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King & Prince「I promise」、“5つの恋物語”が変えた楽曲の印象 アイドルの等身大を映し出す、ドラマ仕立てのMV

リアルサウンド

20/12/14(月) 12:00

 King & Prince待望の6thシングル『I promise』が、12月16日にリリースされる。彼らにとって初のウィンターラブソングである表題曲は、セブン-イレブン2020クリスマスのCMソングに起用され、早くも今年の冬を彩っている。

 今回は「Dance ver.」「Story ver.」と二通りのMVを制作。夜景をバックに撮影された「Dance ver.」では、跪いて手を差し出す“プロポーズ風ダンス”で、カメラの向こうに愛を誓う。あまりにも決まるそのさま、彼らはやはり時代の王子様だ。

King & Prince「I promise」Music Video-Dance ver.-

 グループ初の試みであるドラマ仕立てのMV「Story ver.」では、個々がドラマや舞台で活躍するKing & Princeの、役者としての豊かな表現に注目が集まる。

 相手役の女性の顔をはっきりと写さない演出により、彼らの恋人になったかのような気持ちが味わえる本作。アイドル「King & Prince」ではない、ただひとりの男性としての、まっすぐな表情が映し出されている。

King & Prince「I promise」Music Video -Story ver.-

5つの恋物語が変えた「I promise」という楽曲の印象

 MV冒頭、平野紫耀がずぶ濡れで駆け込んでくる。寒さか動揺か、息を切らすたびこぼれる声が震えている。目を伏せると、ゆっくりと開いた掌に2つの指輪。ドラマティックなイントロが流れるなか、平野が見つめた先には……。

 今年『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)にてSexy Zone・中島健人とともにW主演をつとめた平野。その強い瞳で、切なさのすべてを語る男だ。雨など構わず全力で走るシーンに、平野の歌声が重なる。胸が締めつけられるように痛む。

 バイクで帰宅し、シューズボックスの上にヘルメットを置く神宮寺勇太。隣に並んだもうひとつのヘルメットを手に取り、しばし見つめると、思い切ったように部屋を飛び出した。

 かつてバイクの後ろに恋人を乗せて走った、キラキラ輝く夜道をひとり走る今夜。大切そうに載せたヘルメットとともに、どこへ向かうのだろう。

 神宮寺は現在、帝国劇場にて舞台『DREAM BOYS』に出演中。岸優太とともに、昨年に引き続いての抜擢だ。ジャニーズJr.時代からドラマにも出演しており、グループ内でも演技経験は豊富。MVではひとりきりで演じる難しいシーンが多いなか、切なさと葛藤を表情で語る。

 永瀬廉は、主演映画『弱虫ペダル』で演じた冴えない高校生とはまるで異なる表情を見せる。姿見に向かいネクタイを締め、朝の支度をする姿には、リアリティのある色気が漂う。

 恋人に呼び止められ、顔を上げる仕草。瞳を伏せ、みるみる曇る表情。空港で、旅立つ恋人を見送る精一杯の微笑みと、そのぎこちなさ。自分を納得させるように小さく頷きながら、歩き出す姿。

 ひとつひとつの仕草に、隠しきれない寂しさや戸惑い、恋人への想いが込められている。実にナチュラルで、繊細な芝居だ。

 現在『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系)での好演が、一般視聴者層からも高い評価を得ている髙橋海人。少年と青年のはざまの純粋な美しさを失わない彼の恋は、本作中でもどこかファンタジックに描かれている。

 恋人へ向けたあどけない笑顔、突然の出来事への戸惑い、それでも諦めない意志の強さ。髙橋の最大の魅力は、その唯一無二の声だと個人的には思っているのだが、感情のすべてを語る正直で大きな瞳も、観る者を惹き込んでやまない。

 MVを担当した月川翔監督とは、映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』にてひと足先に出会いを果たしている岸。同作をはじめ、近年の出演作では愛され後輩キャラを演じることの多い岸だが、MVではこれまでにない新鮮な表情を見せている。

 逞しく鍛えた身体で、汗を流しながらボクシングに打ち込む姿。その強い眼差し。腕組みをほどき、恋人と口論する立ち姿。ひとり残された部屋で、やるせなさと苛立ちから表情を曇らせるさま。どれも今まで見せたことのない、年齢相応の「男」の顔だ。

 メンバーが楽しいクリスマスを過ごすCMの影響もあり、ハッピーなイメージが先行していた「I promise」。歌詞には、遠く離れた距離を感じさせる言葉が散りばめられているものの、きっと切なさはひとときのもので、乗り越えた先にある幸せな結末を信じて疑わなかった。

 しかしStory ver.の映像を観て、楽曲の印象は大きく変わった。5つの恋物語が、あまりに切なさを纏っていたから。神様か運命が、邪魔をしようとしている。「叶えてみせる」という誓いは、より強く、より深い意味をもった。平野が聴かせる叙情的な落ちサビ。祈りにも似た歌詞と歌声に、胸が震える。

嵐「アオゾラペダル」も “等身大”を映し出すドラマ仕立てのMV

 King & Princeとしては初の試みながら、先輩ジャニーズアーティストも、数々の楽曲でドラマ仕立てのMVを制作してきた。

 直近でいえば、Hey! Say! JUMPの「Your Song」もそのひとつ。CD特典のビデオクリップとショートフィルムが連動した3部作で、メンバーの関係性や歴史を感じさせるノスタルジックな作品だ。ロードムービー風の柔らかな映像が、楽曲の優しい世界観にマッチしている。

 嵐の名曲「アオゾラペダル」のMVも良作だ。仲間と汗を流し、笑い合い、ときにもどかしい恋に胸を痛めながら、過ぎてゆくひと夏を描いた作品。「これもひとつのハッピーエンドなのだろう」と思わせる、温かい結末も印象的だった。

 MVのなかではしゃぐ5人は、嵐であって嵐ではない。もしも彼らがアイドルではなく、ごく普通の青年だったなら。平凡だけれど大切な、思い出せばふと泣けてくるような、こんなありふれた青春を過ごしていたのかもしれない。ほろ苦いミディアムナンバーに、ふとそんなことを考える。

 本作は、当時20代だったメンバーの、眩いほどの若さと美しさを映し出している。“この時間を真空パックして、永遠に閉じ込めていられたら”。そう願うほど尊い時間は、きっと誰にでもあるもの。あの夏の嵐は「アオゾラペダル」の物語に大切にしまわれた。だからいつだって取り出して、想いを馳せることができる。

 アイドルの“等身大”を映し出す、ドラマ仕立てのMV。ときには歌詞の世界観を可視化することでメッセージ性を高め、ときには別の解釈を投げかけることで楽曲にさらなる深みを生む。歌、ダンス、表情、仕草……それらと同じように、アーティストが楽曲を表現するひとつの手段だ。

 そうして、またひとつ生まれた「I promise」という物語。今はただ、世界が嫉妬する恋の結末を、祈りながら待っている。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。
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