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THE YELLOW MONKEY、コロナ禍で30周年記念ライブを開催した意義 『Live Loud』に刻まれた時代の空気感を読み解く

リアルサウンド

21/1/31(日) 12:00

 2020年11月3日の東京ドームを皮切りに、全4会場で行われたTHE YELLOW MONKEYの単独ライブ『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE』が12月28日の日本武道館公演をもって終了。そこから2週間が経過した今年1月12日、来場者や出演者、関係者、舞台スタッフ、運営スタッフの新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)での陽性者確認、およびクラスター発生などの報告が一切なかったことが確認された。日本武道館公演から1カ月を経過した現在もそういった報告がないことから、今回のライブは無事終了したということになる。

THE YELLOW MONKEY LIVE ALBUM & DOME BOX【TEASER】

 この4公演に向けて、筆者は10月上旬に「THE YELLOW MONKEY、新規4公演ライブは挑戦的なステージに? 各会場に込められたバックストーリーを紐解く」という記事を執筆。11月下旬には、東京ドーム公演と続く11月7日の横浜アリーナ公演に関して、開催までの経緯を含めたレポート記事「THE YELLOW MONKEYがライブを通して繋ぐエンタメの未来 厳戒態勢で行われた東京ドーム&横浜アリーナ公演を見て」も公開されている。それらを踏まえつつ、本稿では『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE』を総括しつつ、2月3日にリリースを控えたライブアルバム『Live Loud』がこのタイミングに制作された意味を考察してみたい。

 まずは『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE』について。筆者は4公演とも会場にてライブを観ることができたが、来場者は事前にアナウンスされたルールに沿って、公演中は大声を上げたり歌ったりすることなく、拍手や手振り身振りでバンドの演奏に対応。そのイレギュラーな事象に対しても、バンドや観客は公演を重ねるごとに自然と馴染んでいる様子を見せ、曲間に歓声を上げられない代わりに拍手をし続けたり、メンバー名をコールする代わりに手拍子で応えたりと要領を得た感も強かった。何よりも、東京ドーム公演ではメンバーから多少の戸惑いも見られたが、最終公演となった日本武道館では「今できる最大限のやり方で、最高のステージを作る」というメンバーの強い意思すら伝わってきた。

 各公演のコンセプトも非常に明確で、それぞれ明確な色分けが施されていた。東京ドーム公演は言わずもがな、昨年4月に予定されていた同会場でのライブの再構築であり、『Sing Loud!』企画を通じて集められた、ライブに直接参加できなかったファンの歌声が流れた「JAM」「バラ色の日々」を筆頭に、この時期ならではの新たな演出も加えられた(この演出は、続く3公演でも引き続き取り入れられた)。

 90年代後半にさまざまな名演を繰り広げてきた横浜アリーナでは、当時を彷彿とさせるセットリストを用意。『SICKS』(1997年)、『PUNCH DRUNKARD』(1998年)、『8』(2000年)といったアルバムからの楽曲を中心に、ライブバンドとしての凄みを見せつけるパフォーマンスで観る者を楽しませてくれた。特に今回の4公演はすべて、WOWOWやストリーミング配信などを通じた生中継も行われたが、画面越しからもその熱量は存分に伝わったことだろう。

 3公演目となった12月7日の国立代々木競技場第一体育館では、公演当日が菊地英昭(Gt)の誕生日ということもあり、菊地が作曲に携わったTHE YELLOW MONKEYの楽曲をすべて披露するという粋な計らいを用意。久しく演奏されていなかった初期の楽曲も複数含まれており、その驚きの選曲に歓喜したファンも少なくないはずだ。また、こういった形でメンバーの誕生日を祝福できたのも、(偶然とはいえ)今回改めてライブを設定することができたからこそ。もし昨年4月の東京ドーム公演が予定どおり行われていたら実現しなかった、夢のセットリストを楽しむことができたのも『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE』におけるサプライズのひとつだ。

 そして、最終日の日本武道館公演はバンドの誕生日にあたる12月28日に開催。2018年までは同日、同会場で『メカラ ウロコ』と題した企画ライブで“報われない(初期の)楽曲たち”を披露してきたが、2年ぶりに同会場で行われたバースデーライブは年末らしく、忘年会的な装いのお祭り騒ぎに。初期のアルバムからの楽曲が多数披露されたのに加え、1990年にバンドが初めて制作したデモテープに収録されていた幻の1曲「PENITENT」を約29年ぶりに演奏するという最大のサプライズが用意された。この日のラストナンバーとして演奏されたのは、バンドにとって原点の1曲「WELCOME TO MY DOGHOUSE」。この曲に入る前、吉井和哉(Vo)は「普通の野良犬に戻ります」と口にしたが、これは2001年1月8日に行われたTHE YELLOW MONKEY活動休止前最後のライブ(東京ドームでの『メカラ ウロコ・8』)で同曲を披露する際に発せられたものと同じだが、言葉の持つ意味や重みは当時とはまったく異なるものだった。終わりを感じさせる前回とは異なり、今回は再会が約束された上でのポジティブな発言だったことは、ファンならば誰もが感じたことだろう。

 こうして全4公演を無事完遂したTHE YELLOW MONKEYだが、しばしの休息を迎えるに際してさらなるプレゼントを我々に用意していた。それが先にも触れた、2月3日リリースのライブアルバム『Live Loud』だ。これまでシングルにライブテイクを収録することは少なくなかったが、純粋なるライブアルバムは1999年5月発売の『SO ALIVE』以来20数年ぶりのこと。ライブ映像作品は数あれど、30年を超えるキャリアの中でライブアルバムは、意外にもこれまでに1作しか発表していなかったのだ。

 だからこそ、このタイミングに発表されるライブアルバムの意味を考えてしまう。正直な話、今はDVDやBlu-rayといったアイテムは、ものによってはCDとさほど変わらない価格で入手することができるし、アーティストによってはYouTubeなどで過去のライブ映像を公開するケースも少なくない。さらには、サブスクリプションサービス限定ライブ音源/映像を発表する機会も増えている。ライブ映像作品を再生する機器がまだ高額だった、あるいはそういった機器が一般流通していなかった時代に「ライブの魅力に手軽に触れてほしい」という思いを込めて制作されたライブアルバムも、今や安価なDVD/Blu-ray、さらにはネット配信などを経て、もはやその役目を終えたようにも映る。

 しかし、それでもTHE YELLOW MONKEYがこの2021年という時代にライブアルバムを制作したのは、このコロナ禍を通じてライブの大切さ、貴重さ、重要さに改めて気付かされたからではないだろうか。確かに無観客配信ライブもここ1年でだいぶ普及してきてはいるものの、アーティストと観客が一体となって熱を生み出し、それを生で味わうという“体験”型のライブにお目に掛かる機会はめっきり減った。そんな時代に貴重な4公演を、有観客で開催したTHE YELLOW MONKEYだからこそ、この時期に記録として残しておく意味があった……そう考えることはできないだろうか。

 観客の歓声やシンガロングが入った“コロナ禍前”の公演だけで構成することもできたはずだ。むしろ、そのほうがライブの臨場感を楽しむ上で最適だろう。だが、今回のライブアルバムにはファンからのリクエスト投票という形をとりながら、先の東京ドーム公演からの音源も含まれている。先に触れた、『Sing Loud!』企画で募ったファンの歌声をフィーチャーした「バラ色の日々」や「JAM」も収録されているし、ライブのクライマックスで演奏された「パール」や「プライマル。」「未来はみないで」といったナンバーも、当日の空気感そのままに収められているのだ。アルバムをひと足先に聴かせてもらったが、常に歓声に湧くナゴヤドームや京セラドーム大阪でのライブ音源との空気感の違いに誰もが気づくことだろう。しかし、だからといって東京ドーム公演自体の熱量が低いわけではない。声援や生のシンガロングは聴こえないものの、それを補って余りあるバンドの気迫がダイレクトに伝わる……これこそ、ほかの2公演との大きな違いではないだろうか。

 また、映像という視覚要素がなくなることで、バンドの歌や演奏にもより集中することができるのも、ライブアルバムの醍醐味だろう。映像作品だったらメンバー同士のちょっとしたやり取りや歌う際の表情、プレイヤーの手元などに気を取られ、音が二の次になるなんてこともゼロではない。こうやって音源としてライブに触れることで、スタジオテイクとの違いを楽しむこともできるのも、ライブアルバムならでは。と同時に、余計な装飾なしで、ライブ音源だけで勝負できるのもTHE YELLOW MONKEYというライブバンドの実力あってこそ。吉井の変幻自在なボーカルはもちろんのこと、廣瀬洋一(Ba)&菊地英二(Dr)の生み出すライブならではのグルーヴや、菊地英昭が生み出す無骨なギターリフや感情に訴えかけるソロプレイなど、スタジオ音源以上に生々しく響くなど、発見も多いはずだ。

 通常盤は全15曲で構成されたCD単品だが、初回限定盤には2017年の福岡ヤフオク!ドーム(現・福岡PayPayドーム)からのボーナストラックを加えた全13トラック入りのDISC 2も付属。フルスケール級の豪華なライブアルバムとなるので、ぜひこの機会にじっくり聴き込んでいただきたい。と同時に、約20年前に発表された『SO ALIVE』にもこの機会に触れつつ、20年という月日が生んだバンドの成長記録も楽しんでもらいたい。

 3月10日には、2019年末からスタートしたドームツアーを総括するBlu-ray&DVD『30th Anniversary THE YELLOW MONKEY SUPER DOME TOUR BOX』も発売決定。こちらではライブアルバム『Live Loud』に収録されたナゴヤドーム、京セラドーム大阪、東京ドームの各映像が余すところなく収録される。ライブアルバムで音のみに集中したあとに、改めて映像作品に触れることで見え方、伝わり方も多少なりとも変わってくるのではないだろうか。そのためにも、まず先に『Live Loud』から聴いておくことをオススメする。

 ちなみに、両アイテムのW購入者特典として、昨年4月4日、5日に開催予定だった東京ドーム公演のリハーサル音源を、今年の4月4日、5日限定で聴くことができるスペシャルプレゼントも用意。実現することのなかった東京ドーム2DAYSの断片に触れられる、貴重な機会となっている。THE YELLOW MONKEYのライブはしばらくの間、『Live Loud』や『30th Anniversary THE YELLOW MONKEY SUPER DOME TOUR BOX』を通じてしか楽しむことができないので、ひとつでも多く“生のTHE YELLOW MONKEY”に体感しておきたいところだ。

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■リリース情報
ライブアルバム『Live Loud』
2021年2月3日(水)発売
通常盤(Disc1):¥2,800(税別)
初回盤(Disc1/Disc2):¥3,000(税別)

<Disc1>(通常盤/初回盤共通)
1.ALRIGHT -Nagoya Dome, 2019.12.28-
2.SPARK -Nagoya Dome, 2019.12.28-

3.太陽が燃えている -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
4.砂の塔 -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
5.追憶のマーメイド -Nagoya Dome, 2019.12.28-
6.楽園 -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
7.パール -Tokyo Dome, 2020.11.3-
8.天道虫 -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
9.BURN -Nagoya Dome, 2019.12.28-
10.LOVE LOVE SHOW -Nagoya Dome, 2019.12.28-
11.バラ色の日々 -Tokyo Dome, 2020.11.3-
12.SUCK OF LIFE -Nagoya Dome, 2019.12.28-
13.JAM -Tokyo Dome, 2020.11.3-
14.プライマル。-Tokyo Dome, 2020.11.3-
15.未来はみないで -Tokyo Dome, 2020.11.3-

<Disc2>(初回盤のみ収録)
1.真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~ -Tokyo Dome, 2020.11.3-
2.Romantist Taste -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
3.Balloon Balloon -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
4.MOONLIGHT DRIVE -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
5.LOVERS ON BACKSTREET -Nagoya Dome, 2019.12.28-
6.SLEEPLESS IMAGINATION -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
7.Four Seasons -Kyocera Dome Osaka, 2020.2.11-
8.熱帯夜 -Tokyo Dome, 2020.11.3-
9.“I” -Nagoya Dome, 2019.12.28-
10.Horizon -Nagoya Dome, 2019.12.28-
11.Father -Nagoya Dome, 2019.12.28-
12.悲しきASIAN BOY -Nagoya Dome, 2019.12.28-
Bonus Track. Wedding Dress~マリーにくちづけ -Fukuoka Yafuoku! Dome, 2017.12.28-THE YELLOW MONKEY、コロナ禍で30周年記念ライブを開催した意義 『Live Loud』に刻まれた時代の空気感を読み解く

『Live Loud』予約はこちら

『30th Anniversary THE YELLOW MONKEY SUPER DOME TOUR BOX』LPサイズBlu-ray BOX
2021年3月10日(水)発売 
¥18,000(税別)完全生産限定盤(数量限定)
・豪華LPサイズBOX仕様(ナンバリング入り)
・アフターツアーパンフレット
・2曲入りカセット
(WELCOME TO MY DOGHOUSE/PENITENT) 
・ハンドタオル(4月4日、5日東京ドーム公演にて配布される予定だったハンドタオル)
Blu-ray BOX予約はこちら

『30th Anniversary THE YELLOW MONKEY SUPER DOME TOUR BOX』DVD BOX
¥14,000(税別)完全生産限定盤(数量限定)
・三方背BOX仕様
・ナンバリングなし
・ライブフォトカード
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『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE -DOME SPECIAL- 2020.11.3』Blu-ray
¥6,800(税別)
東京ドームBlu-ray予約はこちら

『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE -DOME SPECIAL- 2020.11.3』DVD
¥5,800(税別)
東京ドームDVD予約はこちら

<映像作品特典>
●amazon.co.jp特典
トートバック
対象商品:LPサイズBlu-ray BOX、DVD-BOX
※東京ドーム公演のみを収録したBlu-ray、DVDは対象外
※特典ナシのカートもあり

●楽天ブックス特典
A:オリジナル・カラビナ
B:オリジナル・ドリンクホルダー(ファミリーマート受取限定)
対象商品:LPサイズBlu-ray BOX、DVD-BOX、東京ドーム公演Blu-ray、東京ドーム公演DVD
※特典Bはファミリーマート受取限定の特典
※特典ナシのカートもあり

●HMV
HMV music masterコラボポスター(B2サイズ)※抽選30名様
対象商品:LPサイズBlu-ray BOX、DVD-BOX、東京ドーム公演Blu-ray、東京ドーム公演DVD
※HMV&BOOKS Online含む/一部店舗除く
※特典はなくなり次第終了
※特典の有無に関するお問い合わせは直接各店舗へ

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