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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

峯田和伸ゼミ⑥(最終回) 純粋な球体を探し続ける旅

毎週連載

第93回

前回までは地下世界、そして石の話をしましたが、今回はまるっきり違う話をします。まず僕は皆さんに問いたいことがあります。

いわゆる「円」ってありますよね。それを物体化すると、球体になりますけど、この地上に、全く紛れもない純粋な球体は存在すると思いますか? もしあったとして、このテーブルの上にその純粋な球体を置いたとすると、どうなると思いますか?

まず、テーブルの天板というのは平面ですよね。もし、その平面の上に、純粋な球体を置いた場合、くっつくことはないわけですよ。どういうことかと言いますと、平面の上に球体を置いてそれが止まったとするなら、球体の底には「辺」があるってことです。「辺」がなければ止まりませんからね。

でも、1つでも「辺」があるってことは、もうその時点で純粋な球体じゃないわけですよ。それはもしかしたら小さな「辺」が集まっているだけの一見「球体に見える」物体かもしれない。

そう考えるとさ、純粋な球体っていうのは、この地球上には存在しなくて、唯一あるのだとしたら、僕らが暮らしているこの「地球」のことを言うのかもしれない。ただ概念として「球体」っていう存在を僕らは知っているけど、それは学習上で知っているだけで、実際にはどこにも存在しないものなんですね。

これを言い換えるとさ、愛とかロックみたいな概念とも通ずるところがあるんです。みんなその存在を知っているし、意味もなんとなくわかった気でいるんだけど、それをハッキリと可視した人は誰もいないでしょう。なのに、この概念だけはみんなの中に刷り込まれているわけですね。

何が言いたいのかと言うとさ、その最初に言った球体もそうだし、愛、ロックもそうなんですが、その「誰も見たことがない」っていうことを追いかけて、なんとか音にしたい、なんとか絵にしたい、なんとか写真で表したい……っていう行動こそがアーティストの仕事なんです。

ただね、今ここでアーティストって言いましたけど、これは特別表現に関わる仕事をしている人だけに限られた話でもないんですよ。実はこれ、人間本来の生きる目的でもあるわけです。

この球体、愛、ロックっていうものを見つけるために僕らは産まれてきてる。物理的、物質的には存在しないものだけど、そこで「ない」と決めてしまうのではなく、「なんか感じる」とか「それこそがロマンだ」とかね。なんでも良いんだけど、そういう思いから、なんとかして具現化するために人は生きているように僕は思うんです。

だからさ、こういう人間に与えられた尊い行いを、人任せにしたら、人間の生命を冒涜していることにもなるんです。なんとか自分自身でさ、あがいてでもいい、転がり回ってでもいいから、これを追い求めていくことが大切だと思います。

そこでまた前回までの石の話にも繋がるんだけど、こういった行いこそがローリング・ストーンなわけです。転がり続けながらも、何かを求め探し続ける。そして、この中で、生きる意味さえも見い出していくというね。

どうかこれを読んでいる皆さんも、辛いこと、不安なこと、悲しいことがあったら、この球体の話を思い出してください。少しは楽な気持ちになれるかもしれません。

ということで、6週にわたって話してきた峯田和伸ゼミは今回で終了です。次回からは普通の連載に戻ります。ありがとうございました。

写真はいつもスマホで観ている宇宙の動画。いつか宇宙についてもゼミをしたいと思います。

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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