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片岡仁左衛門、孫・片岡千之助との「連獅子」共演に「35年間抱いていた夢が叶う」

ナタリー

左から片岡千之助、片岡仁左衛門。

「吉例顔見世大歌舞伎」が、11月1日から26日まで東京・歌舞伎座で上演される。これに先駆け、出演者の片岡仁左衛門と片岡千之助の取材会が、本日10月8日に東京都内で実施された。

仁左衛門と千之助は、第2部「連獅子」で狂言師右近後に親獅子の精、狂言師左近後に仔獅子の精をそれぞれ勤める。仁左衛門はまず、1986年に十七世中村勘三郎が、76歳で親獅子の精を演じたことに触れ、「当時の(中村)勘九郎くん(十八世勘三郎)と踊られていたのですが、とにかく劇場を包む雰囲気が素晴らしくて。その姿を観て、ぜひおじさま(十七世勘三郎)と同じ年のときに『連獅子』を歌舞伎座で踊りたいと思っていました」と思いを明かす。「そのときは倅(片岡孝太郎)と、と考えていたのですが、彼は女方の道を進みまして」と続けたあと、仁左衛門はちらりと横の千之助を見て「僕には孫がおりまして(笑)、今回は孫との共演でやらせていただきます。35年間抱いていた夢が叶うようなことでございます」と言葉に力を込める。

千之助は、2011年と2014年にも仁左衛門と「連獅子」を舞っている。「小さいとき、祖父に『一緒に踊りたい』と手紙を出したほど、『連獅子』を祖父と演じることが憧れでした。10年前にその夢は叶えていただきましたが、今回も小さいときの願いが叶ったという喜びが続いており、うれしく、ありがたい気持ちが大きいです」と瞳を輝かせる。さらに「10年前の『連獅子』の稽古をきっかけに、稽古場での祖父が、”優しい祖父”から、“厳しい役者の大先輩”に変わりました。(稽古で)仔獅子として、谷底に突き落とされた感覚がありましたが、その中で、やはり追いつきたい、這い上がらなければいけないという感覚を持たせていただきました」と過去の稽古を振り返る。

ほほ笑みながら、千之助の話を聞いていた仁左衛門は「彼が小学6年生のとき、初めて一緒に踊りましたが、そのときはよくがんばったなと。“じじばか”ではありますが(笑)、大変うれしく思っておりました。7年前にも一緒に舞いましたが、そのときは、成長を感じつつも、もうちょっと成長してほしいなというはがゆさがありました。身内だからこその甘さと、先輩・後輩としての厳しさが入り混じった気持ちですね。今回は、彼も成人しておりますので、しっかりと踊ってもらえれば。これまでは、(役を)作らなくても仔獅子でしたが、21歳として、あどけない仔獅子をどう表すか。芸の難しさを克服してくれることを期待しています」と千之助にエールを送った。

記者から、仁左衛門から受け継ぎたい部分を問われた千之助は「受け継ぐことができるのなら、全部」と答え、「祖父からは、とにかく『人に求められる俳優になってほしい』と言われています。それが僕の中での、1つの目標であり、人生のモットーです」と真摯に語る。これを受け、仁左衛門は「千之助が申しましたように、たとえどんなお役でも、お客様から『あの人が出ていればこの芝居は楽しくなる』と思われて、俳優仲間から必要とされるような存在になってほしい。かわいがってもらって必要とされるのはまあ普通ですが、たとえ人間として嫌でも、『この芝居を成立させるには、この役者がほしい』と言われるほどの役者になってほしい(笑)。そのためには、とにかく自分を磨かないといけない。アンテナを張って、皆さんから芸を吸収していってほしい」と話す。

今回、本興行では最高齢となる77歳で狂言師右近後に親獅子の精に挑む仁左衛門。このことを記者から指摘されると、仁左衛門は驚き、「(十七世勘三郎も)同じ年だと思っていた。おじさま以上にがんばらないといけないのか。困ったね、こりゃ(笑)」とお茶目に笑い、会場の笑いを誘う。「この歳ですから、昔のようには動けません。ただ、(親獅子は)仔獅子と同じように跳ねる必要はないと思っています。十七世勘三郎のおじさまは、ゆったりと、親獅子としての貫禄を出しながら演じられて、その演技と、ピチピチと動く仔獅子との対比がとても素敵だった。お客様にとっては、親獅子の動きが物足りないかもしれませんが、年代相応の連獅子をお見せできれば」と意気込みを述べた。

「吉例顔見世大歌舞伎」

2021年11月1日(月)~26日(金)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「神の鳥(こうのとり)」

作・演出:水口一夫

出演
狂言師右近実はこうのとり(雄鳥) / 山中鹿之介幸盛:片岡愛之助
狂言師左近実はこうのとり(雌鳥):中村壱太郎
仁木入道:中村種之助
傾城柏木:上村吉弥
赤松満祐:中村東蔵

二、「井伊大老 千駄ヶ谷井伊家下屋敷」

作・演出:北條秀司

出演
井伊直弼:松本白鸚
仙英禅師:中村歌六
老女雲の井:市川高麗蔵
お静の方:中村魁春

第2部

一、「十世 坂東三津五郎七回忌追善狂言 寿曽我対面」

出演
工藤左衛門祐経:尾上菊五郎
曽我五郎時致:坂東巳之助
曽我十郎祐成:中村時蔵
小林朝比奈:尾上松緑
八幡三郎:坂東彦三郎
梶原平次景高:坂東亀蔵
化粧坂少将:中村梅枝
秦野四郎:中村萬太郎
近江小藤太:河原崎権十郎
梶原平三景時:市川團蔵
大磯の虎:中村雀右衛門
鬼王新左衛門:市川左團次

後見:坂東秀調

二、「連獅子」

作:河竹黙阿弥

出演
狂言師右近後に親獅子の精:片岡仁左衛門
狂言師左近後に仔獅子の精:片岡千之助
浄土僧専念:市川門之助
法華僧日門:中村又五郎

第3部

「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」

作:河竹黙阿弥、渡辺霞亭
補綴:戸部和久
構成・演出:石川耕士
演出:市川猿之助

出演(五十音順)
顔世御前後に葉泉院 / 大鷲文吾:尾上右近
河瀬六弥:中村歌之助
源蔵姉おさみ:市川笑也
高師直 / 戸田の局 / 河雲松柳亭:市川猿之助
晋其角:市川猿弥
大星由良之助:中村歌昇
井浪伴左衛門:中村錦吾
桃井若狭之助 / 清水大学:松本幸四郎
足利直義 / お園:坂東新悟
寺岡平右衛門:澤村宗之助
大星力弥:中村鷹之資
塩冶判官 / 槌谷主税:中村隼人
龍田新左衛門:大谷廣太郎
赤垣源蔵:中村福之助
小浪:中村米吉

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