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Suchmos、配信ライブで『THE ANYMAL』以降のモード引き継ぐ新曲披露 リラックスした雰囲気も伝わる内容に

リアルサウンド

20/7/21(火) 18:00

 7月19日、初の配信ライブ『~LIVEWIRE Suchmos From The Window~』を開催したSuchmos。バンドにとって8カ月ぶりのワンマンを迎えるにあたって、アーカイブなしの一発勝負のスタイルを採ること、初披露の新曲のみでライブを構成することが事前に発表されていた。この状況下でもなお、Suchmosは攻めの姿勢を貫いている。

(関連:Suchmos、SUPER BEAVER、ROTTENGRAFFTY……ライブハウス拠点にするバンドの大舞台収めた映像作品

 LIVEWIREとは、スペースシャワーが立ち上げたオンラインライブハウスのこと。配信ライブイベントの企画や撮影、アーティストグッズのEC販売などのサービスが同社のキュレーションの元、ワンストップで展開される。

 LIVEWIREの公式サイトには「クリエイティブなアイディアへのチャレンジ、高い音質と熱気を伝える映像を追求します」とのメッセージがあり、そこからは、生のライブ体験の下位互換的なものではなく、今だからこその新しい音楽体験を作り出そうという意志が読み取れる。そういう部分がSuchmosというバンドの姿勢と共鳴したのだろう。

 今回の配信ライブは、山田健人が映像演出を担当した。ライブDVD/Blu-ray作品『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』に収録されたドキュメンタリーフィルムの監督を務め、「STAY TUNE」や「In The Zoo」をはじめとしたMVを手掛けるなど、これまでSuchmosが発表してきた多くの映像に携わっている人物。メンバーのどういうところがカッコいいか、どういう光景が画になるのかをよく理解している人物ともいえる。

 定刻を迎え、初めに映されたのは古いSF映画(山田のツイート曰く、1960年に公開されたイタリアの映画『Assignment: Outer Space』)で、バックでバンドが音出ししている。しばらくすると、メンバーを捉えたモノクロの映像に切り替わり、手書き風のライブタイトルが表示された。そうして演奏がスタート。

 画面の上下左右には黒い帯がかかっていて、画角が狭められている。画面の色合いは、モノクロとセピアの2種類を使い分ける方式だったが、曲ごとに異なるエフェクトが重ねられていて、細かなこだわりが感じられる。フィルム映画のような質感の映像で、曲が始まるたびに、曲名・バンド名を表示するレトロなフォントのテロップ+「LW」というLIVEWIREのロゴが登場する。ここは本当に令和の日本か? と言いたくなるほど渋い映像だ。

 メンバーはラウンジのような場所にいて、全員が中央を向くようなフォーメーションになっていた。『From The Window』のライブタイトルにあるように、バンドがスタジオに集まって音を合わせていて、それを観客(視聴者)がドアの小窓から覗いている”というシチュエーションをイメージすることができる。映像作品として作り込むことに重きを置くならば、あえて生でやる必要はないのでは? と一瞬思ったが、これをあえて生でやることの面白さ・ロマンもあるし、“窓から覗く”というシチュエーションだからこそ同時性が大事になってくるのだろう。

 1曲目のアウトロ中にYONCEが「どうもご無沙汰です、Suchmosと申します。濃厚なミュージックと濃厚な接触しようぜ、よろしく!」と投げかけていたのと、終盤でのMCを除いては、基本、観客へのアピールはない。音が止んでいるときは、煙草をふかしながらメンバー同士談笑している。メンバーはマイクに向かって喋っているわけではないから、喋っている内容はよく聞こえないが、仲間同士楽しく音楽をやっているんだという温度感は伝わってきた。

 そして、肝心の曲と演奏について。『THE ANYMAL』以降のモードを引き継いだサイケロック路線、というのが新曲群に対するざっくりとした所感だ。しかし『THE ANYMAL』のときほど張り詰めてはいない。演奏中のリラックスした雰囲気から、今、バンドは肩の力を抜いて好きなことをやれているのだということがーーつまりとても良い状態だということが伝わってきた。

 「サルスベリ」のようにヒッピー音楽寄りの曲もあれば、「Underworld」のようにメロウで幻想的な雰囲気のある曲もある。分かりやすくサビがあるのは「ナイトホークス」ぐらいで、あえて言うならこの曲が一番歌謡曲的かもしれない。「Stand By Mirror」や「Magic Time」辺りは、海岸をドライブしながら聴くのに合いそうで、家にいる今の状況をもどかしく感じる。「Dronedrome」は、4分の4拍子と8分の6拍子が同時進行している曲で、例えば、ボーカルとベースは4拍子なのにギターは6拍子、という場面があったりする。一番驚いたのはドラム。手と足で違う拍子を叩いて(踏んで)いるときがあり、よく発狂せずに演奏できるよなあ、というレベルで驚嘆した。「Ghost」はキーボードによるかわいらしいメロディ(電車の発着音のようだ)から始まるものの、スティックカウント後のイントロから雰囲気が一変する不思議な曲。スロー~ミドルテンポの曲が続くなか、7曲目の「To You」はこの日唯一のアッパーチューンで、歌詞も含めて超ロックンロール。これはテンションが上がらざるを得ない。願わくば生で浴びたい。なお、今回のライブでは、KCEEがDJをしない代わりにギターを弾いていた。YONCEもギターを弾くときはギターが3本になる編成だ。

 最後の「Dizzy」を終えたところでちょうど1時間。ここで放送が終了した。誰にも媚びない。時流に流されない。ただただ、自分たちがカッコいいと思うことをやる。イカしたコンテンツを制作する。そうして活動してきたSuchmosだからこその「映像作品」と呼びたくなるようなライブだった。こういう姿を見せることがファンに対する「相変わらず元気でやっているぞ」という報告になる。そのことをバンド側も十分に理解しているのだろう。

 今回披露された新曲が次の作品に収録されるのかは分からない。また、次の作品がいつリリースされるのかも分からない。が、新曲のみのセットリストにはワクワクさせられっぱなしだったし、とにかく音が良かったので(開演前にヘッドホン着用を推奨するアナウンスがあったのも納得)、例えば“新譜発表日前にいち早く収録曲を披露するパーティー”のように、今後も続いていったら面白いのではないだろうか。

 ということで、Suchmosのみなさん、その方向で検討していただけませんか? こんなにも図々しいことを言いたくなるほど、新しく、楽しい体験だった。(蜂須賀ちなみ)

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