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鬼邪高・村山の愛され力! 山田裕貴の変幻自在なキャラクターを作り上げる実力と人間性

リアルサウンド

19/10/11(金) 6:00

 現在公開中の映画『HiGH&LOW THE WORST』でSWORD地区の“漆黒の凶悪高校”鬼邪高校の定時制番長・村山良樹を演じている山田裕貴の変幻自在ぶりが話題になっている。

 山田と言えば、2017年に劇場公開された映画だけでも13作品(『闇金ドッグス5-7』、『HiGH&LOW THE MOVIE2-3』、『破裏拳ポリマー』、『トモダチゲーム』シリーズ、『二度めの夏、二度と会えない君』、『亜人』、『あゝ、荒野 前篇・後篇』、『デメキン』)を数え、不良高校生から、青春もの、刑事など演じるキャラクターも多岐に渡っている。筆者が過去にインタビューした際には、自身も「どんな役でもやるというのが僕の強みでもある」(参考:https://www.crank-in.net/interview/69023/2)と語っていた。

【写真】山田裕貴と吉沢亮の仲良し2ショット

 そんななかでも2015年に出会った『HiGH&LOW』シリーズの村山というのは山田にとっても、非常に思い入れの強いキャラクターのようで、役作りにも気合が入っていたという。山田演じる村山は、無法地帯と化していた極悪高校・鬼邪高校でトップに立つための「100発の拳に耐える」荒行をクリアした唯一の番長。その耐久力と忍耐力、さらに喧嘩の強さは、どんな不良でも一目置く男だ。

 しかし山田は、紋切型の“不良”ではつまらないと感じ、緩急入り混じったキャラクターを作り上げた。圧倒的に強いのだが、どこか抜けている部分もあり、相手に隙を与える余裕もある……そんな人物を、現場でも試行錯誤しながら立体化していった。山田自身も「まさかこういうキャラになるとは思っていなかった」と言うようにシリーズが続いていくなかで、どんどんキャラクターが膨らんでいったというのだ。アッカンベーをしたり、ジャジャーンと登場音楽が流れたりと、最強にもかかわらずお茶目という独特の不良感は多くのファンを引き寄せた。

 一方で、同時期にNHKの連続テレビ小説『なつぞら』では、広瀬すず演じる主人公・奥原なつの友人・小畑雪次郎を演じた。雪次郎は、演劇と家業である菓子職人という二つの夢に真摯に向きあうピュアな青年。山田は壁にぶち当たりながらも、前に進む雪次郎を瑞々しく演じ、多くの反響を呼んだ。朝は純情青年、夜(『HiGH&LOW THE WORST』公開前に日本テレビ系ドラマ『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』が深夜に放送されていた)はカリスマ不良という極端なキャラクターが同日に楽しめた。朝晩続けてみると、山田の引き出しの多さを実感する。

 いろいろな役が山田に舞い込むのは、俳優としての実力の高さは大前提だが、彼の持つ人柄にも大きな要因があるのではないだろうかと感じることが多い。『万引き家族』の大ヒット御礼舞台挨拶で、是枝監督が山田の起用理由について、信頼の置けるスタッフが山田を推薦してくれたことを明かすと「なるほどと思った。役に対して真っすぐ向き合う姿勢がいい」と評価。また、主演映画『あの頃、君を追いかけた』完成披露試写会の席では、座長として若手俳優が少しでも作品のなかで輝くようにしたかったと熱い涙を流す場面もみられた。

 自身に与えられた役を、より魅力的に輝かせようと真摯に向きあう姿勢、さらにそれが独りよがりではなく、作品全体としてプラスになるように考えられる目線。これほど頼もしい役者はいないのではないだろうか。作品のなかで、人物を演じるのは役者だが、衣装、照明、音響などさまざまな部署の力なくしてキャラクターは作り上げられない。「壁を作りたくない」とどんな人にでもフランクに接する姿勢も、幅広い役を演じる手助けになっているのだろう。

 以前から、多彩な役でファンを魅了している米国俳優ゲイリー・オールドマンのような存在になりたいと話していた山田。ウィキペディアで「あ、この役も山田裕貴がやっていたんだ」と思われることが理想だという。20代でどれだけたくさんの引き出しを増やしておくかで、30代以降が決まると話す人もいるが、その意味では来年30歳を迎える山田のこれからの俳優人生が、より楽しみに感じられる。

(磯部正和)

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