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ROVIN × Buddyが明かす、新曲「I Love」で曝け出した己の弱さとリスナーとのつながり「一文字も無駄なフロウなんてない」

リアルサウンド

20/12/24(木) 18:00

  JABBA DA FOOTBALL CLUBのROVINと、YouTubeチャンネル:アバンティーズのメンバー・そらであると共に、ラッパーとしても活動するBuddyのタッグによるROVIN × Buddy。今年2月リリースのEP『The Outer Worlds』に続いて、12月23日にシングル「I Love」を配信リリースした。

 今年はこのタッグにKick a ShowとSam is Ohmを加えたユニット「B-Loved」でのリリースや、それぞれソロや別働ユニットでの活動も見せた二人だが、改めてタッグを組み生み出された「I Love」は、自尊心や自己愛、肯定といったポジティブで根本的なメッセージを丁寧に折り込み、普遍的なメッセージを通して「王道のグッドミュージック」への意思を感じさせる作品として完成した。

 イレギュラーづくしの一年となった2020年に彼らはなぜ「王道」を打ち出したのか、その理由とは。(高木”JET”晋一郎)

ROVIN「ど真ん中を作るのはすごく大変なんです。誤魔化しがきかない」

ーーROVIN × Buddyのお二人には、2月にリリースされたEP『The Outer Worlds』の際にインタビューさせていただきましたが(ROVIN × Buddyが語る、コラボのきっかけとヒップホップシーンに対する思い)、その段階では、いまのようにインタビュー中にマスクが必須になる状況は想像もしていなくて。

ROVIN:ちょうど「あれ、大丈夫かな?」って思うタイミングでしたね。

ーーその意味でも、音楽活動自体が難しくなるような状況下で、このプロジェクトはどう動いていましたか?

ROVIN:ひたすら曲を作りまくってましたね。このタッグに加えて、Buddy、Kick a Show、Sam is Ohm、僕の4人でB-Lovedっていうユニットも作っていて。なにしろライブも出来ないし、本当にみんな暇になってしまったので、もう曲作るしかないね、ってことで毎週日曜日にスタジオに集まってひたすら曲作りしてました。

ーー毎週、Sam is Ohmのスタジオに集まって制作しているという話をインタビューでされていましたね(参照)。

ROVIN:まさにそれです。今回の「I Love」も、B-Lovedも、6月に出た俺のソロ(「Thinking about You feat. Kick a Show」)も、その流れの中で作ってますね。B-Lovedは最初は本当に遊び半分だったんですけど、10曲くらい作っていくうちに、「これちょっと、よくないか?」みたいな曲が何曲か生まれてきて、それで「ちゃんとパッケージした方が絶対いいよね」ってことで、B-Lovedとして『SPOT』をリリースしたり。だから曲を作って、気を紛らわしていた感じですね、ほんとに。

ーー創作に向かう心境ではなくなってしまったという人もいましたが、そうではなかったと。

ROVIN:逆に俺らはそうならないために曲を作っていた感じです。ライブも出来ないし、クラブにも行けない、そういう気持ちをどこに置けばいいのかわからなくて。だからもう曲を作るしかないぞって。

Buddy:だから、今年はほぼROVINくんと一緒にいた感じですね。

ROVIN:そうね、いたね。

Buddy:俺ら二人も、Kick a ShowもSam is Ohmも超フィジカル人間なんで、制作したらそれを出さないと我慢ならないんです、きっと。だから、4人ともすぐ目線が同じ方向に向いたっていうか。何も言わずとも。「これだね、俺ら」みたいな。

ROVIN:衝動的だったと思いますね、かなり。

Buddy:制作に関しても「理由」とかもあまりなかったですね。

ROVIN:Sam is Ohmのスタジオに行ったら誰かしらいて、「あ、いるんだ。じゃあやろっか」みたいな。もう4月からずっとその感じですね。

Buddy:娯楽に近い感じだったかも。ストレス発散でもあるしね。

ーー集まってゲームする、サッカーするみたいな感じが、音楽作るっていうところだったんですね。

ROVIN:あぁ、まさに!

ーーそしてその先に完成した「I Love」ですが、聴かせていただいた感触は、全てにおいての王道、誰が聴いてもいいと思うグッドミュージックを作るっていうのが一個の目標なのかなと。

ROVIN:そうですね、それは間違いないです。

Buddy:親切な曲が作れたよね。今年一年、色々あったから。それらを全部飲み込んじゃって、真正面から取り組んだというか。

ーー本当に「真正面」の曲ですね。どこにもてらいや斜に構えた部分がない。

Buddy:確かに。今年はとんでもなく曲作ったからこそ、この「I Love」ができたみたいなところもありますね。僕もソロで14,5曲作って、作りたい曲とかやりたい手法、エゴも含めてあらゆることをやった上で、小手先みたいなものを取っ払って、根幹を形にしようと思ったら「I Love」に行き着いたというか。

ROVIN:最初はEPで、『The Outer Worlds 2』みたいな形にしようと思ってたんですけど、いろいろあって、シングル一曲勝負になったんですね。その形だったら、どかんとど真ん中をやろうと。そのとき考えたのが、前回のEPに収録された「Have a Good Time」。あの曲は僕らを引っ張ってくれた曲だし、あれを機に全てがつながったと思うから、それを超えるものを作りたいなって。ただ、そのハードルはめちゃくちゃ上げないとな、とも思ったんですよね。それはトラックを作ってくれたJIGGさんにも相談して、ラップも、トラックも、伝えるメッセージも、二人のスタンスも、すべての強度を上げたかった。それこそB-Lovedや自分のソロだったり、生み出してきたものの集大成を、ど真ん中の形でここで見せなきゃ、やってる意味ないよなって。ただ、ど真ん中を作るのはすごく大変なんですよね。誤魔化しがきかないというか。奇をてらったことって、言い方は悪いですけどアイデアさえあれば簡単じゃないですか。でも逆にど真ん中ってなると、かなり覚悟がいるなって、作っていて思いました。

ーーテーマとしても自尊心の曲、肯定の曲、愛の曲、という王道のイメージですね。そこにたどり着いたのは?

Buddy:まず制作の最初の段階でROVINくんから手紙が来たんですよ。

ROVIN:そうだ(笑)。

Buddy:直筆で書かれた手紙が来て、それを読んで俺も感動してこの内容になったって部分は多分にありますね。それ読んでなかったら、もうちょっと強がった内容になっていた気はしています。

ROVIN:手紙ですからね、やばいですよね(笑)。でもこいつに対してはLINEやメールでは伝えられなかったというか。

Buddy:構成的にも、今回は難しいことを何一つしていないんですよね。技法としても語りかけるようなシンプルなラップにして。だから聴く人が聴いたら面白くないと思われるかもしれないけど、この曲にはこの温度のラップが一番伝わるのかなって。

ROVIN × Buddy

ーー確かに、本当にオーソドックスを追求しているとも感じて。

Buddy:無駄なものも入れていないし、一文字も無駄なフロウなんてないですね。だからこの曲は「すっぴん」って感じです。

ーーそれは怖くなかった?

Buddy:自分の中で、自信が前回のEPの時よりもあったし、強くなれたのかなって。一年通して曲をたくさん作ってきて、その作った音楽が自分たちの中で納得いっていたし、もうなんでもできるっていう。ある程度のことはできるという確信があったから、すっぴんで行けたんだと思います。

Buddy「リスナーとの会話は『I Love』で一番できているんじゃないかな」

ーーROVINくんのリリックは悪し様にいえば「弱音」にも通じる部分がありますよね。だからヒップホップで内包されがちな「マッチョさ」とは真逆のアプローチがある。

ROVIN:まず「自分と向き合う」というのが前提のテーマだから、逆にラッパーである以上、自分の弱さを見つめることも避けちゃいけないなって。

Buddy:それは大切だったと思う。自分たちの弱さを知ってもらってから、その上で自分たちをより知って欲しいというか。

ROVIN

ROVIN:JABBA DA FOOTBALL CLUBのときは「切り込み隊長」みたいなフィルターを意識的に通すんですけど、今回はノーフィルターでそのまま、どストレートで行ったって感じですね。でも、そのモードになる作業がえらい大変で、思ったよりエグかったっすね。正直言うと、この曲、いまだに俺はちゃんと聴けないんですよ。完成した曲を聴いて……俺、初めて泣いちゃったんですよね。「I Love」ができて、次の日に昼間にゆっくり風呂に浸かりながら流したら、ボロボロ涙が出てきて。「え、マジ? マジ?」って(笑)。2時間くらい嗚咽が止まらなくて、そこからまともに聴けないです。でも、それぐらい自分と向き合った曲なんですよね。

Buddy:分かる。ヘヴィすぎて自分たちではあまり向き合えないんですよ。

ROVIN:自分に対する破壊力も強すぎて、やば! みたいな(笑)。今回ジャケとかビデオとか色々やってくれたのが、JABBA DA FOOTBALL CLUBのNOLOVで、あいつから「ジャケこういう感じの背景が浮かんでるんだけどどう思うかな?」「ビデオはこういう感じがいいと思うんだけどどう思う?」って当然いろいろな確認や連絡があるんだけど、「俺の意見はいいから、もう頼むから早くこの曲に化粧をしてくれ!」って感じで(笑)。

ーー素のまますぎるから、早く「客観」にして欲しいというか。

ROVIN:「早く化粧をしてくれないと俺はまともじゃいられなくなるから」って(笑)。だから今回のインタビューも、「こうだったんだっていうのを早く話したい!」って思っていたんです。だから制作に対するメンタルは相当大変だったんだと思う。苦しかった。

Buddy:苦しかった。それに尽きる。

ROVIN:俺もまさかこんな風になるとは思っていなかったですから。レコーディングのときは「いいじゃんいいじゃん! 良い曲出来たよ!」ぐらいに思っていたけど、冷静になった時に聴いたら「なるほど、苦しかったんだね、君」みたいな(笑)。でも、それこそラッパー冥利に尽きるというか、ラッパーでよかったって思いました。ラッパーみんなそうですけど、リリック書くのってカウンセリングみたいなところがあると思っていて。作って自分自身を見つめ直したり、曲を聴いてもらって「私もそうです」「俺もそうだったんだ」みたいな、そういう言葉で本当に心が癒されるというか。それなかったら本当にやばいですよ。この曲がなかったら結構ふわふわしたままだったかもしれない。

Buddy

ーーなるほど。Buddyくんのリリックも、自分は何者なのか、自分をどうやったら愛せるのか、自己肯定はどうやったらできるのか、という内容になっていますね。今年は自己や他者の肯定だったり、反ヘイトや自尊心、その根本となる「人権」が世界的にも注目される年になったと思うんですが、その潮流ともリンクする部分があるなって。

Buddy:確かにそれは制作中に思ったことで。自分自身のことを丁寧に書けたことは、自分でもすごく気に入ってるし、そこに嘘はないんですよね。内容としても、ちょうど希薄なことが言えないターンに入ってきたと思うから、時期としても合っていたのかなと思うし、この部分を見てもらえないと、これからも自分の音楽を聴いてもらえないなって。

ROVIN:俺らだからこそ経験したこと、俺らにしか出来ない経験が今年の活動も含め色々あるはずだから、それと向き合ってちゃんと書いてみようっていうのはありました。でもそこで自分たちだけの話で終わりたくはなくて、聴いてるみんなに何かを感じてほしいという想いは、作っている側として当然あります。だからフックで俺らの想いを伝えたことで、いい感じに自分たちとリスナーがつながったと思いますね。どっぷり自分と向き合って、もう戻れないくらいまで深いところに行きましたけど、それを助けてくれたのがこの曲のフックというか。自分で作った曲に、自分が助けられたような(笑)。

Buddy:毎曲毎曲そうするようにはしてるんですけど、ちゃんと今までの曲ではできなかったリスナーとの会話みたいなことは、「I Love」で一番できているんじゃないかな、と思いますね。

ROVIN:確かにね。自分との会話だけではないと思うし、そういう曲を誰かに聴いてもらえるだけでも嬉しい。この曲以外もそうですけど、やっぱり曲というのは聴いてもらって初めて完成するものなので、こんな酷い状況の2020年であっても、発表してみんなに聴かせられる時点で超最高なんです。そう思って、最初は歌詞ももうちょっと内々の歌詞だったのを、二人での最後の詰めでは外側には向けたいねと話して。だから、結果的にはみんなへのメッセージ的なものにはなってると思います。それぐらい深く考えないと、刺さるところに刺さらないなとも思うし。ただ一方で、矛盾するようだけど、「I Love」はリスナーに刺さらなくてもいいとも思うんですよね。それでも構わない。

Buddy:ストレートに作ったからこそ、自分で納得できてるし、それでいいのかなって部分もありますよね。

ROVIN:そうそう。それぐらい自信があるし、良いものが出来たっていう感触がある。だから、この曲が刺ったときは超つえーぞ、って思いますね。解釈に関しても、一つの答えじゃなくて、みんなには色んな風に思ってほしい。俺がBuddyの歌詞を見て、Buddyも俺の歌詞を聴いて思うことは一言じゃ言い表せないし。ただ、一つ言えるのは、こう見えて二人とも苦しかったんだなぁって(笑)。

Buddy:ははは、たしかに(笑)。

ROVIN:それも踏まえて、みんなには何か思ってもらえるといいですね、本当に。

ROVIN × Buddy

ーー先の話を伺うと、タッグとして自分たちの原点や根本を打ち出した先は、どう見えています? 

Buddy:すぐにやりたいし、作ろうと思えば作れると思うんだけど、この曲の存在が相当デカいから、もう何個かインプットしないと、これに勝るものは作れないと思っていて。いま俺らにあるものは全部出し切っているんで、もっと吸収しないといけないと思いますね。

ROVIN:だから多分、次は間違いなくアルバムになるでしょうね。それぐらいのアウトプットの仕方じゃないと、俺らも、リスナーの方も納得出来ないんじゃないかなって。

Buddy:ただ(「I Love」と)同じような曲は書けないと思う。同じことはできないから、本当にガラッと変わるような気もする。それが出来るかは、リスナーにも期待してほしいし、自分たちにも期待してますね。

I Love – ROVIN × Buddy

■リリース情報
ROVIN × Buddy
「I Love」
2020年12月23日(水)配信
配信はこちら

■関連リンク
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