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和田彩花の「アートに夢中!」

フェルメール展

毎月連載

第7回

 今回紹介するのは、上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」。国内外で絶大な人気を誇るオランダ絵画黄金時代の巨匠、ヨハネス・フェルメール(1632-1675)の現存する作品はたった35点(諸説あり)と言われているが、今回はそのうち9点までが東京にやってくる、日本美術展史上最大規模の展覧会。会場にはフェルメールのほか、オランダ絵画の重要作品も多数並び、連日大盛況のこの展覧会。フェルメール、そしてオランダ絵画に和田さんは何を思うのか。

大好きなオランダ絵画

 私はオランダ絵画が大好きで、身近な存在なんです。それは高校生の頃に相当フェルメールやオランダ絵画について調べたり勉強していたから。だから「フェルメールに会える!」というよりも、親近感を持っている作品たちに会えるなっていう、楽しみの方が強い展覧会でした。
 しかも今回はフェルメールだけでなく、ハブリエル・メツー、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンなど、オランダ絵画の有名作家がたくさん来ていて、本当に嬉しかったです。
なので、見ていけばいくほどオランダが大好きになるんですよ。みんな自由で楽しんで描いていそうなところが、本当に好感が持てます。

 実は大学に入ったらオランダ絵画をやりたいって思っていたくらいだったんです。でも実際に大学に入ったら、違う、やっぱりマネだなって(笑)。自分が突き詰めたいって思うのはやはりマネでしたが、やはり大好きな絵画たちであることに違いはありません。

一般的なサロメ像とは違う
《洗礼者ヨハネの斬首》

レンブラント周辺の画家《洗礼者ヨハネの斬首》(1640-1645) アムステルダム国立美術館 提供:akg-images/アフロ

 まず紹介したいのが、《洗礼者ヨハネの斬首》です。
これは聖書の中で最も恐ろしいお話の一つ、洗礼者ヨハネの斬首を描いた作品。美しきサロメが、自分の母の結婚式でヨハネの首を所望したという、なんとも残酷な場面です。
「サロメ」というと、ギュスターヴ・モローやクラナッハ、ティツィアーノ、カラヴァッジョの作品が有名ですが、ほとんどがサロメを中心に描いています。サロメがお盆に載った首を持っているか、男性が首を差し出して、それを受け取ろうとしているか。
 女の子が首を持っていたり、差し出されて受け取るなんて普通じゃないですよね? これまではサロメと生首の対比に恐ろしさを感じることが多かったんですが、このおじさんが持っていると、違和感がないんです。
 そして何より、ドラマ化されたような神秘さがない。普通の宗教画とは違う視点で描かれているんじゃないかなと思うんです。こういうところからも私はオランダ絵画の魅力を感じるんです。無理がないですよね。

 フェルメールをはじめ、オランダ絵画は「光」の存在についてよく言及されますが、その独特の陰影を持つ「オランダの光」をこの絵でも感じられます。右側のサロメには強い光が当てられ、男性は影に、そしてヨハネの蒼白の顔のコントラストは、さすがだなって思います。

ここにも光が 《嵐の風景》

アラールト・ファン・エーフェルディンヘン《嵐の風景》(1650-1655年頃)アルクマール市立美術館 Collection Stedelijk Museum, Alkmaar image: Margareta Svensson

 そしてその「光」というのを今回、風景画でも堪能することができました。
それを一番強く感じたのが、《嵐の風景》です。

 後景の暗く重い雲や、前景の2本の木が風で右へと傾いているところからも、嵐が来る直前の風景であることが想像できます。
「嵐」と題されていますが、ただ単に暴風吹き荒れる激しい場面を描くのではなく、こういう一見穏やかな嵐の描き方もあるんだなということが面白いなと思いました。
 ここで注目したいのが、嵐の暗さだけではなく、その中にまだ光が残っていること。左上の雲の行く先にきちんと光の存在を描いているんですよね。

 個人的な話になってしまうのですが、夏にメンバー全員と海に行ったんです。その時に嵐が来たんです(笑)。本当にこの絵のような雲が私たちに迫ってきて。一気に暗くなる空、覆われつつある太陽、消えつつある光。この絵を見た時に、その時の状況や情景を鮮明に思い出しました。

 そういった光が存在しないような「嵐」の中にまで、「光」を描き出すということは、本当に「光」が身近で、重要なキーワードであるということです。

決して異質な存在ではない
フェルメール

ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》1658-1660年頃 アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum. Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt, 1908

 今回はまずオランダ絵画をじっくり見ながら、最後に「フェルメール・ルーム」と呼ばれる部屋で、フェルメール作品をまとめて見ることができる展示構成になっています。なので、フェルメール以外を見てフェルメールを見ると、決してフェルメールが特別な存在で、特別な描き方をした異質な存在でなく、他の画家たちと近いことに改めて気付かされます。

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