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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

chelmicoが作り上げるピースフルな空間 ボーカリストとしての魅力も発揮した『Fishing』ツアー

リアルサウンド

19/10/6(日) 12:00

 今年8月に2ndアルバム『Fishing』をリリースしたchelmicoが、それを携えての全国ツアー『chelmico Fishing Tour』を開催。追加公演を含む全7公演を、増動員数約5000人を全てソールドアウトさせ、9月29日に行われた東京・マイナビBLITZ赤坂公演をもって幕を下ろした。

 筆者が目撃したのは、そのファイナル公演前日に同会場にて行われた追加公演。ソールドアウトとなった会場には、20代前後の男女を中心にたくさんのオーディエンスが駆けつけている。ステージ上には、アルバム『Fishing』のジャケット(アートワークを彼女たちの朋友・大倉龍司が、イラストを片岡亮介が担当)をモチーフにした、ポップでカラフルなセットやバルーンが配置されており、始まる前からフロアは期待と熱気に包まれていた。

 定刻になると客電が落ち、まずはDJの%C(パーシー)ことTOSHIKI HAYASHIが現れる。DJブースに立った彼がトライバルなトラックをスピンすると、大きな歓声に包まれながらRachelとMamikoが登場。お揃いの青いツナギを着てステージの両端に立ち、直立不動のまま客席をまっすぐと見据え、まずは『Fishing』の冒頭を飾る「EXIT」からこの日のライブはスタートした。暗転したままスポットライトが交互に2人を照らし、いつになくシリアスな表情を浮かべて歌うその姿をオーディエンスが固唾を呑んで見守っている。

 続く「爽健美茶のラップ」では、一転して明るくカラフルな照明がステージを照らし、〈ハトムギ 玄米 月見草〉と、あの強烈なサビを2人が歌い出した途端に場内のボルテージは一気に上昇。彼女たちも、まるで水を得た魚のようにリズミカルに動き回りながら、笑顔でフロアに手を振る。サビではオーディエンスが一斉にハンズアップ、ステージとフロアの垣根は一瞬で消え去った。

 「MC Rachelだよ」「MC Mamikoだよ」「chelmicoだよー!」と、お馴染みの挨拶。相変わらず息の合った軽妙なやりとりに、見ているこちらも嬉しくなる。「chelmicoのこと好きだっていう人、手を挙げて!」と客席に呼びかけ、全員の手を挙げさせたところでそのまま「switch」へ。サビでちょっと照れ臭そうに振り付けをしたかと思いきや、アルトボイスのMamikoが高速ラップを繰り出すと、フロアからは大歓声が巻き起こる。

 16ビートのパワフルなシンコペーションが自然と腰を揺らす、モータウン調のソウルフルな「BEER BEAR」では、レイチェルがハスキーなファルセットボイスで大人っぽく歌い上げる。2017年リリースの『EP』に収録された「Countdown」は、スリリングなオルガンがじんわりと盛り上げていくクールなトラックと〈“張り切りすぎず Take it eazy イケメンみっけ Take it easy〉と歌うユルいライムのギャップがユニークだ。途中、ふと目が合いウィンクを投げかけるRachelに、Mamikoが笑いをこらえる……という、仲睦まじい一幕もあった。

 曲が終わり、「そういえば、城島(茂)さん結婚したね」とRachelがタイムリーな話題を向けると、会場からは祝福の拍手が。「でもさ、城島さんも“ひみつ”にしてたんだね。ということで、次の曲は『ひみつ』」とムチャぶり気味の彼女の曲紹介に、会場が爆笑の渦に包まれた。「ひみつ」は歯切れ良いピアノのバッキングが印象的なハウストラックだが、途中のギターソロに合わせて%Cが“エアギター”を披露すると、笑いと歓声が同時に上がった。

 サイケデリックなサウンドスケープの「12:37」では、レイチェルが高速ラップでオーディエンスを魅了し、続く「Navy Love」のメランコリーなトラックでは、気だるい雰囲気のフロウを披露。「Rachel流シティポップ」とでもいうべき、洗練されたコード進行とケレン味あるシンセが印象的な「仲直り村」をしっとりと歌い、さらにスタンドマイクを立てて「ずるいね」と「Balloon」で、ボーカリストとしての2人の魅力を存分にアピールした。

 「OK, Cheers!」では、「最近嬉しかったことある人!」と客席に呼びかけ、「カノジョができた」人、「今日が誕生日」の人、「テレビに出た」という人をピックアップしつつ、彼らを中心に楽曲を盛り上げていく。フィンガースナップをみんなで一緒に合わせたり、「OK, Cheers!」とシャウトしたり、「オーディエンス参加型」のパフォーマンスに会場の一体感は上がる一方だ。「うちらが初めて作った曲をやりたくて」と、Mamikoの曲紹介で「ラビリンス’97」のイントロが流れ出すと大歓声が。トランシーかつスペイシーなファンキーチューンに、フロアはこの日最高潮の盛り上がりとなった。

 巨大な風船が舞う中、オーディエンスがタオルを回転させながらの「Player」、ゴスペル調のメロディを全員でシンガロングした「Bye」で本編は終了。アンコールでは、「Oh,Baby」「3rd Hotel」「Love Is Over」と1stアルバム『chelmico』(2016年)の収録曲で固め、この日のステージに幕を下ろした。感極まった“泣き上戸”のMamikoが途中で涙ぐむ場面が何度かあっが、終始フレンドリーかつピースフルな雰囲気に包まれた一夜だった。

(写真=横山正人)

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。ブログFacebookTwitter

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