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BTSの躍進にミックステープが果たした役割 Tempalayなど愛聴するRMソロ作を中心に考察

リアルサウンド

18/10/11(木) 8:00

 10月2日、K-POPアイドル、BTSのTwitterアカウント(@BTS_twt)で、メンバーのRM(ex.Rap Monster)が日本のバンド・Tempalayの「どうしよう」を紹介。このツイートは日本の音楽ファンの間でも大きな話題となった。YouTubeにアップされている同曲のMV再生回数は、それから一週間弱で約15万6千回から約41万回(10月8日現在)へと大きく躍進。まさに“事件”だった。

(関連:BTS(防弾少年団)、ファン=ARMYはなぜ団結力が強い? アイドルとの“適度な距離感”を考える

 RMはこれまでも、「#RMusic」のハッシュタグでARMY(BTSのファン)におすすめ音楽を紹介してきた。ハッシュタグをながめてみると、ヒップホップからポップス、インディロック、ジャズまで様々な音楽が並んでいる。日本のアーティストではX JAPANやm-flo、宇多田ヒカルのほか、KOHHやShing02といったラッパーの名前もある。

 そんなRMは、改名前の2015年、Rap Monsterとしてミックステープ『RM』をリリースしている。この一件で音楽好きとしての一面を覗かせた彼のソロ作から、BTSのキャリアを切り開いたミックステープ文化を見てみよう。

 『RM』は、BTSの中心人物であり英語にも堪能なRMが、フリー配信のミックステープという形式でリリースしたソロ作。同作はRMの考えるヒップホップとはなにか、その理解を伝えるパッケージだ。

 リリックのテーマは主に、「孤独」と「自分らしくあること」。ラッパーとしての決意がみなぎる「Voice」や、固定観念にとらわれず自分を表現することの重要性を説く「Do You」、孤独に満ちた生活と自身の内面をさらけ出す「Life」など、リリックの内容はとてもシリアスだ。アタッキーでスキルフルなラップも相まって、聴き応えがある。

 また、ミックステープという形式そのものも重要だ。ミックステープは、現代のヒップホップではアルバムと並ぶ重要な媒体であり、シーンを推進する強力なプロモーションツールとして発展してきた。この形式で作品を発表するということ自体、ヒップホップのフィールドに立とうという意思表示なのだ。既存の曲からビートを拝借する「ビートジャッキング」の手法が使われているのも、同様の文脈を抑えたものだろう。

 BTSのメンバーはほかにも、SUGAが2016年にAgust Dとして『Agust D』を、J-HOPEが2018年に『Hope World』をリリース。『Agust D』は、『RM』とは異なり、トラックまでを自身が中心になって手がけたハードな作品。一方『Hope World』は四つ打ちのビートを取り入れたポップな一作だ。この3作品のリリースの結果として、『RM』はアメリカの音楽メディア・SPINで「2015年のベストヒップホップアルバム50」に選出。『Hope World』はアメリカのBillboard 200で最高38位を獲得。それに呼応して、SUGAの名前もビルボードの注目アーティストランキングに登場した。

 こうした実績から、BTSの躍進にミックステープが果たした役割は少なくないだろう。日本でもラッパーがミックステープを発表する例は近年枚挙に暇がないが、メジャーに活躍するアイドルユニットからミックステープが連発されるようなことは珍しい。今夏、SKY-HIがミックステープを発表して話題を呼んだが、フリーダウンロードの期間が限定されているなど、内容以前に日本のメジャーレーベルという環境ゆえの制限を感じさせるものだった。

 これらの作品は、BTSからは窺い知れない一面や音楽性を楽しむことはもちろん、まだミックステープについて深く知らないというリスナーにとっては、いまやヒップホップ以外のジャンルにも波及している“ミックステープ文化”に触れる機会でもある。ちょうど、今夏には小林雅明『ミックステープ文化論』(シンコーミュージック・エンタテイメント)という好著が出版されたばかり。あわせておすすめしたい。(imdkm)

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