曲で。その何も考えてない感じが今、いろいろ考えなきゃいけない時に聴くと逆に良かった、みたいな。

一一では「new world」はいつ頃できた曲なんでしょう。

杉森:2019年のアタマから元となる曲はあって。で、その後に『ノー・ガンズ・ライフ』のエンディングのお話をなんとなくいただいて。当時は仮歌とワンコーラスしかない状態だったから、その話を受けつつ、もう一回メンバーでブラッシュアップして完成させた曲ですね。

一一アニメの世界観は、この曲にかなり大きく入っているんですか? 

かわむら:そうっすね。自分はもともとアニメがすごく好きで、アニメのエンディングテーマっていうのがどれだけ重くて、どれだけ影響あるかがわかっているつもりではあったので。「とにかくここでTHIS IS JAPANらしさを」っていうよりは、ちゃんと物語とバンドの世界観が並び立って、そこに意味がある歌を考えなきゃいけないなと思って。

一一テーマソングの重さという話、もう少し詳しく聞きたいです。

かわむら:これはバンドの目線じゃなくてアニメのファン目線の話ですけど、アニメ見てる時、エンディングテーマって、変な話、ほとんど知らない人が歌ってることが多かったりするんですよ。でもそのアニメを見てる想いに一番リンクするのがオープニングテーマとエンディングテーマだし、それが有名な人か無名な人かどうかは全然関係ないんですね。で、もちろんアニメから興味を持って、そこからバンドごと好きになるパターンも少数あるのはわかってますけど、少なくとも一曲のエンディングテーマが見た人の記憶にすごく残るっていうのは事実だと思うんで。そこはすごく気を使った部分でしたね。

「バンドやってる時が一番生きてる」

一一どういうところがいつもと変わりました?

かわむら:普段だとさすがに杉森も言わないような言葉もサラッと言えるんです。たとえば〈引き金引いて〉とか、ほんと直接的な言葉。そんな命のやり取りは普段我々はしてないんで(笑)、他の曲で書くと嘘くさいじゃないですか、銃がどうのって。でもアニメの登場人物たちは実際そういう世界の中で生きてて、そういう言葉を使うのが当たり前だし、むしろこの言葉でも足りないくらいだなって。そういうことは考えましたね。

小山:アレンジもそう。かわむらさんの話と同じですけど、ギターソロの手前にモロに銃声を入れてて。普通だったら絶対入れないと思うけど、でもこの曲だったらもっと遊んでもいいかなと思えたし。

杉森:リハーサルの時「鉄パイプを拾ってきてくれませんか?」って言われたもんね。

小山:実現しなかったんですけどね。

杉森:そんなに落ちてねぇわ、って(笑)。でもかわむらと小山がそうやって遊び心を持って進めてくれたこともあって、僕も普段あんまりやらないラップパートとかで自分らしさをバツーン! って出せたり。攻撃性っていうとアレだけど、突破力とか推進力、サッカーでいうとフォワードみたいな、そういう自分らしさを思い切って出せた気持ちよさはありますね。

かわむら:サビで全員歌うとかも、普段はやらないんですけど。「これもやっていいでしょ」「いいじゃん、いいじゃん」みたいな、プラスのエネルギーが大きかった気がしますね。

一一掛け合いで〈純情〉って叫んでる箇所は笑っちゃいましたね。

かわむら:あれめっちゃオモロくないですか? 僕はあれ一番に持ってきたかったんですけど、みんなに止められて二番になった(笑)。

杉森:小山1対メンバー3人の掛け合いって初だけど、そこで出てくるのが〈純情〉って。

かわむら:あれがいいんだよ。気に入ってますね。『ノー・ガンズ・ライフ』って、戦闘中にも軽口叩いたり、けっこうコミカルなシーンがあるんですよね。生き死にの話、ハードボイルドな話ではあるけど、ちゃんと茶目っ気はあって。それは我々のバンドにも共通する部分だなって勝手に思ってて、それを強調した結果が〈純情〉になった(笑)。

杉森:ライブでやっても新しかったですね。今までにない筋肉の使い方っていうか、ジェットコースター乗ってるみたいなドキドキ感があって。バンドの一体感も含めて、新しい楽しみ方ができるなと。

一一いろいろトライを繰り返しながらも、まずは「バンドを楽しむぞ」みたいな空気がちゃんとあるのがいいと思います。

杉森:結果的にそういう曲になりましたね。THIS IS JAPANはもう9年くらいやってるし、いろいろ考えて「こうしたい、ああしたい」って悩みながらやってきて。でもコロナ禍でなおさら思いましたけど、結局「バンドやってる時が一番生きてる感があるな」っていうことで。メンバー全員思ってたんじゃないかな。それを純粋に曲に変換できるようになった時期なのかなって思います。

小山:うん。杉森さんだけじゃなくて、僕は僕でいろいろ考えすぎてたところがあったと思うし。でも……なーんか疲れちゃったのかもしれない。けっこう今、考えてる人のほうが多い気がするんですよ、世の中見てもバンドの人たち見ても。それを見ることで僕もたぶん疲れてきて。逆に何も考えないでやったほうが新しいんじゃないかって、そういう次元に達してる気がする。

一一小山さんは、何に対して悩んでたんですか。

小山:なんか……「僕らを誰が見て、どう思うのか?」っていうのをしばらく考えてたんですよね。でも結局それって予想できない。誰が見てくれるのか、っていうのは狙ってやるものじゃないですよね。精一杯自分の好きなことやって、ここに誰が来てくれるのか、あとは待ってる側でいいんだろうなって。

一一ディスジャパは人によって見え方が違いますから。たとえば私は「ナンバーガールが好きそうなオルタナバンドだな」と思ったけど、友達に勧めたら一言「ロックンロールだね!」って。あと年配の知人は「The Clashみたいだ」って感想だったり。全然違うイメージが4人の音から引き出されていく。

杉森:そうっすね。それはそうだと思う。

小山:結局自分たちでもわかんないんですよね、何やってるのか、って。

一一それを無理に定義しなくてもいい?

小山:うん。「The Clashが好きです」ってやるのも何か違うし、「ロックンロールです」って言い切るのも違うし。それはこっちで限定しなくていいのかな。

杉森:もろちんジャンルとかルーツに沿って、それを発展させていく美学もすごく憧れるし好きだけど。でもこういう4人を集めたからには「もうTHIS IS JAPANをやるしかないな」っていう、ある種の吹っ切れ方はありますね。

一一良いことじゃないですか? そう言って今楽しめるんだったら。

杉森:そうっすね。うん。もちろん聴いてくれる人のこと考えて曲を作っていくんですけど、入り口にあるのは「誰かのために」じゃなくて「俺たちがやりたいからやってんだろ」。それがスタートなので。

一一次の展開も楽しみです。今、新曲はどれくらいあるんですか?

小山:レコーディングしてないものも含めてたら……50曲?

水元:もっとある。60曲近くある。死ぬほどある。

杉森:死ぬほどあるけど、まだ、もっと作ろうって感じですね。

一一すごい。とにかくいろいろやりたいってこと?

杉森:『WEEKENDER』を経て、っていう話がさっきから何度か出てたと思うんですけど、バンドとして新しいフィールドに立って、これから何やるかを見極めるためにも、それこそ結成当初みたいにどんどん曲出していこうって。その中から、今のTHIS IS JAPANの実像が見えてきたらいいなっていうのはありますね。

一一答えとかテーマありきで曲を出すんじゃなくて。

杉森:そうです。最初から完璧を狙って作れるほど器用じゃないし、ガムシャラにやってみれば何か出てくるんじゃないかって、その体力はあるんで。あとメジャーって、自分たちのクリエイティビティをより発揮できる場所として用意されたものだと思うんですよ。こういう環境にいるからには言い訳はやめようと。もう自分たちの自力を信じきって、やれることを完遂して、THIS IS JAPANをたくさんの人に知ってもらいたいし。あとは何よりバンドに対しての夢とか、「やっぱバンドが生きてて一番楽しいわ!」みたいなパワー。俺たちが「バンドってつまんねぇな」って思っちゃうことが一番格好悪いと思うんで。こういうバンドでここまで来たんだから、最後までTHIS IS JAPANとして飄々と楽しんでいこうと思ってます。
(石井恵梨子)

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